ラリーやレース会場での併催イベントは、家族で水素利活用を学べて楽しめるコンテンツが多くてびっくり・・・寺田昌弘連載コラム
TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジへの参戦時、観客のためにTOYOTA GAZOO Racing PARKというイベントが併催される会場が多いです。私もとても興味があったものの、選手という立場上、時間がなくて観に行くことができませんでした。
またスーパー耐久シリーズやSUPER GTなど、サーキットでのレース開催時にも併催イベントがあるのですが、いつもピット側にいるので、イベントエリアへ行けず、どんなコンテンツがあるのだろうと思っていました。
そこで今回は、参戦する側でなく、ラリーやレースに併催されるイベントを観客目線で観に行ってみました。そこではカーボンニュートラルを目指す施策を学べるコンテンツが多く、特に水素を利活用したものが多かったです。大人から子供まで楽しめるコンテンツについてお伝えします。
TGRPラリーチャレンジin富士山すその
一昔前は気にならなかったんですが、カーボンニュートラルが進められている中、せっかく外へキャンプをしに行っても、ガスコンロやエンジン発電機を使ってCO2を出すだけでなく、特に発電機は自然の静寂も損ねてしまうなど、少し気になってしまう時代になってきました。そこで最初に目についたのが初代ミライで牽引している「ZEV TRAILER」。
このZEV TRAILERは、ミライから取り出した電気をトランクに積んだホンダの可搬型給電器で直流から交流に変換してトレーラーに送ることで、電化調理器具や掃除機など室内で使う電気をまかなうことができます。
可搬型給電器の出力が9kVA(ロスがなければ9,000W)なので、一般的なホットプレートにドライヤー、電子レンジを同時に使ってもまったく問題ないほど大容量。自宅にいる感覚でトレーラーが使えます。
すでに雪が降る福島の寒冷地で48時間連続稼働したり、静岡県から愛知県まで往復460km走行してヒッチメンバーや車体に問題がないか、負荷がかかるなかで冷却水温度、モーター温度など走行試験もしたりしています。
また防災訓練の炊き出しにキッチンカーとして有効性を確認したり、サーキットのパドックで選手たちのプライベートルームとして使用したり、小中学生に水素エネルギーを学ぶ移動教室としても活躍したりしています。
次におもしろかったのが「水素エネルギーロケット」。こちらは子供たちに毎回大人気のコンテンツということですが、これは学研の科学のキットで、リールのような手回し発電機で発電し、水を電気分解して水素を作り、その水素に点火してロケットを飛ばすというものです。
圧力で飛ばすのかと思ったら、そうではなく水素を爆発させて飛ばします。大人のなかには、1937年にアメリカ・ニュージャージー州で硬式飛行船ヒンデンブルク号が爆発した事故から、水素は危険と思い込んでいる人もいますが、これは個人的には包丁は危険と言っているのと同じ感覚で、使い方次第だと思います。
私は中学時代の理科の実験で、水を電気分解すると水素と酸素に分かれることを知り、水素エネルギーでクルマが走れるようになったら、石油が枯渇する前に代替エネルギーになるとワクワクしたのを今も覚えています。
このコンテンツで遊びながら水素エネルギーについて自然と学んでいる子供たちは、とても楽しそうで、彼らもきっと水素の可能性を感じていると思いました。
また豊田自動織機が展示していた電動フォークリフトと燃料電池フォークリフトも興味深かったです。日本の部門別CO2排出量の割合は、発電などエネルギー転換部門が約40%、続いて産業部門が約25%、運輸部門が約16%(2021年・温室効果ガスインベントリオフィスより)となっています。
工場など産業部門の割合が運輸部門よりも高いため、工場で使用されるフォークリフトなどがCO2を排出しないタイプになれば、CO2削減に貢献でき、工場内の空気を汚さず、騒音も減るなど、メリットがとても多いのです。
展示車両に子供たちが楽しそうに乗り込んで写真を撮ったり、親御さんが説明パネルを読みながらカーボンニュートラルに向けて産業界が取り組んでいることを実感していたりと大人も子供も楽しめる展示となっていました。
S耐ファイナル 富士4時間レースで観た3台のクルマ
11月に富士スピードウェイで開催されたS耐のイベント広場でも、水素利活用のコンテンツがたくさんありましたが、その模様はすでにGAZOO編集部でレポートしているので、こちらをご覧いただきたいのですが、特に注目したのが、3台のFCEVです。
私もミライのオーナーになって1年以上経ちましたが、水素を使用するモビリティーに乗って、水素を使う側になると、より現実的にFCEVに興味が湧いてきます。
会場にはトヨタ・クラウンFCEVとMIRAIスポーツコンセプトそしてホンダCR-V FCEVが展示され、ここ数年FCEVの乗用車はミライしかなかったので、今後選択肢が増えることが何よりワクワクしました。
クラウンFCEVは、セダンタイプでスタイリングでも大好評で後部座席の居住性のよさを追求したモデル。HEVもありますが、補助金を考慮するとHEVより安く購入できるメリットもあります。
MIRAIスポーツコンセプトは、現行モデルよりフロントマスクがカッコよくなり、ミライのオーナー仲間には、このフロントパーツだけでも「モデリスタで買えたらすぐ買う」という人も多いのですが、これはさすがになさそうです。
コンセプトがスポーツで、FCEVでよりドライビングプレジャーを追求したものなので、現在はあくまでコンセプトモデルとのこと。
そしてCR-V FCEVは北米向けCR-Vをベースにして今年に北米、日本で発売予定と発表されています。
待望のSUVで現行モデルの全長が4,694mmで、このままのサイズであれば日本でも扱いやすいと思います。さらにバッテリーへの充電機能もあり、言うならばプラグインFCEVと言うのでしょうか、バッテリー容量がおそらく大きくなることが予想されます。
東京都中央区の以前は東京オリンピック・パラリンピックの選手村だった約18haに建設されている「HARUMI FLAG」。こちらは5,632戸のマンションや商業施設など水素を利活用した新たな街として今春より入居が始まりますが、こういった街に暮らす方には、ぜひ自宅マンションだけでなく愛車もFCEVにしてクールに水素を使用していただきたいと思います。
そのためにもFCEVの選択肢が増えるのはとてもいいことだと思います。現在大型水素ステーションもエリア内に建設中ですので、開業したらミライに乗って水素充填しがてら水素の街を観に行ってみようと思います。
写真・文:寺田昌弘
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
[GAZOO編集部]
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