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スーパー耐久ルール解説Vol.5 決勝レースのスタートからピット作業、チェッカーまでを解説
ここまで車両やドライバーの規定、そして予選などのルールを解説してきたが、第5回では決勝レースのルールを解説していこう。
今年のスーパー耐久シリーズは、大会によって3時間レース、5時間レース、24時間レースの3パターンがある。
グリーンランプが点灯して決勝レースはスタートするが、どこから追い越しができるのか、ひとりのドライバーの運転時間は何時間までOKなのか、ピット作業は誰でもやって良いのかなど、レースのスタート前からチェッカー後まで細かいルールが定められている。
目次
決勝レースの長さと出走台数
ドライバーの最大運転時間
レーススタート
スタートドライバー
レーススタート
スタート手順の進行
5分前ボード
3分前ボード
1分前ボード
30秒前ボード
フォーメーションラップ
指定グリッドにつけなかった車両
フォーメーションラップをスタートできなかった、スタート順位を維持できなかった車両
ピットストップ
ピット作業
シグナリングプラットフォーム
ピット作業エリアでのエンジン停止
ピットレーンの速度と優先権、手押し
ピット作業エリア
給油中の作業
燃料補給
ペナルティ
救済措置
レース終了と順位確定
抗議、判定に関する問い合わせ
決勝レースの長さと出走台数
レースの長さは大会ごとに距離や時間で決められ、かつては300kmレースなども実施されていたが、最近は時間レースのことが多い。
しかも耐久レースなので最低でも3時間は走りましょうということで、最近の最短レースは3時間に落ち着いている。その3時間レースが行われるのは、グループ別に2つのレースを開催するスポーツランドSUGOと岡山国際サーキットでの大会のみだ。
かつては、ピットの数、パドックに設置されるテント式のピットの合計で、レースへの出走台数が決められており、その数をエントリー台数が超えた場合は、予選落ちも出るほどシリーズは盛況になってきた。
そこで全クラスを2つのグループに分け、2日もしくは1日で2レースを開催するという方法が採られるようになった。
レースに出走できる車両の数は以前はサーキットごとに決められていたが、現在ではレース大会ごとに特別規則書に記されるようになり、なるべく予選落ちが出ないようにしている。
ちなみに今年の富士24時間の最大決勝出走台数は70台に設定されていた。
しかしそれでもエントリー数が50台を超えるような大会もあることから、今年は第2戦富士と最終戦鈴鹿以外の大会では、ST-1~5クラスのいずれかが”1戦お休み”することになった。
◆2022年の各レースに参加できるクラス
- 第1戦
- 鈴鹿サーキット ST-4クラスを除く
- 第2戦
- 富士スピードウェイ 全クラス
- 第3戦
- スポーツランドSUGO ST-2クラスを除く
- 第4戦
- オートポリス ST-5クラスを除く
- 第5戦
- モビリティリゾートもてぎ ST-3クラスを除く
- 第6戦
- 岡山国際サーキット ST-1クラスを除く
- 第7戦
- 鈴鹿サーキット 全クラス
ドライバーの最大運転時間
富士24時間レースを除き、多くのレースで各チームは3~4人のドライバーで参戦することが多い。このうちひとりのドライバーが合計最大で運転できる時間は、レース距離(時間)の2/3を超えてはならない。
距離レースの場合は周回数で、時間レースの場合は時間となる。つまり一番速いドライバーがレースを引っ張るのは2/3までということだ。
ただし、ST-X、ST-Z、ST-TCRクラスのプラチナドライバーは、レース距離(時間)の40%を超えてはならないとしている。
レーススタート
スタートドライバー
決勝レースのスタートドライバーは、プロ野球の予告先発のように事前に申告しなければならない。スタートドライバーは予選結果、レース距離(時間)、ドライバーの力量などざまざまな要素を検討して、チームが決める。そしてそれは決勝スタート前に告知発表される。
レーススタート
スーパー耐久ではすべてのレースでオフィシャルカー(セーフティカーでもOK)先導でフォーメーションラップ(ローリングラップ)が行われ、ローリングスタート方式によってレースがスタートする。
参加台数が多いので、スタート直後の混乱を減らすためだ。
※主なレースのスタート形式
- スタンディングスタート フォーメーションラップの後にグリッドに停止してから一斉にスタートする
