【クルマ購入ドキュメント第4回】まさかの即決!?一目惚れにまさる購入動機はない。

3件見てまわり、どれも良かったのだが、すぐに決めなくてもいいかなあという気がしていた。

トヨタ販売店の保証付きという安心感があるから、どれを買ってもクルマの状態には不安はない。一番のポイントは、「そのクルマを愛せるかどうか」だ。買ったものの、なんとなく乗らないっていうのが一番怖い。

4件目、トヨタモビリティ東京 江戸川中央店。思いもしなかったカラーに一目惚れ。

4件目に向かったのは、トヨタモビリティ東京 江戸川中央店。4代目フォレスターXTの後期型、2016年式のD型だ。

新小岩駅からタクシーで5分。案内してくれたのは、ベテランの細川さん。

「こちらです」

「買います」

「え?」

店内に展示されていたグレーのフォレスターを見た瞬間、コレだと思った。ガンメタに近い、「ダークグレーメタリック」のフォレスターXT。即決だった。

よく、「結婚する相手とはじめて会った時、この人だと思った」というエピソードを聞くことがあるが、こういう感覚なのだろうか。ただし、私は独身だからそういう経験はない。

「一応、キズなどの状態の説明をさせてください」

「一応、聞きます」

細川さんに、なんやかんや細かく説明されてはいるが、上の空だ。ピヨピヨピヨ。もはや心地よい鳥の鳴き声にしか聞こえない(ごめんなさい)。目の前にあるグレーのフォレスターに夢中だ。トヨタ販売店の中古車だし、細かく聞かなくてもまあ大丈夫だろう(説明はしっかり聞きましょう)。

「大丈夫ですか?ここまでで、何か質問ありますか?」

我に帰ったときに説明されて気づいたが、助手席側のドアに、「ドアパンチ」された小さなキズをレタッチした1平方センチメートルくらいの跡がある。いや、どうでもいい。そんなのは、大好きな彼女にある小さなニキビ跡みたいなもので、たいして気にならない。いや、独身だけど。

ついでに、店内を見てまわった。候補だったが価格とサイズで断念したハリアーが!しかも、サンルーフ付き!真っ赤なカラーも珍しくてカッコいい!この先代ハリアーの大型サンルーフは、開放感があってすごく気持ちがいい。内装も豪華で、高級感がすごい。

そういえば、最初はフォレスターもサンルーフ付きに限定して探していた。気持ち良さそうだというのが第一の動機だったが、他にも理由があった。

海外アクション映画のカーチェイスシーンで、敵のクルマに追われた主人公のクルマが、ヨーロッパの歴史的な街の狭い道に逃げ込む場面を見たことはないだろうか。突き当たりまで進み、道が狭過ぎてドアが開かなくなると、主人公がサンルーフから颯爽と逃げるという、お決まりのパターンだ。そう、大型サンルーフは緊急脱出口になるのだ(個人の見解です)。

あと、最近多いゲリラ豪雨。ドアまで水が上がってきて立往生したときに、サンルーフから屋根に出てヘリの救援を待つ…。なんてことも、ナイとは言い切れない(いやナイだろう)。

しかし、そんなことを言っていたらキリがない。それに、そんな特殊な状況には出会いたくない。それこそ、そういうのは心配性の準備マニアならではの発想なのかもしれない。

だいたい、私はコピーライター兼広告写真家だが、「もしかしたらこんな特別な撮影を仕事で依頼されるかもしれない」という理由で買ったカメラに、そんな特別な機会が訪れたことはなかったではないか。たとえば、水中撮影を依頼されたときに使おうと、泳げないのに買った水中カメラ。戦場取材を依頼された時に使おうと買ったオリーブドラブカラーのフィルムカメラ。そんな特殊な依頼が、広告写真専門の私に来るはずがないではないか。それに、そんな専門外の依頼が来たら断るだろ普通。

クルマでもなんでも、万能なんてものはない。全てに対応しなくてはならないなんて、考えなくていいのだ。

真っ赤なハリアーもかっこいい、めちゃくちゃかっこいい。

でも、もう決めた。このグレーのフォレスターに決めた。改めて席に座って詳しく説明を聞くと、条件もいい。車検もたっぷり残っているし、総額でお得感がある。車内もキレイ。オプションはあまりついていないが、そこもあまり気にならない。

