【小説】 女子オプ!−自動車保険調査員・ミキ− 第3話#17

第3話「Twitter男を調査せよ!」

3rd ミキと周藤、再び熊谷へ。
#17

わたしと周藤は、中山の自宅の居間に通された。きれいに片付いている。西田が身の回りの世話をしっかりしているのだろう。
​「随分、きれいに片づけができているんですね」
心を鬼にして嫌味な言葉を投げかけた。
わたしは、相手がボロを出さないか、プレッシャーをかける役目も担っている。
「僕1人ではなにもできませんが、彼女が生活の世話をしてくれていまして……」
中山がしっかりと答える。
「突然お邪魔しておきながら、じろじろ見まわして、すみません」
案内されるままリビングのソファに腰をおろす。
西田が台所で作業をしている。お茶でも出してくれるのだろう。
「すぐに失礼しますので、どうかお構いなく」
周藤が声をかけた。
「僕がどんな生活をしているか、調べに来たんですよね? まるで抜き打ち検査みたいだ」
中山がいきなり切り込んできた。
「あの、勘違いされているかもしれませんが、ご安心ください。わたしたちは決して疑っているわけではありませんからね。ただ、現状の確認に来ただけです」
周藤が返すと、中山の表情が少しだけやわらかくなった。
「調査会社だと聞いたら、こっちだって、身構えてしまいますよ……」
そこで、西田がお茶を出してくれた。
「すみません、ありがとうございます」
わたしは早速、お茶に手を伸ばした。
「実は、中山さんのFacebookとTwitterを拝見させていただきました」
今度は周藤が切り込んだ。途端に、中山の顔が曇った。
「あ、いや、あれは……」
わたしは、飲もうとしていたお茶をいったんテーブルに戻す。
「同じものを、保険会社の担当者も見ています。中山さんが休みを満喫されている様子が気になったようで、どのような状況なのか、確認するように依頼をされたのです」
青ざめた中山は口をつぐんでしまった。
「投稿内容を見ると、職場復帰できそうなくらいお元気なように思えますが、実際のところ、いかがなのでしょうか?」
中山が目を瞑った。
わたしたちは中山をじっと見つめる。
「誤解を招いてしまい、申し訳ありません。実は、僕のことを心配している人がいて……。少しでも安心させたくて、情報を発信しているんです」
目を開いた中山がゆっくりと話し始めた。
「お母様のためですか?」
「な、なぜ、それを」
中山がうろたえた。

(続く)

登場人物

上山未来・ミキ(27)
上山未来・ミキ(27):主人公。新米保険調査員。父の失踪の理由を探っている。愛車はトヨタスポーツ800。

周藤健一(41)
周藤健一(41):元敏腕刑事。なぜ警察を辞めたのかも、プライベートも謎。社長の意向でミキとコンビを組むことに。

桜川和也(29)
桜川和也(29):ミキの同僚。保険調査の報告書を作成するライター。ミキのよき相談相手。彼女あり?

成田真由子(27)
成田真由子(27):ミキの中学校時代からの親友。モデル体型の美人。大手損保に勤務する。時間にルーズなのが玉に瑕。

河口仁(58)
河口仁(58):河口綜合法律事務所の代表。インスペクションの顧問弁護士で、ミキの父親の友人。なにかと上山家のことを気にかけている。

河口純(30)
河口純(30):河口仁の息子で、ミキの幼馴染。ちょっと鼻につくところはあるが、基本的にいい人。愛車はポルシェ911カレラ。

小説:八木圭一

1979年生まれ。大学卒業後、雑誌の編集者などを経て、現在はコピーライターとミステリー作家を兼業中。宝島社第12回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2014年1月に「一千兆円の身代金」でデビュー。宝島社「5分で読める!ひと駅ストーリー 本の物語」に、恋愛ミステリー「あちらのお客様からの……」を掲載。

イラスト:古屋兎丸

1994年「月刊ガロ」でデビュー。著作は「ライチ☆光クラブ」「幻覚ピカソ」「自殺サークル」など多数。ジャンプSQ.で「帝一の國」、ゴーゴーバンチで「女子高生に殺されたい」を連載中。
Twitterアカウント:古屋兎丸@usamarus2001

イラスト車両資料提供:mizusawaさん

編集:ノオト

[ガズー編集部]

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