- ローリングスタート フォーメーションラップの後にグリッドに停まらずそのままレースがスタートする
また1レースで決勝が行われる場合は、全車をクラスごとに2つのグループに分け、最初のグループと、2番目のグループの間を空けてより安全なスタートが切られるようにしている。
2022年第2戦富士24時間では3つのグループに分かれて、より安全にスタートが切られた(c)スーパー耐久機構
スタート手順の進行
スタート手順の進行は、「5分前」、「3分前」、「1分前」、「30秒前」と時間を示したボードで表示される。
5分前ボード
スタートの秒読み開始であり、グリッドへの進入は禁止となる。このボード掲出までに、ドライバー、一部のチームクルー、そしてオフィシャル以外の者はコース上から退去することになる。
3分前ボード
ドライバーとオフィシャルを除く者はコース上から退去し、ドライバーは車両に着座した状態でドアを閉めていなくてはならない。この時間以降、メカニックが車両へタッチすることはできず、ドライバーの乗車補助も許されない。つまりスタンバイ完了となる。
1分前ボード
ドライバーはエンジンを始動する。ここでエキゾーストノートがこだまし、ドライバーもエントラントもファンもテンションが上がってくる。
30秒前ボード
グリッド前方でグリーンフラッグが振られ、オフィシャルカーを先頭に全車両は隊列を保ちフォーメーションラップを開始する。
フォーメーションラップ
- この周回中には、スタート練習や隊列を乱したり追い越したりすることは禁止。
- 前の車両とはできる限り詰め、オーガナイザーから指示が出され2列縦隊に整えた後は、前車の走行ラインから左右にはみだすことはできない。
- ハーフウェットや路面温度が低い場合など路面コンディションによっては、フォーメーションラップが2周以上実施されることもある。
- 最後尾にはクロージングカーが付き追走する。
- フォーメーションラップが開始されると同時にスタートラインの信号はレッドランプが点灯され、コースサイドのポストでは黄旗が掲出される。
- 隊列を先導するオフィシャルカーの速度は最高約80km/hに保たれ、競技車両は最低速度70km/h~最高速度90km/hで走行する。
- フォーメーションラップが終了する周回で、オフィシャルカーはコースから退場。
- スタートラインの信号がレッドからグリーンになった時点でレースはスタートとなるが、各車はスタートラインを通過するまで他の車両を追い越してはならない。
(欧米では、スタートと同時に追い越し可能となるレースもある) - フォーメーションラップ中に何らかの問題が生じた場合は、レッドシグナル&黄旗掲出のままで、オフィシャルカーが先頭に合流しもう1周フォーメーションラップ(エクストラフォーメーションラップ)を継続する。この場合その周回は決勝周回数(時間)に含まれる。
指定グリッドにつけなかった車両
グリッドに付けなかったり、ピットスタートとなった場合には、ピットレーン出口で待機し、最後尾車両がピットレーン出口を通過して、出口シグナルにグリーンランプが点灯すればスタートすることができる。
フォーメーションラップをスタートできなかった、スタート順位を維持できなかった車両
フォーメーションラップ開始時にスタートできなかった場合、ドライバーは窓から手を出してオフィシャルに合図をする。
担当のオフィシャルは黄旗を振動して他の車両にその車両が動けないことを告知する。
全車両がグリッドを離れた後、オフィシャルのみがコース上で車両を押してエンジンを始動することができるが、この車両は他の車両を追い越すことはできない。
2グループに分けてのスタートで、前のグループ車両がフォーメーションラップにスタートできなかった場合は、前のグループの最後尾に合流することができる。
ピットストップ
決勝レースがスタートすると、ゴールするまでのレース中に少なくとも2回のドライバー交代を伴うピットストップが義務付けられる。
このドライバー交代とは、降りたドライバーと乗り込むドライバーが異なるという意味であり、同じドライバーが一旦降りて乗り込んでもそれはドライバー交代とは認められない。
ドライバー交代の回数は各大会のレース距離(時間)を考慮し、大会の特別規則書で発表される。なお、ドライバー交代時には、タイヤ交換を同時に行うことはできる。
ピット作業
シグナリングプラットフォーム
シグナリングプラットフォーム(コースのすぐ脇でチームへの指示を出したり、走行しているドライバーにボードを提示するエリア)へ出られる要員は、下記の中から常時3名まで。