クルマの外見のデザインって、機能とカタチにカラーが合わさって完成すると思う。個人の好みだが、車種によって合う色と合わない色がある。私の中では、フォレスターのカタチに合う色は、まさかのダークグレーメタリックだった。候補にあがっていなかったカラーだったが、実際に見ると一目惚れだったのだ。

トヨタモビリティ東京 江戸川中央店は、新車とU-CARを両方扱う、サービス工場併設の大型店だ。屋内にも屋外にもクルマが展示されている。他の気になるクルマたちを見て回ったあと、早速、商談に入った。支払い方法は悩んだが、通常ローンにした。あとは、頭金と月々の支払額、期間だ。金利分を納得できる金額に抑えたいので、期間と月々の支払額は、そのバランスだ。

決めるのは一瞬だったが、そのあと説明や支払い方法の話し合い、契約の手続きで2時間があっという間に過ぎた。

「ついに、はじめてのクルマを決めてしまった」

大袈裟かもしれないが、なんだか頭がボーッとする。少し前まで、「いつかはクルマを買う日が来るのかな」と思いつつ、現実感はなかった。まだ完全な現実感はないが、あのグレーのフォレスターが、もうすぐ自分のクルマになるのだ。

おなかがすいたので、帰りに新小岩駅近くで見つけたラーメン屋「かいざん」に入ってラーメンを食べた。これも大当たりで、自分の好みにドストライク。おいしい。

いい日というのは、全てがうまくまわるものだ。また江戸川中央店に来るときの楽しみができた。

納車準備とペーパードライバー講習。手続きさえも、なんだか楽しい。

帰宅後、ウカれまくってGAZOO編集部の担当さんに電話で報告をした。

「決めましたよ!スバルのフォレスターXT。トヨタモビリティ東京 江戸川中央店で一目惚れして、即決しました!GAZOO U-Car、教えてくれてありがとうございます!」

「本当にスバルにしたのですね…。まあ、トヨタ認定中古車ですから。おめでとうございますうぅ…」

「ん?」

翌日から、さっそく納車の準備をはじめた。

必要なのは、ローン契約の口座情報、印鑑証明、車庫証明。あとは、任意保険の申し込みだ。

任意保険は、クルマを買うときにお店で申し込むこともできるが、私は長年付き合いのある保険屋さんを呼ぶことにした。めちゃめちゃ稼いでそうな女性だ。

私の歳でゴールド免許だと、車両保険を付けなければまあまあ安くなりそうだが、新卒社員にクルマを貸すこともあるので、保障マックス、車両保険アリで対象年齢を20歳以上とした。

「そういや、お姉さんは何に乗っているのですか?」

「私は新車で先代のハリアーですよ。買い換えるときのリセールバリューを考えて、白でサンルーフ付きのにしたんですけど、サンルーフって開けないですね」

「リセールバリューか。さすが、賢いなあ」

先代のハリアーは、バランスが良くてかっこいい。もう少しだけサイズと価格がコンパクトなら、ハリアーも良かったな。トヨタの全周囲カメラは、初心者にはかなり便利そうだ。

車庫証明は、お店で頼むこともできたが、警察署は家から徒歩2分なので、代行費を節約することに。クルマの車検証のコピーと不動産屋でもらう保管場所使用承諾証明書、保管場所図面、印鑑と印鑑証明を持って警察署に行った。小心者なので、何も悪いことをしていないのにドキドキする。

「車庫証明お願いします。これ、書類です」

「へえ、スバルね。なんてクルマ?」

「フォレスターXTです」

「それ、スピード出るわよ。気をつけてね」

「もちろんです。安全第一です。ペーパードライバーで不安なので初心者マークをつけようと思っているのですが、初心者マークって、免許取得から何年も経っていても、貼っていいのですか?」

「付けていても違反にはならないわよ。でも、初心者マークをつけているクルマに意地悪してくる人もいるらしいから、くれぐれも気をつけてね」

「えー、じゃあどうすればいいんですか」

「気をつけて安全運転するしかないわね。最近は、対象年齢じゃないのに高齢者マークを貼る初心者もいるみたいよ」

「なにそれ斬新。そんなのアリなんですか?」

「付けても違反ではないですよ。でも、どこにでも意地悪な人はるからね」

「みんながお互いを気遣い、優しくなればいいんですけどね」

高校時代は警察署に対してなぜか過剰に恐怖心を抱いていたが、今の警察署はとても親切でフレンドリーだ。わからないことも丁寧に教えてくれる。時代が変わったのだろうか、自分が変わったのだろうか。たぶん、その両方なのだろう。

