【ミュージアム探訪】ヒューモビリティワールド(前編)
突然だが「自動車あるある」をひとつ。日本にはその名前を市町村にそのまま使っている自動車メーカーがある。さてそれはどこで、いくつあるか?
正解は3つ。1つ目はトヨタで愛知県豊田市トヨタ町。2つ目が富士重工業で群馬県太田市スバル町。そして3つ目が、今回紹介するダイハツ工業で、大阪府池田市ダイハツ町である。ダイハツ町は、同社の本社ビルが1965年に完工した翌年の12月に神田町から改名。これに伴い、ダイハツ工業の本社住所はダイハツ町1-1となった。
その本社敷地内にある企業ミュージアムが、「ヒューモビリティワールド」である。館名の「ヒューモビリティ」とはHuman(人)+mobility(モビリティー)の造語で、同社のクルマづくりの歴史と、現在のクルマ社会が抱えるさまざまな問題、そして未来におけるモビリティー社会の実現に向けた提案などを、体験を通して知ることができる。
同社の創立100周年を記念し、2007年5月7日に開館。2015年1月には展示内容が一新され、「くらしを考える、軽を考える」というテーマのもとにリニューアルオープンした。地上4階建て、延べ床面積は約2900平方メートルというスケールを誇る展示施設で、建物を正面から見ると、ダイハツの“D”を裏返しにしたような、独特のカーブを描いたしゃれた造形が目に飛び込んでくる。
展示物の見学は2階から始まる形となっており、階段またはエレベーターを使って上がると、そこにエントランスホールがある。なお、車イスでも見学ができるようにエレベーターやスロープ、障害者用トイレなどの設備も整っている。
来館者を最初に迎えてくれるのは、フロアの中央に設けられた企画展示のコーナー。次いで、四輪車製造に乗り出す前のダイハツを紹介するコーナーである。
そこで目に飛び込んでくるのが、1933年に作られたLH-25型と呼ばれるディーゼル機関。ダイハツの社名のルーツは“大阪の発動機”を略して大発と呼称したことに始まるが、当時すでに存在していたガスや石油を燃料とする発動機に対し、ダイハツはより高性能なディーゼル発動機を開発。こちらに展示しているのは、滋賀県にかんがい用として納入したものだ。驚くべきは年間約1000時間近く稼働しながら、20年にわたって現役でいたという長寿命ぶり。重量も2650kgとかなり重く(軽自動車2~3台分だ!)ボア210mm×ストローク300mmの単気筒で25馬力の最高出力を発生させた。まさに同社の事業ヘリテージの象徴ともいえる展示物である。
その隣では、1931年に発売されたHD型と呼ばれる三輪自動車が、当時の生活の様子とともに紹介されている。年間130万台を製造する自動車メーカー、ダイハツの、原点ともいえる一台だ。
LH-25型とHD型のインパクトに押されてしまい気味だが、まだワンフロア分を紹介したのみ。後半では現代から未来に続く展示を見ていくことにする。
(文=高山正寛/写真=ダイハツ工業)
【編集協力・素材提供】
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[ガズ―編集部]
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