【小説】 女子オプ!−自動車保険調査員・ミキ− 第3話#07

第3話「Twitter男を調査せよ!」

2nd ミキ、チョコレート調査開始。
#07

今日は、成田真由子と銀座の三越前で10時に待ち合わせをしている。バレンタインのチョコを選ぶのだ。
いろいろなチョコを試食しながら、どれを買おうか迷うのはとっても楽しい。わたしはもともとスイーツが大好きなのだ。
銀座には世界中の人気ショコラトリーが集まっている。
まずは、銀座5丁目、「ピエールマルコリーニ銀座店」に向かった。チョコの本場、ベルギーが生んだ「奇才」と言われるピエールマルコリーニの店だ。
わたしはまず、「クールセレクション」の7個入りを選んだ。赤いクールフランボワーズに加え、塩キャラメルソースなど、7種類の味を楽しめる。なにより、ハート型のケースがかわいい。
「やっぱり、それが鉄板だよね」
いろいろ迷っていた真由子も結局、「クールセレクション」と、ケースがシンプルな6個入りの「バレンタインセレクション」を買った。
つづいて、同じくベルギーのショコラティエ、高級老舗の「Del Rey 銀座店」に向かう。ベルギー北部の都市アントワープに本店があり、すべて本店で作られたチョコだという。アントワープはダイヤモンド取引の中心地として知られていて、ダイヤモンドの形をしたチョコはDel Reyの人気商品だ。
真由子が、4個入りの「ショコラフィーア」を2セット購入する。チョコ一粒が500円を超えるからけっこうな値段だ。
今度は、少し歩いて、銀座7丁目の「リンツショコラカフェ 銀座店」に入る。こちらも世界中で愛されるスイスのプレミアムチョコレートブランドだ。
カフェは並んでいたけど、予約をしつつ、チョコレートを物色する。ここはチョコだけじゃなくてマカロンも美味しいし、パッケージがとてもかわいい。
思っていたよりも早く、カフェルームの席が空いて、わたしと真由子は何をオーダーするか迷うことになった。
わたしたちは「限定」という言葉に弱い。
銀座店限定の「リンツ・プロフィットロールアイスクリーム キャラメルショコラ」をオーダーした。真由子も銀座店限定の「リンツ・ショコラクレープ 3種のチョコレートアイスクリームとともに」をチョイスする。
やってきたスイーツを見て思わず声を上げた。
スマホで撮影した後、すぐに手をつけた。パリッとしたシューの中には濃厚なバニラのアイスクリームとキャラメルソース、ヘーゼルナッツのクルスティヤンが入っている。温かいチョコレートソースがたっぷりかかかっていて、温かさと冷たさが口の中で一体となってとろけるのだ。これこそ至福の瞬間。
「食べていいよ」と言っていないのに、真由子のスプーンが伸びてきた。
「ちょっと!」
「こっちも食べていいから」
真由子のデザートも、温かい出来立てのクレープと冷たい3種類のアイスのマリアージュが楽しめる。お互い、一気に完食してしまった。

(続く)

登場人物

上山未来・ミキ(27)
上山未来・ミキ(27):主人公。新米保険調査員。父の失踪の理由を探っている。愛車はトヨタスポーツ800。

周藤健一(41)
周藤健一(41):元敏腕刑事。なぜ警察を辞めたのかも、プライベートも謎。社長の意向でミキとコンビを組むことに。

桜川和也(29)
桜川和也(29):ミキの同僚。保険調査の報告書を作成するライター。ミキのよき相談相手。彼女あり?

成田真由子(27)
成田真由子(27):ミキの中学校時代からの親友。モデル体型の美人。大手損保に勤務する。時間にルーズなのが玉に瑕。

河口仁(58)
河口仁(58):河口綜合法律事務所の代表。インスペクションの顧問弁護士で、ミキの父親の友人。なにかと上山家のことを気にかけている。

河口純(30)
河口純(30):河口仁の息子で、ミキの幼馴染。ちょっと鼻につくところはあるが、基本的にいい人。愛車はポルシェ911カレラ。

小説:八木圭一

1979年生まれ。大学卒業後、雑誌の編集者などを経て、現在はコピーライターとミステリー作家を兼業中。宝島社第12回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2014年1月に「一千兆円の身代金」でデビュー。宝島社「5分で読める!ひと駅ストーリー 本の物語」に、恋愛ミステリー「あちらのお客様からの……」を掲載。

イラスト:古屋兎丸

1994年「月刊ガロ」でデビュー。著作は「ライチ☆光クラブ」「幻覚ピカソ」「自殺サークル」など多数。ジャンプSQ.で「帝一の國」、ゴーゴーバンチで「女子高生に殺されたい」を連載中。
Twitterアカウント:古屋兎丸@usamarus2001

編集:ノオト

[ガズー編集部]