調子に乗って、「秋の交通安全週間の“めるる”(生見愛瑠)のポスターと、ピーポ君グッズをください!」と言いかけたが、さすがに厚かましくて怒られそうなのでやめた。

翌週、発行された車庫証明とシールを受け取って、江戸川中央店に送れば完了だ。

教習所の教官は、バイクマニアでカーマニア。好きなものが同じだと距離が縮まる。

運転が不安なので、ペーパードライバー講習を受けることにした。ペーパードライバー講習は、教習所がやっているものと、教習所を持たないペーパードライバー専門の路上スクールの2種類がある。

後者は、基本的に路上で、任意の駅で待ち合わせてスタートする。教習所内でも受けることができるが、教習所の「場所貸し」を利用するため、基本的に教習所の教習が終わった後の遅い時間になる。

まずは都内で教習所がやっているペーパードライバー講習を探したが、コロナ渦で予約が殺到してパンクしているらしく、ほとんどがペーパードライバー講習そのものを中止していた。

次に、教習所を持たないペーパードライバー講習専門のスクール。検索して、いくつかのスクールの予約状況を見たが、これも予約が殺到しているらしく、2ヶ月先までほとんど埋まっている。

そういえば、都内近郊の大型中古車店では、コロナ渦になって過去最高売上を更新している店もあると聞く。中古車が売れているのも、ペーパードライバー講習が人気なのも、コロナのせいもあるのかもしれない。

仕方ないので、LINEでキャンセル待ちを登録した。いくつか登録すると、しばらくしてキャンセル情報が送られてきた。夜遅いが仕方ない。予約だ。

講習が決まると、悪い癖がでてきた。「カタチから入る」という癖だ。

はい買った。PUMAのドライビングシューズ、スピードキャット。SPARCOとのコラボモデルだ。ついでに、昔のヒーローがしてそうな革手袋も買った。

テンションが上がってきた。ATに乗る初心者がドライビングシューズとか、恥ずかしいと思われるかもしれない。でも、実際はアクセルとブレーキの調整がしやすくなるので、初心者こそドライビングシューズを履いた方がいいと思う。(あくまで、ペーパードライバーの意見だけど)

まず、キャンセル待ちで予約の取れたスクールで講習を受けてみた。教官は、厳しそうな60歳前後の男性。

できない。思っているよりできない。20年間ペーパードライバーはさすがにキツい。1時間の講習が終わる頃、やっと教官と話す余裕がでてきた。

「あ!隣にいるクルマ、かっこいい。最近のシビック・タイプRかなあ?」

「うん。シビックですね。あれはいいクルマだ」

「いいっすよね。シビック。僕、若い頃にホンダのバイク、88CBR250Rと、88NSR250SPに乗ってたので、ホンダが好きなんですよ。買ったクルマはスバルだけど」

「私は、ゴールドウイングに乗っているよ。バイクもクルマも、ホンダ一択です。ホンダしか買わない」

「ゴールドウイング!?マジすか?持っている人とはじめて話した。すごいっすね!」

「大型二輪の免許は持ってないの?大きいバイクも楽しいですよ」

「持ってないですが、いつかとります!!」

「その前に、クルマに慣れなきゃね。スバルもいいクルマだよ。大丈夫、すぐに運転できるようになりますよ」

「はい!」

最初は怖そうな人だなと思っていたが、バイク好きのクルマ好きとわかれば、急に親近感が湧くのが不思議だ。

一度講習を受けて、運転スキルの無さを実感したので、このスクールのキャンセル待ちをしつつ、別の教習所のコースでもペーパー講習を受けることにした。探せば、近県でペーパードライバー講習をやっている教習所を見つけたので、さっそく受けに行くことに。

教習所内。懐かしい雰囲気だ。坂道発進やクランク。何もかも懐かしい。ここでの教官も、やはり60歳前後の男性。4時間が終わる頃には、だいぶスムーズに運転できるようになった。5時間目は路上。4時間通しで基礎から練習したので、自信がついてきた。

