【連載全16話】第2話 日野コンマース・・・日本生まれのFF車特集
現在、エンジンを搭載するクルマではFF(フロントエンジン・フロントドライブ)という駆動方式が主流です。では、これまでどんなモデルがあったでしょうか? 自動車史に名を残すFFの日本車を週替わりで紹介します。
日野コンマース
1959年に発表され翌1960年に発売された日野コンマース。英語のCommercial(商業の、コマーシャル)を語源とするCommerce=コンマースという車名のとおり商用車だが、画期的な存在だったことから紹介したい。なにしろ日本初のFF商用車であることに加え、今日まで国産では唯一となるフルキャブオーバー型のFFトランスポーターなのだから。
現在は大型車専門メーカーである日野だが、1950年代から60年代にかけてはルノー4CVのライセンス生産から始まった小型乗用車/商用車メーカーとしての顔も持っていた。提携先だったルノーは、最近コンセプトカーとして車名が復活したエスタフェットというFFトランスポーターを1959年にリリースしている。だが日野によればルノーから技術供与を受けたのは4CVのみで、コンマースはあくまで独自開発されたという。
低床化とスペース効率を求めて、4CVの国産化で経験のあるRRではなく、日本はもちろん世界的にもまだ少数派だったFFに挑戦したコンマース。商用車ながら四輪独立懸架を持つ、全長4m弱のモノコックボディーに縦置きされるエンジンは、4CV用よりひとまわり大きい836ccの直4 OHV。最高出力28PS、最大トルク5.3kgf・mを発生し、4段MTを介して前輪を駆動した。バリエーションはバン、パネルバンのほかにミニバスと称する10人乗りと11人乗りの乗用モデル。法規上は10人乗りは5ナンバーのワゴンで、11人乗りは2ナンバーのマイクロバスとなる。
新機軸に満ちた画期的なモデルだったコンマースだが、発展途上の技術だったFFの諸問題などもあって販売は低迷。1961年にはエンジンをこの年にデビューした日野初のオリジナル乗用車であるコンテッサ用の893ccに増強するなどしたが、翌1962年には生産を終了。総生産台数はわずか2344台と伝えられる。
[GAZOO編集部]
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