【クルマ購入ドキュメント第3回】スバルの中古車を買いに、いざトヨタ販売店へ！

車庫の仮契約は済ませたが、肝心のクルマがまだ決まらない。

気になるクルマの写真を集め、仕事で会うクルマを持っていない大人たちに、「見た目で選ぶとしたらどれ？」とアンケートを取ってみた。ただし、広告・グラフィックデザイン系の仕事をしている人にしか聞いていないので、答えは偏っている。

仕事で会ったクルマにそれほど興味のない20代30代の男女のほとんどが、グリーンかベージュのジムニーシエラと、プロボックス/サクシードのキャンプカスタムカーという結果に。カクカクしたフォルムと色のバランス、レトロな雰囲気がいいらしい。同意だ。

しかし、私の中で頭文字Dの影響は絶大。当時モノは初心者にはハードルが高いので、登場したクルマの子孫が気になる。トヨタ 86とスバル WRXだ。

86は、何かのインタビューでトヨタの開発者が「もし頭文字Dがなかったら、86は生まれなかった」と話しているのをみてシビれた。さらに、YouTubeで土屋圭市氏が86について語る動画をみて涙がでた。熱い。めちゃくちゃ熱い。スバル BRZと姉妹車だが、「86」という名前がいい。愛車を86と呼べるなんて最高じゃあないか。

WRX STiは、ラリーカーそのまんまのデザインがいい。2000CCで320psって、どこを走るつもりだ。快適さとかラグジュアリーとか、そういった時代の流れをことごとく無視した大人気ないフォルムも良い。かっこよすぎる。最の高じゃあないか！

自分1人しか乗らないのなら、WRX か86もいいかもしれない。しかし、幼い子どものいる社員家族にも貸すし、撮影仕事でも使うことを考えると、スポーツカーは諦めないといけない。それに、友達を乗せてキャンプやスキーにも行きたい。そうすると、 5人しっかり乗れて荷物も載るオートマ車にしなくてはいけない。

いろいろ考えると、１台持ちでスポーツカーは厳しい。私は独身だが、世のお父さん達はこうしてスポーツカーを諦めるのだろうか。

ということで、スポーツカーのような楽しさを持ちつつ荷物も載るスバル車が急浮上した。少し前まで存在しなかった選択肢だ。

これまでスバル車を意識したことはなかったが、一度興味を持つと、街でけっこう走っていることに気付く。なにせ、いろんな意味で地味だから、意識しないと目に入ってこないのだ。まるで、忍者のような車だ。だが、そこがいい！

クルマ選びをはじめるまでは、スバル車に対して地味というイメージしかなかった。それが、見れば見るほど、知れば知るほど、スバル車が好きになっていく。まるで、クラスの地味でおとなしい女子が、実は運動神経抜群で、メガネを外して走る姿が美しく、派手さのない芯の通った性格も魅力的で、知らない間に恋に落ちた…みたいな。いや、我ながら言っていて気持ち悪い。とにかく、今はスバル車がかっこよく見えてしかたがないのだ。

なにせ、スバルは前の社名が富士重工業株式会社だ。その前身は、戦時中に数々の戦闘機の名機を生み出し、日本初のジェット戦闘機「橘花（きっか）」を作った東洋最大の航空機メーカー、「中島飛行機」だ。映画「風立ちぬ」のモデルで、ゼロ戦を開発した堀越二郎はライバルの三菱だが、ゼロ戦の総生産数はライセンス生産の中島飛行機の方が多い。

スバルのロゴマークのプレアデス星団「六連星」は、戦後にGHQに解体された旧中島飛行機系6社が集まったという意味だそうだ。想像だが、なぜ「星」なのかというと、中島飛行機の軍用機が空冷星型エンジンに特化していたということもあるのではないだろうか。スバル車には、飛行機作りの魂が生きていて、グリルの飾りは飛行機のウイングをモチーフにしているそうだ。熱い。熱すぎて胸焼けしそうだ。

スバルは北米で人気があるそうだ。かつてアメリカと戦った戦闘機メーカーに由来する会社のクルマが、今はアメリカで受け入れられている。これは、平和な時代だからこそだ。なぜか、私まですごく嬉しい。戦争は大嫌いだが、中島飛行機から続くスバルの物語にはロマンを感じるのだ。

また、「水平対向エンジン」という、今ではポルシェくらいしか採用していないエンジンにこだわっているのもかっこいい。このエンジンのおかげで、スバル車は燃費があまり良くないというイメージがあるそうだが、通勤で使うわけではない私は、燃費よりもロマンを取りたい。

