スーパー耐久解説Vol.1 どんな車両が参加できるの? 成り立ちから、参加できる車両、クラス分け、性能調整を解説

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スーパー耐久初心者から、レースは見てるけど詳しいルールはあまり知らないという方まで、いざという時に役立つルール解説。
全7回でお届する第1回は、スーパー耐久の前身から今のレースまでの成り立ち、全部で9つあるクラス分けと、それぞれのクラスに参加できる車両、またレースがよりエキサイティングになるように導入されている性能調整について解説していこう。

目次
1.スーパー耐久シリーズの概要とその成り立ち
2.スーパー耐久に参戦できる車両
3.スーパー耐久のクラス分け
ST-X
ST-Z
ST-TCR
ST-Q
ST-1
ST-2
ST-3
ST-4
ST-5
4.レースを面白くする性能調整措置

スーパー耐久シリーズとは? その成り立ち

市販車をベースとして改造したレーシングカーによって争われる耐久レース。

1990年:各地で開催されていたN1車両(ナンバーなしのツーリングカー車両で改造範囲が最小限)による耐久レースを、”プレシーズン”としてシリーズ化したことが始まり。
1991年:「N1耐久シリーズ」(N耐)として正式にスタート。
1995年:N1規定では許されなかったオイルクーラーの設置などを認めN1規定から外れたこともあり、「スーパーN1耐久シリーズ」と名称を変更。
1998年:市販のエアロパーツの装着も認めるなどして「スーパー耐久シリーズ」(S耐)と名称を改変

以降、世界的にも珍しく30年以上続くシリーズへと成長している。

  • ST-X、ST-Z、ST-TCR、ST-Q、ST-1、ST-2のスタートシーン
  • ST-3、ST-4のスタートシーン
  • ST-5のスタートシーン

決勝レースはクラス別に3グループに分かれて、ローリングスタートで始まる

スーパー耐久に参戦できる車両

基本的には参加型のレースであり、プロやアマチュアが入り混じって毎戦クラスごとにバトルが演じられている。
参加できる車両は以下の通り。

  • JAF(日本自動車連盟)に登録されたレース車両
  • 現在ではFIA(国際自動車連盟)規定のFIA GT3車両やGT4車両
  • 2021年より、メーカーが開発中のレーシングカーも参戦できるようになった
  • JAF登録車両やJAFやFIAなどの公認車両でもない車両の場合、STO(スーパー耐久機構)の特認車両として参戦できることもある

車両にはそれぞれゼッケンが前後左右に付けられるが、番号は2〜999に限定され、0番は欠番。1番はST-Xクラスの前年チャンピオンに優先使用権がある。

近年はシリーズの人気が高まると共にエントリー台数も増加しているが、シーズン前には年間エントリーが受け付けられ、それは90台以内となっている。年間エントリーをすることで、エントリーの割引料金が適応され、予選時から優先的にピットが割り当てられる。

参加台数が各大会のピット数を上回った場合は、1ピットを複数チームで使用したり、仮設ピットを使用することもある。

スーパー耐久のクラス分け ST-X、ST-Z、ST-TCR、ST-Q、ST-1~5の9つ

シリーズが始まった当初は排気量により4つのクラスに区分されていたが、現在は排気量や車両規定によって9つのクラスに区分されるようになった。毎戦40台以上の車両が参加し、マシンバラエティはさまざまで、各クラスでのバトルも熱を帯びている。

 

■ST-Xクラス

FIAよりホモロゲーション(公認)が発行されているFIA GT3公認車両、そしてGT3規定に準ずる車両によるクラスで、S耐の総合優勝を争うトップクラス。

FIA GT3はそもそも自動車メーカーのワンメイクレース車両を一緒に走らせたら? ということで始まった規格で、排気量や駆動方式も異なるスポーツカーを性能調整(BOP=Balance of Performance)して性能の均衡を図っている。

欧米の高級スポーツカーをベースとしたレーシングカーが主流で、国産車も日産、レクサス、ホンダの車両が登録されている。

【現在のメジャーなFIA GT3車両】

  • ポルシェ911 GT3R
  • メルセデス AMG GT3
  • アウディR8 LMS EvoII
  • BMW M4 GT3
  • フェラーリ 488 GT3
  • ランボルギーニ・ウラカン GT3
  • アストンマーティン・ヴァンテージGT3
  • マクラーレン720S GT3
  • 日産GT-R NISMO GT3
  • レクサスRC F
  • ホンダNSX GT3

FIA GT3車両は市販車の価格や、最高出力の枠があり、高級スポーツカーをベースにした車両のみが公認される。
FIA GT3車両はスーパー耐久以外でも、欧米のFIA GT3レースに出場できる他、SUPER GTシリーズのGT300クラスや昨年からはドイツツーリングカー選手権(DTM)もこの車両規定に変更されている。
なおFIA GT3車両は市販のままの車両が基本で、パーツメーカーの変更や構造変更、さらに空力面での変更も認められていない。

今年のスーパー耐久シリーズのST-Xクラスに参戦しているのは、日産GT-R NISMO GT3、レクサスRC F GT3、メルセデスAMG GT3、ポルシェ911 GT3Rだけだが、シリーズ中盤以降は他の車両もエントリーする可能性があるだろう。

 

■ST-Zクラス

世界のGT3/GT4レースを主導するSRO(SROモータースポーツグループという自動車レース統括組織)よりBOPが発行されているGT4公認車両、そしてGT4規定に準ずる車両によるクラス。GT4の公認はRACB(ベルギー王立自動車クラブ)が認可した車両

