【SEMA特集】三菱・スタリオン、自動車メーカーの現役カーデザイナーが16歳の時から愛し続けたクルマ
三菱といえば、ランサーエボリューションに代表されるハイパフォーマンスモデル、あるいはパジェロに代表されるRVなどが有名だ。その一方、スタリオンという3ドアのスポーツカーを生産していたことは、一般的にはあまり知られていない。その理由としては、生産期間が1982〜1990年と短かったこと、そもそも趣味性の高いスポーツカーであること、そして日本よりもアメリカのマーケットを重視していたことなどが考えられる。
実際にアメリカ人の好みを意識してデザインされたスタリオンは、当時三菱が提携していたクライスラーからもOEMモデルとして販売された。アメリカではクライスラー、ダッジ、プリムスの各ブランドからコンクエストという車名で展開。日本仕様のスタリオンが当初2.0Lの自然吸気とターボの設定だったのに対して、北米仕様は2.6Lの直4ターボが搭載されていた(後に日本仕様にも採用)。そのことからも、アメリカのニーズに合わせていたことがうかがい知れる。
また、モータースポーツでの活躍はめざましく、特にアメリカではSCCA(スポーツ・カー・クラブ・オブ・アメリカ)の耐久レースやチャンピオンシップで数々の勝利をあげた。そのため彼の地では高い人気を獲得し、いまだに多くのファンに愛されている。
そのひとりともいえる、アメリカ・カリフォルニア州在住のジョン・ラゾラック三世さん。16歳のときに人生で初めて購入したクルマがスタリオンだったという彼は、家族ができた現在も変わらずその愛車を所有し続けている。
「物心ついた時から、ずっとクルマが好きでした。4歳のときに初めて芝刈り機に乗りましたし、フォー・ウィーラー(小型バギー)は5歳のときに乗りました(笑)。そのときから既に車輪とエンジンがついた物に夢中だったんです。16歳のときにスタリオンを買ったんですが、クルマを見に中古車屋さんに行ったところに、ちょうど女の子がスタリオンを売りに来たんです。もし自分に売ってくれるなら、その場で買うと直接交渉して売ってもらいました」
そう語るラゾラックさんは、じつはアメリカ最大の自動車メーカーであるGMに勤務する、現役のカーデザイナーだ。当初はデトロイトの本社勤めだったが、現在はロサンゼルス近郊のデザインセンターへと異動。たまに通勤にもスタリオンを使用しているという。
「大学ではメカニカル・エンジニアリングを専攻したのですが、途中でドロップアウトしてしまいました(笑)。私はデザインを描くことのほうが好きでしたし、もっと手を動かす仕事をしたかったんです。カーデザインの学位は2007年に取得しました。現在はおもにコンセプトカーのクレイモデルの制作や、3D化するためのデジタルワークを担当しています」
ラゾラックさんは、スタリオンとは別にS13型の日産240SX(シルビア)も所有しているというが、日本車のどんなところが気に入っているのだろうか。
「私は日本車に限らず、すべてのクルマが好きですが、日本車の優れている点はデザインだと思います。そして軽量であること、よく作られていることですね。もちろんスタリオンもそれらの要件に合致していると思います」
ラゾラックさんは、スタリオンをただ所有するだけでは飽き足らず、自らの手でモディファイを行い、レースも楽しんでいる。スタリオンのエンジンは2010年式コルベットのLS3型V8エンジンに載せ換えられているのだが、その載せ換え作業を含め、ほぼすべてのモディファイをラゾラックさん自身が自宅ガレージで行っているそうだ。
前後のワイドフェンダーやエアロパーツも、カーデザイナーであるラゾラックさん自らが制作した逸品だ。デジタルスキャナで車体の全体像をスキャンし、まずはパソコン上でパーツをデザイン。CFD解析という空力のシミュレーションも行ってから形状を決定した。そして自分で作ったクレイモデルで型を取り、ファイバーグラスを重ねていく工程を経て完成。世界にたったひとつのエアロパーツを作ってしまったのである。
そのワイドフェンダーに収まるホイールはCCW製の18インチで、タイヤはFALKENのハイグリップタイヤAZENIS RT-615を装着。サスペンションのアーム類やステアリングナックルもカスタムメイドされている。
室内のダッシュボードやロールケージもワンオフで制作。ステアリングやシートもレース用に交換されている。エンジンとトランスミッションの載せ換えにともなって、シフトレバーの位置が後方にずれてしまうのだが、それを正しい位置に補正するキットもラゾラックさんが制作した。
現在、アメリカ各地のサーキットを転戦するUSCAシリーズに参加しているラゾラックさん。USCAはタイムアタックやオートクロス(ジムカーナ)などのトラック競技における成績に加え、クルマのエンジニアリング(モディファイ)やデザインの出来栄えを審査員が評価したポイントも加味されるという、ユニークなレースだ。
ラゾラックさんは、そのUSCAの17年シーズンにおいて、優勝を二度、2位と3位を一度ずつ勝ち取り、見事に年間のクラスチャンピオンを獲得! 最高の一年を迎えることができたと話す。
「僕のカーライフを100%サポートしてくれる妻と、2歳の息子に感謝したいです。毎戦必ずレースに同行して、一緒に戦ってくれる最高の家族です。来年にはもうひとり子供が増える予定なんですが、これからも家族ともに、人生を楽しんでいきたいですね」
[ガズー編集部]
【SEMA特集】愛車紹介記事一覧
【SEMA特集】関連記事一覧
最新ニュース
-
-
中村史郎デザイン、超小型EV「AIM EVM」は190万円から…まずは沖縄で販売へ
2025.02.18
-
-
BYD、新型EV『シーライオン7』の専用サイト開設…先行展示会も開催へ
2025.02.18
-
-
水素燃料電池で走る電動カート、ネクスティ エレクトロニクスが出展へ…水素・燃料電池展 2025
2025.02.18
-
-
アキュラの新型入門SUV『ADX』、今春米国発売へ…価格は3万5000ドルから
2025.02.18
-
-
ターボ vs スーパーチャージャー! 最強はどっち? 徹底比較で最適な選択肢を見極める
2025.02.18
-
-
F1マシンが日本の公道を走る!『レッドブル・ショーラン』、4月2日に東京で開催
2025.02.18
-
-
後席シートベルト着用率、一般道で過去最高の45.5%に上昇も依然として低く…警察庁とJAFが調査
2025.02.18
最新ニュース
-
-
中村史郎デザイン、超小型EV「AIM EVM」は190万円から…まずは沖縄で販売へ
2025.02.18
-
-
BYD、新型EV『シーライオン7』の専用サイト開設…先行展示会も開催へ
2025.02.18
-
-
水素燃料電池で走る電動カート、ネクスティ エレクトロニクスが出展へ…水素・燃料電池展 2025
2025.02.18
-
-
アキュラの新型入門SUV『ADX』、今春米国発売へ…価格は3万5000ドルから
2025.02.18
-
-
ターボ vs スーパーチャージャー! 最強はどっち? 徹底比較で最適な選択肢を見極める
2025.02.18
-
-
F1マシンが日本の公道を走る!『レッドブル・ショーラン』、4月2日に東京で開催
2025.02.18