これから始まるクルマ人生。いずれはランドクルーザーと、最新のGR86も欲しい。そして人生最後のクルマには、子どもの頃の憧れのポルシェ911に乗りたい。でも、人生初のクルマは中古のスバル車に決めた。これ以上悩むと、また選択肢が増えるから、もう決めた。スバル一択！

藤原文太が「実用的で楽なやつ」と言ったインプレッサの子孫、WRXは速そうでかっこいいのだが、初心者が乗れそうな車ではないし、荷物も載らない。次の候補はフォルムがかっこいいレガシィ アウトバックだが、私の借りる車庫には入る気がしない。そうすると、残るはレヴォーグと、インプレッサXVと、4代目フォレスターだ。よし、だいぶ絞れた。もうブレないぞ。

この3台だと、レヴォーグの2.0が好みだ。あのWRXと同じ、ボンネットのターボ穴が男心をくすぐる。2000CCで300psのターボというのもたまらない。ただ、調べていると、一つ気になる点がある。最低地上高というやつだ。レヴォーグはAWDで雪道にも強いというが、最低地上高が低いので悪路で底を擦るというクチコミが多いようだ。山奥の秘湯めぐりをしたい私には、これは痛い。見た目は最高に好みなのだが、底を擦るのは心配だ。今回は見送ろう。

残りはインプレッサXVと、フォレスターだ。インプレッサXVは、「ちょうどいい」感がとてもいい。しかも、名前に「インプレッサ」を冠している。これはいい。自分の愛車を、「インプ」と呼びたいではないか。

フォレスターの4代目は、XTというグレードがあり、ターボで280psあるという。SUVのフォルムなのに、2000CCターボで280psって。なんだそれ。そんなパワーが必要なのだろうか。いや、必要ないだろう。でも、必要かどうかとか、そういうのは問題ではない。ワクワクするではないか！

決めた。インプレッサXVか4代目フォレスターで、安全運転支援システム「アイサイト」が搭載されているものにしよう。中古車屋さんには、「あなたの年齢でアイサイトは要らないんじゃないですか」とも言われたが、保険みたいなものだ。目指せ、無事故無違反！ゴールド免許死守！

よし、実際に中古車屋さんに見に行こう。

早速、大手中古車サイトで検索し、何件か連絡してみた。実際に聞くと、本体と総額にだいぶ差があるものが多い。本体価格の安さにつられると、総額はプラス30－40万円なんてこともある。総額表示と別に、「タイヤの山がないので、タイヤ代がのります」なんてこともある。中古車とはそういうものなのか…。問い合わせて本当の総額を聞いてみないと、同じ価格帯のものと比較ができない。

それにしても、同じ車種でも、年式、走行距離、カラー、状態、オプションで全然値段が違う。特に、スバルは「年次改良」というものがあるらしく、中古車を買うときは要注意だ。モデルの最初の年がA型、2年目がB型、3年目がC型…と続くのだが、年次改良で大幅な変更がおこなわれると、そこに大きな価格断層ができる。

私の狙っている4代目フォレスター（SJ系）だと、C型とD型の間に、大きな価格断層がある。C型まではアイサイトver.2だったのが、D型ではVer.3に進化し、フロントまわりもスタイリッシュになり、なんやかんや大幅改良されたせいだ。同じくらいの走行距離だと、C型までとD・E型では、中古の相場が50万円ほど変わってしまうこともある。これは大きな差だ。

やっぱりD型に以降にしようか。走行距離は3万キロ以内で。…と、条件を追加しているうちに、気付けば、最初に想定していた予算の倍近くの価格で検索していた。

これは、量販店に10万円くらいのノートPCを買いに行ったのに、CPUやらSSDやらを少しずつ上げていくうちに、気づけば20万円払っていた…みたいなのと一緒だ。どこかで線引きしないと、キリがない。

探し疲れてきたので、久々に、地元にいるバイク時代の相棒・アベ君にLINEしてみた。

「中古車選びは、店選びと、縁や。出会いやで。目利きできるなら、自分の目で選んで本体価格が安いのを保証なしで買ったらええ。でも君、初心者なんやから、信用できる店で保証付きを買って、長く面倒見てもろたほうがええやで。」

なるほど。まっとうな意見だ。本当は、古くからの馴染みの整備工場付きの信頼できるお店がいいのだろう。小さくてアットホームな町工場で、頑固だけど腕の良い店主がいるお店とか最高だろうな。しかし、東京にそんな知り合いはいない。

GAZOO編集部の担当者にも相談してみた。

「TOYOTA公式中古車サイト、GAZOO U-Carから探してみてはいかがですか？トヨタ販売店の中古車は、下取りで入った状態の良いものが多いですよ。整備もしっかりしていますし、全国のトヨタ販売店での保証も付くので安心ですよ。…といいますか、せっかくGAZOOで記事書いているのだし、そこはGAZOO U-Carでも探しましょうよ。トヨタ認定中古車ですよ」

