【SEMA特集】「勝つことがモチベーション」オーナーとともに進化を続けるマツダ・RX-7(FD3S型)

歴代のマツダ・RX-7は、日本だけでなく海外でも極めて人気の高いスポーツカーだ。流麗なデザインとロータリーエンジン搭載という類まれな個性は、国境を超えてクルマ好きの感性を刺激してやまない。
なかでも、三代目として知られるFD3S型は、ストックでも255ps(252hp)という最高出力を誇る13B-REW型ロータリーツインターボエンジンを搭載し、世界中のロータリーファンを虜にしていった。

現在、アメリカで開催されているストリートカーのレースシリーズ、USCA(Ultimate Street Car Association)に参戦しているリック・ホバックさんも、RX-7の虜となったひとりだ。
ホバックさんは物心ついたときからのクルマ好きで、15歳になったときには運転免許を取得するよりも先にクルマを購入してしまったという(アメリカではほとんどの州で16歳から免許を取得できる)。 そのとき初めて自分で購入したクルマは77年式のシボレー・カマロ。それを自らの手でバラしたり改造したりすることによって、クルマの構造やモディファイの方法を学んでいった。

学生の頃には、自ら率先してプロのレーシングチームにボランティアとして参加し、モータースポーツのノウハウも習得。初めてレーシングカーとして自分で製作したクルマはホンダのCR-Xで、アルバイトをしてお金を貯めてはモディファイを繰り返し、それをサーキットで走らせるという趣味に没頭していったそうだ。

そして現在、ホバックさんは念願かなって93年式のRX-7を手に入れ、充実したカーライフを送っている。「RX-7がニューモデルとしてデビューした当時から、ビューティフルなデザインに惹かれていたんだ。いつかは手に入れたいと思っていたんだけど、98年に程度のいい中古車を手に入れるチャンスに恵まれてね。ハンドリングがよくて、チューンアップしなくてもエンジンパワーがもともと大きいから、やっぱりこれだ!って思ったよ(笑)。RX-7は90年代を代表する名車だと思う」と語る。

もちろん、サーキット走行を愛するホバックさんが、ただ所有するだけで満足するわけもなく、現在はタイムアタックやランドスピード(広大な平原で直進時の最高速を競う競技)にいそしんでいる。RX-7をチューンアップしてはレースに参加し、足りない部分を見つけてはまたいじるという繰り返し。ホバックさんを支える最大のモチベーションは「勝つこと」だ。

ホバックさんが現在参加しているUSCAシリーズは、とてもユニークなポイント制度を導入している。サーキットで行われるタイムアタックとオートクロス(ジムカーナ)の成績に加え、そのクルマがストリートカーとしてどれだけ優れたエンジニアリング(モディファイ)が施されているか、見た目はかっこよく仕上げられているかを、審査員が点数化して評価。その総合ポイントで勝者が決まるのである。

「アメリカ各地のサーキットを転戦するんだけど、つねに100台以上のクルマが参加していて、とてもコンペティティブなんだ。正直、勝つことはかなり難しいけど、僕は自分のクルマでみんなをやっつけてやりたいんだよ(笑)。そのためには常にクルマを進化させる必要があるし、自分自身をプッシュしてチャレンジし続けなきゃならない。それがいま僕の人生の大きなモチベーションになっているんだ」

13B型ロータリーエンジンには、吸気ポートの拡大加工などが施され、最高出力は450hpを発揮。ギャレット製のビッグシングルターボやブローオフバルブ、Vマウントという特殊なレイアウトで装着したインタークーラーなども備えている。

前後にウィルウッドのビッグブレーキを装着していることも自慢のひとつ。ホイールとのクリアランスを確保するため、カスタムメイドのリムを使ってホイールをワイド化した。

ブレーキとクラッチのペダルもウィルウッド製に交換。オートクロスのコース特性に合わせ、インパネに備わる青いノズルで前後ブレーキのバランスを調整することができるという。

室内にはカスタムメイドのロールケージが組まれ、万が一クラッシュして車両が炎上したときに使用する消火器もラゲッジルームに搭載している。

運転席の上にはパラシュートを展開するレバーを装備。これはもちろんタイムアタックで使用するわけではなく、ランドスピードで最高速の記録を計測した後、減速するために装備しているものだ。

サスペンションはアメリカのJRi shocks製コイルオーバー(特注品)。USCAではタイムアタックとオートクロスという性格の異なる競技を同時に行うため、サスペンションセッティングが難しいという。

職業は不動産業だというホバックさんは、決してプロのカスタムビルダーというわけではなく、クルマを作ったりレースに参加したりすることは、あくまで趣味だ。だが、その熱の入れようは、われわれが想像する「趣味」の範疇を遥かに超越しており、もはや生きがいといっても過言ではないだろう。ホバックさんにとっての「普段のカーライフ」とは、RX-7を勝てるクルマに仕立て上げ、実際に勝つことなのだ。

「もちろんもっと予算にゆとりがあれば、やりたいことは山ほどあるよ」と笑顔で語るホバックさん。本気で楽しめる趣味があるからこそ、仕事や生活にも張り合いが生まれる。ホバックさんの話をうかがって、個人でビルダー兼レーサーを楽しむことのできる環境に恵まれた、アメリカの豊かなクルマ文化を垣間見ることができた。

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road