【連載全16話】第6話 ホンダ1300・・・日本生まれのFF車特集
現在、エンジンを搭載するクルマではFF(フロントエンジン・フロントドライブ)という駆動方式が主流です。では、これまでどんなモデルがあったでしょうか? 自動車史に名を残すFFの日本車を週替わりで紹介します。
ホンダ1300
前回紹介した軽乗用車であるN360の成功によって、四輪車市場に橋頭堡(ほ)を築いたホンダ。1969年5月、スポーツカーのSシリーズは別として、初めて小型車市場に投入した乗用車がホンダ1300である。見た目は平凡な4ドアセダンだが、最大の話題はF1にまで空冷エンジンを持ち込もうとした熱烈な空冷信奉者だった創業社長の本田宗一郎が陣頭指揮を執って開発した、DDAC(二重空冷)と呼ばれる特殊な空冷エンジンだった。
構造をごく簡単に説明すると、総アルミ製の空冷エンジンを覆う壁の間に冷却水のように強制的に空気を通して冷却する。走行中には導入された走行風によってもエンジンは冷却される。前者の強制空冷と後者の自然空冷を合わせて二重空冷というわけである。また空冷エンジンではオイルによる冷却も重要だが、潤滑方式はレーシングマシン譲りのドライサンプを採用していた。
横置きされて前輪を駆動する、その二重空冷の1.3リッター直4 SOHCエンジンは、当時のホンダ車の例に漏れず高回転・高出力型で、シングルキャブ仕様でも最高出力100PS、高性能版の4キャブ仕様は115PS(いずれもグロス値)という、他社の1.8リッター~2リッター級に匹敵するハイパワーを発生。ハイパフォーマンスと空冷らしからぬ静粛性を誇ったが、構造の複雑化による重量とコストの増加を招き、経済性も芳しくなかった。シンプルで軽量、低コストが特徴の一般的な空冷とは正反対のエンジンになってしまい、またハイパワーにシャシーが追いつかず、特に初期モデルではハンドリングのクセが強いと評された。
そうした声に応えてエンジンをデチューンし、操縦性も改善。また1970年には2ドアクーペを追加するなどしたが、広く一般ユーザーの支持を受けるには至らなかった。この苦い経験からホンダは水冷に転換し、1972年に初代シビックを発売することになるのである。
[GAZOO編集部]
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