「でも私、トヨタではなくスバルの中古車を買うつもりなんですよ。もう車種決めちゃいましたし…。もう変更はしませんよ」

「スバルの中古車も扱っていますよ。GAZOO U-Carで買えば、スバル車でも全国5000店以上のトヨタ販売店で保証が付きますよ。トヨタ認定中古車ですから！」

「え、トヨタ販売店でスバルの中古車買って、全国のトヨタ販売店で保証を受けられるんですか。マジですか？」

「マジです」

なにそれ有名？知らなかった。というか、よくGAZOOの記事を読んでいるのに、その発想は全くなかった。
専門誌もある中古車専門サイトでは探したが、GAZOO U-Carはチェックしていなかった。

トヨタ販売店の中古というと、新車購入の下取りで入ってきたクルマというイメージがあるが、他社のも扱っているのだな。

トヨタ公式中古車サイト U-Car

早速検索してみた。ある。けっこうある。あまりに古いクルマはないが、最近のクルマはトヨタ以外でも豊富にある。編集部の方は、「値段は相場相当ですよ」と言っていたが、総額で比べると、相場より安いものもある。なんだよ！ここは意外と穴場なのかもしれない。

しかも、基本で付く１年保証が手厚い。オプションで３年保証付けるとさらにお得感がある。なんといっても

トヨタ販売店だし、怪しいクルマは扱っていないだろう。私のような心配性にはいいかもしれない。

試しに、まだ未練のあるレア車、レクサスIS250Cも検索してみた。

あった…。この走行距離でこの値段は、相場よりかなり安い。かなり優良物件ではないだろうか。しかし、よく見ると、「鹿児島県内の販売に限らせていただきます」とある。なんだそれは。たとえ鹿児島県でも取りに行くよ？それでもダメ？

聞けば、アフターフォローを含めた長いお付き合いを目指し、地元地域に限定して販売することも多いのだとか。

アベ君に聞くと「そんなん普通やで」と。知らんがな。

欲しいクルマが対象地域外だと悔しいが、逆に言うと、対象地域だとかなりオトクなクルマに巡り合う可能性もあるいうことだ。

よし、選択肢が増えすぎると選ぶのも大変だから、はじめてのクルマはGAZOO U-Carで買おう。決めた。トヨタ販売店でスバルの中古車。空気を読まない感じが私らしい。

またGAZOOの編集部さんに連絡してみた。

「狙ってるスバル車、ありましたよ！しかも、走行距離と状態と総額を考えたら相場よりおトクでしたよ」

「へー。それは良かったですね。しかもトヨタ認定中古車ですね」

「またか！」

さっそく週末に、GAZOO U-Carで見つけたインプレッサXVを1台、フォレスターを3台、まだ未練のあるレヴォーグ2.0を1台見に行くことにした。

インプレッサXV・デザートカーキの低走行車を見に、「千葉トヨタ木下店」さんにお邪魔した。都心から電車で約1時間半、メーカー系販売店や中古車屋さんは駅から遠いことが多いので、電車で行く際は、駅まで迎えに来てくれるかの確認が必要だ。

木下駅まで迎えに来てくださったのは、担当の島田さん。お迎えカーはプリウスだ。プリウス、後部座席が意外と広くて、座り心地がいいな。これ、燃費もいいんだろうな。

「島田さんは、個人では何に乗っているのですか？」

「私は個人でもずっとプリウスですよ」

やはりプリウス。さすが、「ラ・ラ・ランド」でエマ・ストーン演じるミアが駐車場にプリウスを停めると、他の車も全部プリウスだったというだけある。売れる車は、売れる理由があるということか。

燃費…。また気持ちがブレそうになったが、ここは意思を固く持とう。

お目当てのインプレッサXVは、外も中も、かなりキレイ。トヨタ販売店の中古車は、整備前でもキレイに掃除されているので、清潔感がある。なんでも、シートまで外して車内を洗っているのだそうだ。ついでに他の中古車も見てみると、気になっていたレクサスCT200ｈの前期型が！プリウスベースの燃費の良さに、走りを重視した足回り。コンパクトなのに内装もいい感じ。しかもルーフ付きでリーズナブル！また気持ちがブレそうになったが、インプレッサＸＶに戻る。

「タイヤ、減っていますね」

「タイヤは新品交換してお渡ししますよ。総額に含まれています」

「一応聞きますけど、タイヤは国産ですか？」

「国産です」

これは、もう決めてしまおうか。ここで、見積もりと支払方法を確認しよう。支払い方法をまとめると、①現金一括②トヨタカード一括③通常ローン④残価ローンの4種類。

③の通常ローンは、どこも金利が高く、8-8.9％が一般的のようだ。④は、新車では知られた方法で、車両代の任意の比率（車種によってまちまち）を残価として、残りを数年間のローンで払うというもの。