「あなた、ペーパードライバーなのに路上の感覚あるね。バイクに乗ってたでしょ」

「はい。ホンダの88CBR250と、88NSR250SPに乗っていました」

「ホンダ党なのね。私は、カワサキ党だから、ZIIと、Z750FXに乗っていたよ」

「ま、まじすか?めちゃくちゃ希少車ですやん。渋っ!!!」

「バイクもクルマも、楽しいよねえ」

「ですねえ。楽しいですねえ」

受ける前は、めんどくささしかなかったペーパードライバー講習。意外と楽しい。よし、せっかくだから、今度、完全に忘れているマニュアルの講習も受けることにしよう。

この歳になると「先生」に教えられることなんてないから、こういうのは新鮮だ。そして、人の好きなバイクやクルマの話を聞くのは、めちゃくちゃ楽しい。

意外と悩む、「希望ナンバーの数字どうしよう問題」

そんな日々を送っていると、江戸川中央店の細川さんから電話が。

「希望ナンバー、決まりました?」

「あ、すっかり忘れてました」

そうだ。希望ナンバーにするって言っちゃったから、数字を決めなくては。

私は、趣味はパワースポットめぐりと神社仏閣めぐりだし、かなり縁起をかつぐほうだ。なにせ心配性だし、数字も運が上がりそうな数字を選びたい。まあ、ただの趣味だ。

希望ナンバーでといえば、7ゾロ目や8ゾロ目ほかに、「2525」などが人気らしい。静岡県と山梨県では、富士山の高さの「3776」が人気と聞く。そのクルマにまつわる番号も、意味があって良さそうだ。スバル車なら「555」。トヨタ86ならズバリ「86」、または藤原拓海にちなんで「1395」とか。

いや、悩ましい。ちょっと面倒だ。こんなことなら、希望ナンバーにするのではなく、天に任せればよかった。でも、希望ナンバーって言っちゃったものはしかたない。

信じるとか信じないとかは置いといて、日本史専攻で日本文化マニアの私としては、九星気学で自分に合う数字を選ぶことにした。

九星気学を超ざっくり一言で言うと、生年月日の九星と干支、陰陽五行説を合わせた占術だ(本当はかなり複雑なので、間違いはご容赦ください)。おもに、方位の吉凶を見るのに使われることが多い。

日本では、昔は九星で方位の吉凶を占うことが定着していて、古典で習う「方違え(かたたがえ)」もコレだし、今でも引っ越しのときに「今年は、その方角は方位が悪い」と言ったりするのもコレだ。ちなみに、「八方塞がり」という言葉の語源は、「八方位が塞がっていて身動きがとれない」という九星の用語だ。

陰陽五行説は、古代中国に発生し、その後、日本に伝わり「陰陽道」として独自に発展した。陰陽道は、よく物語に出てくる平安時代の陰陽師「安倍晴明」でも有名だ。

私は旅行に行くとき、この九星気学で月方位が吉の方角の旅行先を選んだりする。占いを完全に信じているわけではないが、これをすると旅行先が選びやすくなるというメリットがあるし、ゲーム感覚で楽しい。ただし、引っ越しに影響するといわれている「年方位」は1年間変わらないから、これを気にしていると、希望の町に引っ越せる確率がかなり低くなる。

九星によると、私の本命性は「八白土星」。陰陽五行説では、「土」と相性(あいしょう)がいいのは、隣の「火」と「金」だ。火は土を生じ、土は金を生じる「相生(そうじょう)という関係になるらしい。つまり、「火」と「金」の気を持つ数字が、「土」の私のラッキーナンバーということになる。しかし、火の数字ばかりをクルマのナンバーに使うと、「火のクルマ」になるから、あまり良くない気がする。ただのダジャレだ。

よし、相性が良くてお金がたまりそうな「金」の数字を中心に使って、合計の数字を縁起いい数字にしよう。ちょいちょいちょいと計算して、よし!希望ナンバーが決まった。
(以上、素人のただの趣味なので、九星気学の専門家からするとツッコミどころ満載だと思います)

ナンバーの地域名、気にする?気にしない?

「ナンバー決めました!〇〇〇〇で!」

「わかりました。抽選にはならないですね。それで申請します。新宿区だから、練馬ナンバーですね」

「はい。練馬ナンバーです。練馬ナンバー…」

そう。新宿区は練馬ナンバーだ。山手線の円の中なのに、練馬ナンバーだ。都庁があるのに、練馬ナンバーだ。

東京23区には、もともとあった品川・練馬・足立と、独立や新設のご当地ナンバーで増えた杉並・世田谷・板橋・葛飾・江東の、合計8つのナンバーがある。

バンドの「相対性理論」の歌「品川ナンバー」にもあるように、東京といえば品川ナンバーのイメージがいまだに強い。現在の品川ナンバーの領域は千代田区、中央区、港区、品川区、目黒区、大田区、渋谷区、さらに大島支庁管内、三宅支庁管内、八丈支庁管内、小笠原支庁管内だ。ちょっと面白いポイントは、伊豆諸島と小笠原諸島の島々はみんな「品川ナンバー」になることだ。

