トヨタとホンダがスクラム組んで、ラグビーを通じてカーボンニュートラルに挑戦!・・・寺田昌弘連載コラム


NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25が、12月21日から今シーズンが開幕し、5月11日まで熱き戦いが繰り広げられます。

モビリティー関係のチームでは、ディビジョン1にトヨタヴェルブリッツ、三重ホンダヒート、静岡ブルーレヴズ(ヤマハ発動機)、ディビジョン2には豊田自動織機シャトルズ愛知、日野レッドドルフィンズ、ディビジョン3にはマツダスカイアクティブズ広島があります。

やはり関心が高いのはモビリティーダービー。
12月28日に岐阜メモリアルセンター長良川競技場でトヨタヴェルブリッツvs三重ホンダヒートがあり、今回もグラウンドの外ではトヨタとホンダがCO2を出さない給電サポートでタッグを組むということで行ってきました。

トヨタヴェルブリッツのホームは豊田スタジアムですが、ラリージャパンの関係でまだ使用できないこともあり(豊田スタジアムは2月1日の横浜キヤノンイーグルス戦から)、今回は長良川競技場がホームとなり、早朝から緑色のウェアを着たファンがたくさん観戦に来ていました。

チームカラーの緑は、トヨタ伝統のジャージが緑色であったことに起因し、ヴェルブリッツ(VERDE/緑:イタリア語)(BLITZ/稲妻・力強さ:ドイツ語)とチーム名になっています。

20店のキッチンカーやブース、中継車の電力をサポート

コロナ禍も収まり、ここ数年フェスが増えてきて、私もいくつか行ってみましたが、燃料電池や蓄電池からの給電は、安全性はもちろんなにより静粛性の高さが新たなイベントスペースの快適さを生み出していると思います。

たとえば初詣で神社に行ったとき、沿道にある屋台で料理している匂いに食欲はそそられると思いますが、エンジン発電機の音が邪魔して、大きな声で注文しなければならなかったりと、匂いはいいけど騒音は気分を下げます。

今回もトヨタとホンダで共同構築した、水素で走行する移動式発電・給電システム「Moving e(ムービング イー)」がベース。トヨタの燃料電池バス「CHARGING STATION」をマザーシップに、バスからホンダの外部給電器「Power Exporter e: 9000」を介して充電・給電器「Honda Mobile Power Pod e:」に組み込んだ可搬型バッテリー「Honda Mobile Power Pack」を充電して各キッチンカーに配ったり、トヨタ・ミライ、クラウンFCEVから給電を行っていました。

  • 水素を電気に変えてイベント会場の給電サポート

ホンダはCR-V e:FCEVで給電

クラリティFUEL CELLが2021年9月に販売終了してから、日本のFCEVは、トヨタ・ミライ、クラウンFCEV、ヒョンデ・ネッソしかなかったですが、ホンダは昨年夏よりCR-V e:FCEVのリース販売を開始しました。

北米を中心に日本でも展開し、私はまだ乗ったことはありませんが、水素充填だけでなく、充電できるプラグインなところは、水素ステーションだけでなく充電ステーションも使えて扱いやすいなと思います。

ただFCEVと比べてバッテリー容量を大きくする必要があるなか、CR-Vのボディによくレイアウトできたなと。
サイズも現行モデルのミライが、全長4,975mm×全幅1,885mm×全高1,470mmに対し、全長4,805mm×全幅1,865mm×全高1,690mmと全長、全幅が若干コンパクトになっているのもドライビングしやすそうです。

  • ホンダCR-V e:FCEVを学びに来る三重ホンダヒートの選手たち

中継車には定置型FC発電機から給電

ミライやクラウンFCEV、CR-V e:FCEVから可搬型給電器を介した給電では、機種にもよりますが最大9,000Wまでなので、さらに電力が必要なTV中継車には今回新たに定置型FC発電機から給電していました。

水素を充填したガス容器を何本かまとめて枠組みし、ガスの取り出し口を集約したカードルから定置型FC発電機を供給して発電します。TV中継車には車載用ディーゼル発電機が搭載されていますが、定置型FC発電機から給電することで、振動やエンジン音、排気音がなくなり、車内のオペレーティング室の作業環境がよくなります。

  • TV中継車へ給電する定置型FC発電装置(右)と水素が入っているカードル(左)

「CHARGING STATION」内では手湯が楽しめる

今回トヨタの燃料電池バス「CHARGING STATION」の車内では、発電した電力で足湯ならぬ手湯のサービスを提供していました。

バスの前を通る観客は、車内で何をやっているんだろうと関心があり、スタッフの声掛けで中に入ってみると、手湯が楽しめるということで、当日はかなり寒かったこともあり、バスから出てくるときにはみなさん笑顔で手だけでなく心も温まっていたようです。

CO2を出さないFC給電ですが、小型エンジン発電機などから切り替え、CO2排出を失くし、静粛性という新たな価値をプラスし、次は手湯のように電気を何に使うか、使いながら水素利活用のことを身近に知っていただくことも大切だなと感じました。

そしてS耐のときにはレーシングドライバーが、音楽フェスのときはアーティストがファンに向けてカーボンニュートラルに向けたアクションについて話してくれているので、ラグビーを応援しに来ているファンには、ぜひラグビー選手から話していただけたら、より伝わりやすいのではと思いました。

  • FCEV、FCバス、定置型FCが再生可能エネルギーとともに拡がっていくことに期待

写真:文/寺田昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


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