千葉トヨタでは、残価ローンの際の金利が格安！トヨタ車以外の中古車でも、残価ローンが使えるものがあり、今回のインプレッサXVは、対象なのだそう。

残価ローンは、終了時に「車を返す」「残りを一括で払う」「残りを再度、ローンを組み直して払う」の３択になる。ネットで調べると、新車の残価ローンでは、会社によって違うが、1年ごとの走行制限距離が決まっていて、カスタムはNGなどの条件があるらしい。期間終了後の査定もあるので、よっぽどキレイに乗るのでなければ、お得感が薄いような気もする。しかし、そんなに高くない中古車で、期間終了後に残りを一括で払う予定なら、金利の安さは魅力的だ。

整備工場もある千葉トヨタ木下店は、納車も早そう。お店の方もアットホームで親切だ。これは、もう即決してしまおうかしら。

いや、まだ1件目だ。他も見てから考えよう。

2件目に訪れたのは、都内最大級の「トヨタモビリティ東京 U-Car昭島店」。サービス工場完備、在庫展示180台、敷地内に試乗コースまである大型店だ。昭島駅から徒歩で行けるのもありがたい。

案内してくれたのは、勅使河原さん。さっそく、お目当ての4代目フォレスター最終型のX-ブレイクを見せてもらった。

高年式、低走行だけあってめちゃくちゃキレイ。ほとんど新車。お値段もおトク感が大きい。しかし、XTではないので、ターボではない。どうしよう。

勅使河原さんに助手席に座ってもらい、いざ試乗。緊張する。はじめて運転するフォレスター。思った通り良い！当初の予算からだいぶオーバーだけど決めてしまおうか。

敷地内を3周して車庫入れの練習にも付き合ってもらいながら、聞いてみた。

「これ、残価ローン使えます？」
「すみません。残価ローン、トヨタ車の対象車だけなんですよ」

そうか。会社によって支払い方法が違うのだな。それにしても、これいいなあ。どうしよう。

かなり心が揺らいだが、まだあと3台見る予定がある。中古車は縁だから、売れてしまったら仕方がない。でもコレ、すぐに売れちゃうのだろうな。

この昭島店は、展示している車種も豊富なので、まだ車種を決めていない人も、ここでいろいろ試乗して決めるというのもアリかもしれない。店員さんも相談にのってくれるので、「クルマで何がしたいか」をじっくり話して決めるのもいいと思う。

「ここで買ったら、納車の時に、敷地内で勅使河原さんが車庫入れ練習に付き合ってくれますか？」

「まかせてください！」

クルマもバイクも大好きだという勅使河原さんは、本当に親切。もう、「テッシー」と呼びたいくらいだ。それにしても、敷地内コースはメリットが大きい。

次に行く「トヨタモビリティ東京 U－Car昭和の森店」は、昭島店からクルマで5分の距離。勅使河原さんにクルマで送ってもらいながら、車内で「頭文字Ｄ」の話で大いに盛り上がった。

3件目は、「トヨタモビリティ東京 U－Car昭和の森店」。フォレスターXTのC型だ。カラーは赤系の「ヴェネチアンレッド・パール」。

いつも思うのだが、クルマのカラーのネーミングセンスって独特だな。なんというか、独特。だが、そこがいい！

この物件は価格でお得感があったのだが、正直、見るまでは「カラーが…」と思っていた。しかし、実際に見ると、この色もかなりかっこいい。やはり、クルマは実物を見ないとわからない。

案内してくれたのは松井さん。クルマでキャンプに行くのが大好きなのだそう。表にヴァンガードやパジェロミニも並んでいて、キャンプの話で盛り上がった。

所狭しとキレイに並ぶ展示車たち。中古車屋さんでよく見る風景だが、出し入れ大変そうだな…。なんて思っていると、レヴォーグを見に行く予定だったお店から、「売れちゃいました」と電話が。いい中古車は、足が速いな。

3店見て思ったが、それぞれのお店が個性的で楽しい。中古車屋めぐりって、引っ越しの時の物件めぐりに似ている。「このクルマにしたら、こういうパーツ付けて、こういう場所に行こう」という風に、未来に夢が広がるのだ。

しかし、私は今すぐにでもクルマが欲しい。あと1台見て、そして決めよう。

中古車購入は縁。検討している間に売れちゃうこともあるし、出会って即決なんてこともある。

最終的に買ったクルマが、きっと運命のクルマなのだ。

次回もお楽しみに！

（テキスト、写真：古山玄（そこそこ社）、イラスト：本村誠、編集：GAZOO編集部　岡本）