XCRスプリントカップ北海道、優勝! 新たなオフロードモータースポーツの未来が見えてきた…寺田昌弘連載コラム
北海道でおもしろいラリーがあると思っていたところ、CUSCO Racingからお誘いいただき、コ・ドライバーとして、「XCRスプリントカップ北海道Rd.4 RALLY EAST-IBURI 2023」に参戦しました。結果は優勝!
国内ラリーでは、これまで全日本ラリー選手権でLEXUS RC Fに乗り、TGRラリーチャレンジでトヨタ ヴィッツ、ヤリス、86、サクシードに乗らせていただきましたが、今回はハイラックスです。
過去、オーストラリアやアルゼンチン、チリ、ボリビア、ナミビア、タンザニアと3大陸で相棒として乗ってきたハイラックスは、お気に入りの1台です。
そしてコンビを組むドライバーは、過去FIAアジア・パシフィックラリー選手権ジュニアカップシリーズチャンピオンを2年連続獲得している番場 彬(ばんば あきら)選手です。ワクワクしながら挑んだラリーを振り返ります。
クロスカントリーカーやSUVが参戦するラリー
XCRスプリントカップ北海道は、2022年から始まり、北海道ならではの雪やグラベルなど雄大な大地がステージとなるラリーです。
今シーズンは全6戦を開催予定。8月26-27日に胆振地方で行われた今回の「XCRスプリントカップ北海道Rd.4」は、JAF北海道ラリー選手権(GRヤリスやインプレッサ、ランサー等が参戦)に併催され、総エントリー台数43台の賑やかなラリーとなりました。
参加車両は、トヨタ ランドクルーザーやハイラックス、日産 サファリやテラノ、三菱 パジェロ、スズキ ジムニーなどラダーフレームの4WDだけではなく、トヨタ RAV4やライズ、日産 エクストレイル、三菱 アウトランダーやエクリプスクロス、ホンダ CR-V、ダイハツ ロッキーなど、実に様々です。
モノコックボディでメーカー出荷時に全高160cm以上の車両が参戦でき、車両規則に従ったロールケージや消火器、4点式シートベルトを装備、タイヤはATタイヤ限定です。
ハイラックスとプラドの熱い戦いにしびれる
番場/寺田組がハイラックスで参戦するクラスには、過去TGRラリーチャレンジで4度のシリーズチャンピオンを獲得したHATANO選手がランドクルーザープラドで参戦。また、モータージャーナリストで全日本ラリー選手権にもシリーズ参戦経験を持つ竹岡圭選手は、FJクルーザーで参戦します。
更に、北海道でマシンチューニングによってモータースポーツや四駆を盛り上げるソーダファクトリー代表の惣田政樹選手がランドクルーザー70、さらに三菱自動車社員がエクリプスクロスPHEVで参戦、とバラエティに富んだマシンが並びます。
また排気量2,000CC以下、車両重量2トン以下のクラスには、アジアクロスカントリーラリー参戦から帰国直後のミスターBaja(バハ)の塙郁夫選手がライズで、織戸茉彩/槻島ももの女性コンビがジムニーで参戦しました。
今回初めてコンビを組む番場選手とは、以前一緒に仕事をしたこともあり、その速さを知っていてとても楽しみにしていましたが、足を引っ張らないかという不安もありました。
前日のレッキで、とても丁寧にペースノートへの記載事項を教えてくれます。SSを2回レッキができるので精度を上げるのにとても助かります。
ホテルに戻った後もどこまで連続して読み上げるかなど、番場選手の好みを教えてもらいます。ただすべて英語でコールするため、一抹の不安を抱えながら日曜のラリーを迎えました。
今回はSSが短縮され、3.83kmのKASUGAと1.91kmのASAHIの2本のSSをそれぞれ3回、計6SSで競います。KASUGAは森林のなかの林道で、路面が土でテクニカルなコーナーが連続するSSです。ASAHIは比較的スピードが出る砂利のSS。
番場/寺田組のハイラックスは、元々TCDがサスペンションなどチューニングを施したマシンをCUSCOが引き継ぎ、セッティングを煮詰めながら速さを増しています。