練馬ナンバーの領域は、新宿区、文京区、中野区、豊島区、北区、練馬区。杉並区と板橋は、最近、練馬ナンバーから独立した。

新宿区も、練馬ナンバーからの独立を画策しているという噂があるが、ご当地ナンバーには「対象地域内の登録自動車数が10万台を超えていること」という基準があるため、新宿の独立は難しいといわれているらしい。新宿区の登録台数は10万台にほど遠い。しかも、余っている土地などないので、駐車場が増えることも、登録台数が急増することもないだろう。

「品川」から「世田谷」が独立する際は、住民の間で賛否両論あったそうだ。それが、「練馬」から「杉並」が独立する際は、杉並区民はみんな大喜びだったという噂だ。あくまで噂だが。

昭和の時代じゃあるまいし、この令和の時代にナンバーにこだわったりはしない。しかし、たとえば湘南ナンバーの古いワーゲンビートルにサーフボードを積んでいたり、横浜ナンバーの古いセンチュリーにスカジャンを着て乗ったりとか、なんかかっこいいではないか。ついでに、世田谷ナンバーでクラシックカーに乗っていたら、「世田谷ベース」のようなガレージライフを送ってそうじゃないか。ただの妄想だけど。

そういえば、家から5分歩いて境界の道路を越えれば千代田区。もし千代田区に車庫を借りれば品川ナンバーになるのか。いや。私はそんなことはしない。新宿区の車庫で練馬ナンバーでいい。いや、むしろ練馬ナンバーがいい。もう考えるのはやめよう。

頭金も振り込んだ。車庫証明も送った。ナンバーも決めた(ただし練馬ナンバー)。任意保険も加入した。ドライビングシューズも買った。納車日には吉日を選んだ。ペーパードライバー講習にも通っている。

準備はととのった。車庫を掃除して待ってるぜ!マイ スバル・フォレスター!

台風直撃の納車日。スバリストが運転するタクシーで、人生初のクルマを迎えに行く。

納車日がやってきた。夏には間に合わなかったが、秋には間に合った。もし秋に間に合わなくても冬には間に合っただろう。もし冬がダメでも春には間に合う。季節はめぐるが、人生の時間は戻らない。何かをはじめるには、思い立った時が最良のタイミングだ。自分のクルマで、これからの季節と日々を思いっきり楽しもう。

あいにくの台風直撃。でも、家を出て新小岩駅に着いた時には雨はだいぶ弱くなっていた。駅前でタクシーをつかまえた。よくある普通のタクシーだ。

「どちらまで?」

「トヨタモビリティ東京 江戸川中央店まで」

「トヨタのお店ですね」

「はい。今日、納車なんですよ」

「おめでとうございます。何を買ったんですか?」

「トヨタのお店ですが、中古のスバルのフォレスターXTです。スバルが好きなもんで」

「本当ですか?私もスバルが好きなんです。私、今の会社で7年勤めているのですが、あと3年経って10年になれば、会社をやめて独立したいんです。そしたら、レガシィで個人タクシーをやりたいんですよ!」

「マジですか?レガシィのタクシー?そんなの見たことない。他にいるんですか?」

「それが、いるんですよ。都内に数台ですが」

「なにそれ斬新。めっちゃクール!」

「最高でしょ!今は、自分のクルマはヴィヴィオRX-Rなんですよ。軽なのに4気筒で、加速がヤバいんです」

「かっけえ!!めっちゃいいっすね!」

「あ、着きましたよ。ありがとうございました。いいカーライフを!またいつか。お気をつけて!」

「ありがとう。楽しかったです。いつかレガシィのタクシーに乗せてもらう日を楽しみにしています。お気をつけて!」

お店についたときには、雨は完全に上がり、西日に照らされた雲が黄金色に輝いていた。

人生初の自分のクルマが、すぐそこで私を待っている。

今日はいい日だ。

次回、お楽しみに!

(運転手さんに聞いたレガシィのタクシーって、本当にいるの?と検索してみたら、GAZOOでレガシィのタクシーを取材している記事を見つけました。車種はレガシィ!個性派タクシーのドライバーを直撃

(テキスト、写真:古山玄(そこそこ社)、編集:GAZOO編集部 岡本)

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