[密着!S耐TV Vol.4]S耐TVは「生きる糧」「夢」「青春」。2022年のS耐はさらに『楽しい気持ち』を求めて

スーパー耐久シリーズ2021 最終戦(岡山)。我々はYouTubeを使って毎回レースの模様を余すところなく放送している『S耐TV』制作の舞台裏に密着。

全4回でお届けしている密着企画の第1回と第2回では、個性豊かな出演者の方々や制作に携わるスタッフへの取材を通じて、放送開始から貫き通している「無料放送」と「参戦するすべてのチームにスポットを当てたい」という2つのこだわりや、YouTubeのコメントを通じて生まれる『一緒にコタツに入りながら観戦している』ような、S耐ならではのファンとのコミュニケーションのあり方をお届けした。
そして、第3回では実際の番組制作に密着し、出演者と制作スタッフの情熱、抜群のチームワークの模様などを取材させていただいた。

最終回となる第4回は、スーパー耐久シリーズと、S耐TVの未来がどのようになっていくのかを関係者の言葉とともにお届けしたい。

2022年シーズンのスーパー耐久シリーズは全7戦に

『スーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook』の最終戦の舞台となった岡山国際サーキット。予選が行われた11月13日(土)に2022年シーズンの開催スケジュールが発表された。

公式テスト:2/23(水・祝) 富士スピードウェイ
Rd.1:3/19(土)、20(日) 鈴鹿サーキット(5h×1レース)
公式テスト:5/10 富士スピードウェイ
Rd.2:6/3(金)〜5(日) 富士スピードウェイ(24h×1レース)
Rd.3:7/9(土)、10(日) スポーツランドSUGO(3h×2レース)
Rd.4:7/30(土)、31(日) オートポリス(5h×1レース)
Rd.5:9/3(土)、4(日) モビリティリゾートもてぎ(5h×1レース)
Rd.6:10/15(土)、16(日) 岡山国際サーキット(3h×2レース)
Rd.7:11/26(土)、27(日) 鈴鹿サーキット(5h×1レース)

このスケジュールは、2021年シーズンとは大きく変わった部分がある。それは開催が全6回から7回に増え、開幕戦に加え最終戦も鈴鹿サーキットで行われる

2021年11月14日(日)に配信されたS耐TVのエンディングで、スーパー耐久機(STO)事務局長の桑山晴美さんはこのように語っている。

「ここ数年、スーパー耐久シリーズは、大変有難いことに多くの参加台数を頂戴しております。しかしピットのご不便をみなさまに強いてしまうという心配も常々ありました。限られたピット数の中で、どうすればより多くのみなさまを受け入れさせていただけるかを数年間考えてきました。今シーズンは、7大会に増やしますが『1~5クラスを年間6戦にする、つまりどこかのクラスがどこかの大会をお休みしていただく』という形をとることで、ピットや給油タワーの配置を調整させていただく。これがやっと行き着いたファーストプランになります」

  • 提供:スーパー耐久機構(STO)

現在、スーパー耐久シリーズは9つのクラスがあり、それぞれの大会で混走する形を取っている(3h×2レースはグループ1とグループ2に分かれて開催)。毎レース50台以上のエントリーがあるため、サーキットによってはピットが飽和状態になるという問題があったのだ。

スーパー耐久シリーズはアマチュアドライバーにとって憧れの舞台であり、ここを目指して(それこそ人生を賭けて)ドライビングの腕を磨きながら日々の仕事に性を出している人もたくさんいる。
新たなチームが参加してくることで現在参加しているチームの戦いに支障が出るのは本末転倒だし、かといってスーパー耐久シリーズ側が新たに門を叩く人を受け入れないというのは、チャレンジャーたちに申し訳が立たない。
その対策として、1大会あたりの参加台数を少なくする代わりに大会数を増やすという試みだ。

「S耐は生き物」
これは2021年9月に掲載した桑山事務局長へのインタビューの中で、ご本人が語った言葉だ。

スーパー耐久シリーズとはこういうものだという既成概念を自らつくることなく、時代の流れに合わせて柔軟に対応していく。というか、時代を受け入れるためにスーパー耐久シリーズ側が変化して、より多くの人達とモータースポーツを、そして人生を楽しんでいく。桑山さんの言葉からそんな意気込みを感じた。

