カリブ海に浮かぶ島々のクルマ事情・・・寺田昌弘連載コラム
昨年はニューカレドニアに行きましたが、ヨットに乗るようになってから、いつか行ってみたいと思っていたのがカリブ海。五大陸はだいたい走破したので、海も太平洋、地中海、インド洋、南太平洋とセイリングをしてきたところ、ちょうど撮影の仕事があり、念願のカリブ海へ行ってきました。目指すは2つのヴァージン諸島にある島々。そのクルマ事情も見てきました。
-
多くの島国が並ぶなかに米領、英領のヴァージン諸島がある
アメリカなのに左側通行!?米領ヴァージン諸島
円安の昨今、航空券も高いかなと格安チケットをネットで調べていたら、往復18万円と意外と高くないですが、行きは羽田からロサンゼルス、マイアミそして米領ヴァージン諸島のひとつ、セントトーマス島まで2回乗り換え、移動時間は約1日かかります。
ヴァージン諸島は米領と英領があります。現在の米領はもともと欧州数カ国が入植し、後にデンマークの植民地となりましたが、アメリカが買収しました。
おもしろいのがアメリカ領なのに日本と同じ左側通行であること。カリブ海にある島々の多くはバハマやジャマイカをはじめ左側通行の国が多いです。
ただ走っているクルマは左ハンドルで、これは昔からの流れでアメリカ、メキシコ、ブラジルなど自動車メーカー工場で生産されるクルマが左ハンドルだからだと思います。日本、イギリス、タイ、南アフリカなど右ハンドルを生産している工場から輸出するほどの台数がないこともあると思います。
セントトーマス島の空港に降り立つと、フォードの送迎用バンが並び、アメリカにやってきたと感じます。中心部でかつてカリブの海賊の拠点のひとつであったシャーロット・アマリーに行くと、圧倒的にJeepラングラーが増えてきます。古いクルマはセダンも多いのですが、新車の多くはSUVかCセグメントです。FORDブロンコも見かけます。
それより多いのがトヨタ・RAV4。初代から現在の5代目まで見かけます。2024年の北米販売台数で長年首位だったFord F-150の460,915台を抜き、RAV4は475,193台になりました。これは初代から少しずつファンを増やし、信頼を重ねた結果だとこの島で歴代のRAV4が走っているのを見て納得しました。
また新車で見ると日産のローグ、キックスもよく見かけました。オーナーに聞くと値引きによるメリットもあるが、デザインもいいとのこと。事実ローグは北米で販売台数245,724台の8位とTOP10に入るほどです。そしてCセグメントはKIA・Soulの新車が目立って多かったです。やはりヒョンデグループは販売台数で世界3位になるのが頷けます。
-
アメリカ、海沿いの雰囲気にJeepラングラーは似合う
-
Fordブロンコもよく見かける
-
Jeepラングラーだらけ
-
歴代RAV4が並ぶ
-
パトカーがsmart。2024年4月に生産終了になっているので次はどのクルマになるのか
-
ヒョンデ・サンタクルズ。モノコックボディのピックアップ
隣の島でも国が変わればクルマも変わる
フェリーで1時間ほど行くと英領トルトラ島に着きます。米領セントトーマス島はデンマーク時代から続く歴史的建造物を守り、歴史を感じましたが、こちらは素朴な田舎の島といった雰囲気です。
この島を1周する感じでヨットでセイリングしていたのですが、マリーナやゲレンデは整備されていて、たくさんのヨットや100フィートを越えるスーパーヨットまで海のインフラは申し分ないのですが、逆に道路は島を1周する幹線道路ですら片側1車線でのんびりとしています。英領ですが通貨はUSドルです。
英領だからMINIやランドローバー、ジャガーのクラシカルなタイプが見られるかなと期待したのですが、ディフェンダー110を1台見たくらいでMINIですら1台も見なかったのには驚きました。
この島で新車で多かったのはヒョンデ。TUCSONやKONAの新車はよく見かけました。またパトカーにFord、GMではなくトヨタ・4ランナーが採用されていたのは意外でした。米領では見なかったのですが、ここ英領ではHAVAL、長城汽車(GWM)といった中国メーカーのクルマを見かけることが多かったです。
-
ヒョンデが並ぶ。左がTUCSON、右がCRETA
-
中国ブランド長城汽車(GWM)のピックアップ
-
パトカーはトヨタ・4ランナー
トヨタに加え日産、スズキ、マツダ、スバルも人気
米領、英領どちらにもいえますが、日本ブランドも多かった。まずは北米生産のトヨタ・4ランナー、タコマそして上述のRAV4は英領に行っても同じように歴代のRAV4が走っていました。
次に多かったのがスズキ・ジムニー。過去モデルは見当たらず、現行モデルを見ました。確かに島内を自分の移動だけで乗るのであればジムニーは、気軽に駐車もできて便利。嵐などで道路が冠水したり、土砂が流れたりして荒れていても走破できるので、万一の時に頼れる相棒です。
またマツダもCX-3、CX-5を何台も見たし、スバルも旧型レガシィやクロストレックを見かけ、三菱も旧型RVR、チャレンジャーを見ました。日本ブランドがカリブ海の小さな島内の生活の足になっているのを見て誇らしく思います。
-
スズキ・ジムニーはいたるところで見かける人気車
-
日産キックス、ローグも人気
-
マツダCX-3やCX-5もよくみかけた
-
スバル・クロストレックも数台みかけた
10日間ほどの米領・英領ヴァージン諸島の旅でしたが、クルマ事情を見てみたら、EVはまだ見ないですがJeepやFordブロンコなど長年愛される北米らしいクルマをベースにRAV4を中心とするトヨタファンの多さ、ヒョンデグループの台頭、日産の健闘など日本にいたら気づかないことが、現場でいろいろ見られておもしろかったです。
写真:文/寺田 昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。