FIA GT3車両の価格が高騰しプロレース化しつつある現状、車両価格も年間経費も少なくて済むGT4車両は欧米のジェントルマンドライバーに好評で、GT4車両だけによるレースも行われるほどポピュラーになった。

S耐では2017年にST-Zクラスとして設定され、翌年に1台が参戦。2019年にスポット参戦も含め6台が参戦すると、2020年にブレイク。昨年はトヨタ・GRスープラ GT4が市販され10台以上が参戦する超激戦クラスへ成長した。

ST-Zクラスに参戦する主な車両は下記の通りだが、今後も車両が増えそうな勢いだ。

  • GRスープラ GT4
  • メルセデスAMG GT4
  • アウディR8 LMS GT4
  • ポルシェ・ケイマンGT4
  • アストンマーティン・ヴァンテージGT4
  • ジネッタG55 GT4

 

なお、GT4車両はFIA GT3車両同様、市販のままの車両が基本で、パーツメーカーの変更や構造変更、さらに空力面での変更も認められていない。

■ST-TCRクラス

FIAまたはWSC(世界スポーツコンサルティング)によりBOPが発行されているTCR規格車両、そしてそれに準ずる車両

TCRとは2ℓ以下のターボエンジンを搭載した4ドアもしくは5ドアのFWD(FF)車両を使用したツーリングカーレース車両。ハッチバック車両にオーバーフェンダーと大型のリヤウィングを装着した車両で、日本はもとより世界各国や地域で選手権シリーズが行われ、世界選手権(世界ツーリングカーカップ=WTCR)も行われている。

【現在のメジャーな車両】

  • アウディ RS3 LMS
  • ホンダ・シビックTCR
  • フォルクスワーゲン・ゴルフTCR
  • アルファロメオ・ジュリエッタTCR
  • セアト・レオンTCR など

 

スーパー耐久では2017年に導入され一時は10台近くのエントリーがあったが、2022年はホンダ・シビックTCRのみが参戦。

■ST-Qクラス

他のクラスに該当しない、STOが認めた開発車両

2021年に新設され、当初はGT4規定のトヨタ・GRスープラを改良した車両が参戦していたが、シーズン途中から水素燃料を使用するトヨタ・カローラスポーツが参戦。

今年は水素カローラの他に、バイオ燃料を使用するトヨタ・GR86、スバルBRZ、マツダ2、ブレーキまわりのパーツを交換してGT4車両規定から外れたメルセデスSLS AMG、そして開発中の日産の新型Zが参戦する。

■ST-1クラス

ST-2~5クラスに該当しない車両

以前は排気量が3,500ccを超える車両とされスーパー耐久シリーズの総合優勝を狙うクラスだったが、現在ではST-2~5クラスに該当しない車両とされている。今年はトヨタ・GRスープラ(GT4車両ではない)、KTM X-BOW GTX、アストンマーティン・ヴァンテージAMR GT8Rなどが参戦している。

■ST-2クラス

排気量が2401〜3500ccの4輪駆動車両、前輪駆動車両

現在はトヨタ・GRヤリス、スバル・WRX STI、三菱ランサー・エボリューションX、ホンダ・シビック タイプRが参戦中。

■ST-3クラス

排気量が2401〜3500ccの後輪駆動車

現在はトヨタ・クラウンRS、レクサス・RC350、日産・フェアレディZ(Z34型)が参戦している。

■ST-4クラス

排気量が1501~2400ccの2輪駆動車

今年から排気量の上限が2000ccから2400ccに改められ、トヨタ・GR86、トヨタ・86、ホンダ・インテグラが参戦する。

■ST-5クラス

現在排気量が1500cc以下の車両

近年では最も参加台数の多い激戦区のクラス。このST-5クラスのみ2010年時点において日本国内で新車販売されていた車両を最古型式として、それ以降の車両に限られている。

【現在の参戦車両】
トヨタ・ヴィッツ
トヨタ・ヤリス
マツダ・ロードスター
マツダ・デミオ
ホンダ・フィット

レースを面白くする性能調整措置

速い車両が勝ち続けるのではなく、レースがより接戦となるために導入されるのが性能調整措置。各大会の競技結果によって、参加車両は次の大会に向けウェイトハンデ搭載による性能引き下げ処置が課される。

  • ST-X/ST-1クラス:1位30kg、2位20kg、3位10kg。
  • ST-Z/ST-TCR/ST-2/ST-3クラス:1位25kg、2位15kg、3位10kg。
  • ST-4/ST-5クラス:1位20kg、2位15kg、3位10kg。

 

参加台数が4台以下の場合には、1位の車両のみに積載する。
このウェイトハンデの最大重量はそれぞれのクラスの車両の1位獲得時に積まれる重量の3倍(ST-X/ST-1クラスであれば90kg)で、最終戦まで継続して積まなければならない。
ウェイトハンデ、及びウエイト取り付け装置を外した状態で車両の最低重量を満たさなければならない。

ウェイトハンデを課せられた競技車両は、リアドアガラスもしくはその付近で視認性が良い場所にウェイトハンデマークを表示しているため、観戦者にもわかりやすくなっている。
また特定の車種、競技車両に対して不定期にウェイトハンデなどの性能調整措置が行われることもある。

(文:皆越和也 編集:GAZOO編集部 写真:スーパー耐久機構、折原弘之、堤晋一)

[GAZOO編集部]

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