スーパー耐久シリーズが変わるということは、当然S耐TVも変わっていくだろう。もちろんレースの中継回数が増えるのは間違いないが、開催方式が変わることで番組の構成も変化するはずだし、参加チームが増えることで視聴者に伝えるべき情報の量も大きく変わるに違いない。

そこで力を発揮するのが、S耐TVの出演者で、MCを務める数野祐子さんの情報収集力と、ピットレポーターであるMC平田さんの取材力だ。

数野さんはS耐TVに関わるようになってから、スーパー耐久シリーズのレース結果はもちろん、参加ドライバーが参戦している他カテゴリーのレース結果、リリースやWEBサイト、SNSなどで拾ったチームやドライバーの情報を細かくノートにまとめている。
これは数野さんだけでなく、往年の名ドライバーでS耐TVの顔ともいえる、解説の福山英朗さんがレースレポートをする際にも役立っている。

そしてMC平田さんは毎レース誰よりも早くサーキット入りし、ピット裏を歩いて参加チームを取材。どんな細かい情報でも大切にして、決勝では的確なピットレポートを行っている。
もちろん平田さんが集めた情報は福山さんや数野さん、そしてS耐TVの全スタッフに共有され、番組編成に生かされている。

桑山さんは福山さん、数野さん、平田さんを「S耐TVに欠かすことのできない存在」と表する。そして2021年第3戦となった富士24時間からは、MCとして中嶋絵美さん、英語レポーターとしてRIKIさんという新たなメンバーが加わり、5人体制になった。おそらく現段階ではまだ2022年の配信体制は確定していないだろうが、この5人はS耐TVの顔として活躍するはずだ。

時代は変わっても「楽しい気持ち」をいつまでも クルマといっしょに

2021年はスーパー耐久シリーズにとって意味のある1年でもあったはずだ。
それは5月の第3戦富士SUPER TEC 24時間レースで水素を燃料とするエンジンを搭載したORC ROOKIE Corolla H2 conceptがデビューを果たしたこと。カーボンニュートラルな社会を目指す中で、モータースポーツの新たな可能性をスーパー耐久から発信するのは大きなチャレンジだったに違いない。
最終戦の岡山ではバイオ燃料を使うMAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIOも参戦。

長くS耐TVに深く関わってきている福山英朗さんでも、これまでに見たことのない光景に、レース実況をしながら熱いものがこみ上げてきたという。
「決勝では最後、次世代燃料を使うクルマがランデブーでゴールしました。このレースを観た我々は、歴史の生き証人になるかもしれないですね」

『時代は変わっても「楽しい気持ち」をいつまでも クルマといっしょに』

これはスーパー耐久シリーズが掲げた2022年のテーマだ。世の中が脱炭素社会の実現に向けて変革する中で、自動車業界はどうあるべきか。そして未来のモータースポーツはどのような姿であるべきか。

スーパー耐久シリーズはこれからの地球や子どもたちのためにモータースポーツができることを着実に進めるとともに、急速に変わりゆく時代の中でも「楽しい気持ち」を持ち続けることをモータースポーツのフィールドから伝えていきたい。そんな思いをこのテーマに込めたという。

これまで、スーパー耐久シリーズは時代の先を見つめながら常に新しいことにチャレンジしてきた。S耐TVもさまざまなことを模索しながら、今後どのように番組を育てていけばいいかという道筋が少しずつ見えてきたと桑山さんは話す。

これからも新たなことにチャレンジしながらも、“勝ち負けにこだわるだけではない、楽しいレース”というスーパー耐久シリーズのスピリットを番組で表現していくはずだ。

S耐TVは「生きる糧」「夢」「青春」

最後に福山さん、数野さん、平田さんからのメッセージと、S耐TVに対する想いをお届けしよう。

■福山英朗さん
S耐TVを続けてきて、最大同時視聴者数が増加しているのは番組に関わる者として嬉しいことです。でもやっぱりサーキットでの生の雰囲気も多くの人に味わってもらいたい。それによって選手のやる気などはもっと高まっていくでしょうから。

