【SEMA特集】好きが高じてエンジンスワップまで!!若きオーナーのスバル・インプレッサWRX(GH型)
スバル車の熱狂的愛好家が、日本では「スバリスト」、アメリカでは“Subie(スビー)”と呼ばれるのは有名な話だ。アメリカでスビーが最も多く生息するエリアは、ニューヨーク州やペンシルベニア州、ニュージャージー州といった東海岸。その理由はさまざま考えられるのだが、そもそも東海岸には四輪駆動のニーズが高い降雪地域が多い、ということは間違いなく影響しているだろう。
2007年のニューヨークショーでデビューを飾った三代目インプレッサは、初めてハッチバックとして登場したことで当時大きな話題となった(後にセダンも追加)。
日本仕様は1.5Lと2.0LのNA、2.0Lのターボが設定され、従来「WRX」というグレード名を使用していたターボモデルは「S-GT」という名称に変更された。その一方で、アメリカには2.5Lターボが設定され、グレード名も従来通り「WRX」を使用。実際のところ、インプレッサという正式名称を省いて、単に“SUBARU WRX”と呼ばれることも多い。
ペンシルベニア在住のオースティン・バーネットは、そんな三代目インプレッサWRXのオーナー。まだ26歳と若いが、地元で“Billetworkz(ビレットワークス)”というショップを経営している。彼がクルマに興味を持ったのは、両親からの強い影響を受けたから。父、母ともに熱狂的なホットロッド・ファンで、父は70年式マスタングBoss 302、母は63年式コルベット・スティングレーなど、複数のアメリカ車を所有してきた。そんな環境で育ったオースティンがクルマ好きにならないわけもなく、16歳になって初めて購入したクルマは94年式のマスタングSVTコブラだった。
しばらくはマスタングをそこそこモディファイして楽しんでいたオースティンだが、大学に入学してからは、よりデイリーユースに向いた新しいクルマが欲しくなった。白羽の矢を立てたのが、4WDで雪道にも強く、最初からターボ搭載で速く、荷物もたくさん載せられるインプレッサWRXだった。2012年に新車で購入。じつに堅実な選択である。
だが、その堅実さをいつまでも保っていられないのが、クルマ好きの性。オースティンはそれまでホットロッドにしか興味がなかったため詳しくなかったのだが、ネットで調べてみるとスバル車向けのアフターパーツは豊富に存在し、モディファイの世界が広く開かれていることに気がついたのである。
当初はEJ25型水平対向4気筒ターボエンジンをチューンアップし、パワーを上げていこうと考えていたオースティン。だが、それも数々の実例を知るにつれて、いずれ頭打ちなることが目に見えていた。「どうせやるなら、もっと違うことをしたい」。そう考えたオースティンが選んだ道は、なんとアメリカには正規輸入されていなかった日産のR33型スカイラインGT-Rの心臓部、RB26型直列6気筒ターボエンジンを移植するというプランだったのである。
学生時代からメカニカル・エンジニアになるべく勉強を重ねてきたオースティン。自分のショップを起業してからは、CNC工作機械を使った小型のカスタムパーツの製作を本業としている。普段使いをしていた自らの愛車であるインプレッサWRXを、自社のプロモーションを兼ねたプロジェクトカーとして製作していくにあたっては、同じ地元の仲間たちが協力してくれた。
RB26のエンジンスワップと、それにともなうさまざまなボディワーク、ターボまわりの吸排気系レイアウトやカスタムドライサンプの構築、カーボン製の内外装パーツの製作、エアサスペンションの装着など、それぞれの得意分野を持ったスペシャリストが集結。世界に一台しかない、特別なインプレッサWRXを完成させた。
流行のオーバーフェンダースタイルを、エアリフトパフォーマンス製のエアサスによって着地寸前まで下げる。リヤハッチにおさめられたエアサスシステムは、ひと昔前の“ピカピカのエアタンク&魅せるパイプ組み”ではなく、デジタル化によってシンプルにまとめられたイマドキのインストールスタイル。
エクステリア同様に、インテリアも随所にカーボン素材をちりばめながら、白色のロールケージをアクセントとする。シートやシフトブーツ、サイドブレーキブーツのステッチは、グリーンで統一した。
「正直、スバルを含めて日本車については、まだまだ詳しくないところが多いから、これからもっともっと知識やノウハウをアップデートしていきたいんだ。僕自身はあらゆるタイプのクルマが好きだし、ボクサーエンジンも直6もアメリカンV8も、みんな大好き。RB26はV8に負けないハイパワーを生み出せるところがクールだと思う。WRXがこんなビッグプロジェクトになるとは自分でも想像していなかったけど、いろいろなショーに出展するとすごく反響が得られるから、やってよかったと思うよ(笑)」と語るオースティン。純粋培養された若きカーガイの歩みは、これからも続いていくことだろう。
[ガズー編集部]
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