ただホイールベースが長く、リヤサスペンションはリーフスプリングです。また車重バランスが空荷だとリヤのトラクションが若干かかりにくくなるため、燃料を多く入れ、総重量は重くなるものの、少しでもリヤに荷重をかけるようにしています。
また、センターデフを持たないパートタイム4WDなので、アンダーステアが出やすく乗り方にはコツが必要です。一方、ランドクルーザープラドは、フルタイム4WDで回頭性がよく、前後コイルスプリングで操縦安定性もいいです。
この2台でトップ争いをします。マシンとしてはプラドが有利ですが、ハイラックスに乗り慣れてきた番場選手と、TGRラリーチャレンジのエキスパートクラスでトップ争いをするHATANO選手は、車高の高い4WDで初参戦なので、いい勝負が期待できます。
そして迎えた本番
SS1は、番場選手にコールするタイミングを教えてもらいながら走り、プラドと約13秒差をつけてゴール。ホッとしたものの、SS2では1.2秒差と気が抜けない1ループ目でした。
それにしても番場選手は、フットブレーキをうまく使いながらマシンの姿勢コントロールを行って、トラクションをかけたり向きを変えたりと、さすがの走りです。
私も2ループ目は、ペースノートの読み上げに慣れてきました。しかし、番場選手のヘルメットバイザーが緩むトラブルや、HATANO選手がプラドに乗り慣れてきたこともあり、SS3では5.3秒差で勝ったものの、SS4では1.3秒差で負けてしまいました。
しかし3ループ目では、SS5は7.8秒、SS6は0.3秒勝って引き離し、結果、26.2秒の差で総合優勝することができました。
轍が深くなるほど本領発揮するマシンたち
今回のSSは路面が土と砂利でしたが、走るたびに轍が深くなり、地区戦に参戦している86やヴィッツ、デミオはもちろん、GRヤリスやインプレッサ、ランサーですらフロントからボディアンダーまでぶつけるほど過酷なSSになっていきました。
XCRスプリントカップ北海道の参戦マシンは、轍が深くなるほど真価を発揮します。やはり大きなタイヤサイズとサスペンションストロークの長さが有利にはたらきます。
もっともチャレンジングだと思ったのは、エクリプスクロスPHEVです。ほぼノーマルでありながら、ハイラックス、プラドに次ぐタイムで走破したのは驚きです。
三菱はアジアクロスカントリーラリー(AXCRラリー)にフルモデルチェンジしたピックアップのトライトンで参戦、2024年1月に日本発売も予定され、好調のデリカミニとともにアウトドアで活躍するモデルが増えてきます。PHEVをモータースポーツの現場で鍛える光景に、明るい未来が見えてきました。
またライズはダイハツ ロッキーの兄弟車で、昔のロッキーと言えば小型のランドクルーザーかと思うくらい悪路走破性の高いクルマでした。現行モデルでその走りをオフロードで魅せてくれる塙選手とYOKOHAMAの挑戦は、コンパクトでリーズナブルなマシンでラリーに参戦できる新たな選択肢を提案してくれ、こちらも新たなオフロードモータースポーツの未来を切り開いてくれています。
またFJクルーザーは、以前、私が哀川翔さんやヒロミさんとAXCRラリーに参戦したときのモデルでコーナリング性能の高さがあり、さらに過酷なルートになれば本領発揮するモデル。
ジムニーはこのラリーに最も参戦しやすいモデルで、コストを抑えて楽しむモデルとしてこれから参戦台数が増えてくることを期待しています。
バラエティに富んだマシンが参戦するXCRスプリントカップ北海道Rd.5は、9月8日~10日に開催。ヤリ-マティ・ラトバラ選手も参戦するRALLY HOKKAIDOも併催されます。お近くの方はぜひXCRを観に行って、現地で応援していただきたいです。
写真:古閑 章郎・寺田昌弘 文:寺田昌弘
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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