GAZOO読者の方々はコアなクルマ好きが多いはず。ぜひレースにはどんな人がどんな風に関わっているかを知ってほしいですね。

S耐TVは僕にとってとてもやりがいのある仕事です。これまで長くレースの世界に身を置いて、能力以上の成績を出させてもらいました。だからこそ僕はモータースポーツに恩返しをしたいと思っています。S耐TVは僕にとって大切な宝物であり、生きる糧です。この番組を盛り上げることが僕の使命だと思って頑張っていますので、みなさんもぜひ観てください!

■数野祐子さん
2021シーズンの最終戦を終えて、達成感と充実感を覚えました。2021年は第2戦まで3人で番組をやっていましたが、第3戦の富士から中嶋さんとRIKIさんが加わって5人体制に。番組はみんなで和気あいあいとやっているので、あっという間でしたね。

S耐TVを観てくださっている方はいつも温かい雰囲気を作って応援してくれるので、本当に感謝の気持しかありません。ぜひ来シーズンも一緒に楽しみましょう。

GAZOOの読者の方はクルマに詳しい人が多いと思いますが、スーパー耐久シリーズを観たことがないという人もいるはず。この記事が目に止まり「なんか面白そうなことをやっているな」と思っていただけたら、ぜひS耐TVを見てみてください。

私にとってS耐TVは“夢”だと思います。スーパー耐久シリーズは多くのドライバーにとって夢の舞台だし、観ている人たちはそんなドライバーやチームに夢を見させてもらっています。そして新たにST-Qクラスができたことでクルマの未来を夢見ることができます。

私自身、大人になってからこんなにワクワクすることがあるんだって驚いています。ぜひ一緒にワクワクしましょう!

■MC平田さん
スーパー耐久シリーズは日本の参加型レースではトップカテゴリーで、ビッグレースだと3番目に大きなカテゴリーです。でもまだまだ知らない人もいるはず。この記事を読んでレースに興味を持った人は、ぜひ周りの人に面白そうだと伝えてほしいですね。僕たちも多くの人にそれを伝えられるよう一生懸命頑張ります。

そして多くの人にS耐TVを観てもらえたら嬉しいです。番組は10時間以上配信していますが、全部を観なくても十分楽しめます。家事などをしながら観てもいいし、仲間と集まった時につけてもらうのも大歓迎。BGM的にも楽しめるので、いろいろな形でスーパー耐久シリーズに触れていただけたらと思います。

僕自身はS耐TVに関わるようになってから、これまでの人生で一番青春していると思います(笑)。そんな姿も楽しんでもらえたら嬉しいですね。

  • 提供:スーパー耐久機構(STO)

全4回にわたってお届けしてきたS耐TVの表のユルさと裏の努力、そして制作に携わる方々の熱き想い、いかがだっただろうか。
S耐TVを見たことがある方も、まだ見たことがない方も、この記事を読んでから番組をご覧いただいて、S耐TVをより身近に感じていただけていたら、とてもうれしい。

テレビでのスポーツ観戦は、テレビにかじりついて、手に汗握り、誰に届くわけでもないがテレビに向かって叱咤激励している方も多いかもしれない。

もちろんS耐TVでもそのような観戦が可能だ。
ただ、そればかりではなく、空いた時間時間でチェックしたり、家事をしながら、何だったら運転しながらラジオのように聞くなど、自由な観戦スタイルを、S耐TV自らが勧めているのだ。
また、YouTubeのコメントを生かして、独自のレースの視点を出演者やファンに届けることもできる。

来シーズンのモータースポーツが始まるまでもうしばらくかかるので、お時間のある際に、もちろん『無料』のYouTubeのバックナンバーで、S耐のレースの面白さとS耐TVの世界観をご覧いただきたい。

(文:高橋 満<BRIDGE MAN> 撮影:堤晋一)

[GAZOO編集部]

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