- ドライバー、およびチーム監督
- 登録されたピット要員
- STOが配布した「ピットサインマンビブス」を着用した要員
ピット作業エリアでのエンジン停止
- ピットインした車両はピット作業エリアで停車した場合は、必ずエンジンを切らなければならない。
- 調節や調整のためにエンジンを始動させる場合は、補助エネルギー源を使うことは可能。
- 再びレースに加わるために車両をスタートさせる際のエンジン始動は、ドライバーがその車両のイグニッションやスターターと呼ばれる始動装置で行わなければならず、補助動力源の使用は認められない。
- ピットガレージ内で作業を行っていたとすれば、作業エリアに出てからでないとエンジン始動は行えない。
- ジャッキダウンの途中でも始動は禁止。
ピットレーンの速度と優先権、手押し
- ピットレーンの通過速度は50km/h以下。
- ピットレーンにおける優先権は、ファストレーン(ピットレーンの通常走行エリア)走行中の車両にある。
- ピットレーンと作業エリアでは後退(リバース)ギアの使用は禁止。
- 自己のピット停止位置を行きすぎた場合は、ピット要員が押し戻すことができる。
- 自己のピットよりも手前で停止し自走移動できない場合は、オフィシャルの許可を得た後にピット要員が自ピットまで押し、必要であればピットガレージに押し入れることができる。
ピット作業エリア
- 作業エリアに出ることができるピット要員は最大7名まで。
- 給油口が左右に分かれている場合には、申請すれば消火要員1名の追加が認められる。(消化以外の作業はできない)
- 車両が停止した際には、登録された要員のうち最大5名までが車両の作業につくことができる。
- 車両誘導員、給油中ホース保持等の補助要員、消火要員については最大5名にはカウントされない。
- 登録された要員は、耐火スーツを着用し、耐火炎素材か難燃性素材で皮膚が完全に覆われたグローブ、ヘルメットを装着し、眼球を保護するゴーグルやシールドを使用しなければならない。できればバラクラバの着用と安全靴を履くことが望ましい。
- 窓拭き、アイスボックスの氷交換、燃料補給のためボンネット上で待機している要員は5名の中に含まれる。
- 他のドライバーによるシート合わせやシートベルトの調整は要員に含まれない。
- 乗車していたドライバーが行うシート調整、通信機器との配線接続切断、シートベルト調整、乗車したドライバーが行うドリンクボトルやトランスポンダーの交換やクールスーツの氷交換、シートベルト調整は作業とみなされない。
- タイヤ交換作業は2名以下で行わなければならず、交換用タイヤの準備や使用済みタイヤの片付けは作業に含まれない。
- 一連のタイヤ交換作業中の要員交代は認められない。
- 作業前後のタイヤは地面に平置きしなければならない。
- ピット作業が長引く場合、ピットガレージで作業を行うこととされるが、ガレージへの車両の出し入れは規定の人数で行わなければならない。
- ピット作業エリアでの事前の準備は、車両停止位置を示すボードとピット側に装着予定のタイヤのみ
- 車両がピットインする際には、車両停止位置を示すボードで車両誘導する要員以外、ファストレーン側の作業予定場所に出ることはできない。
- タイヤ交換の待機中に、交換するタイヤ、及び工具を車両の輪郭より内側に入れてはならない。
給油中の作業
給油中の作業は、下記のもの以外はすべて禁止。
- ドライバーの降車または乗車補助
- シートベルト装着の補助
- トランスポンダーの交換または設定変更
- 通信機器の配線接続、ドリンクボトル入れ替えと配管接続、ドライバークーリングシステムの氷交換と配管の接続
- 窓拭きと保護フィルムを剥がす作業
認められる作業は、ドライバーとメカニック1名~2名だけができる。この作業の担当要員はバスクラバを着用しなければならず、またこの作業中のみグローブ着用が免除される。
燃料補給
- 燃料補給は最新のJAF国内競技車両規則で規定されている燃料補給装置により、ピット作業エリアで行わなければならない。
- 燃料補給は車両が停車し、エンジンが停止され、アースが取り付けられてから行うことができる。
- アースは燃料補給が終了するまで確実に保持されていなければならない。
- 燃料補給ホースを給油口に差し込んだ状態でのジャッキ作動は禁止される。
- ST-4とST-5クラスでは、STOが指定した燃料補給装置(金属携行缶)を使用しなくてはならない。
- 1回のピットストップで補給できる燃料はST-4クラスが最大60L以下、ST-5クラスが最大20L以下に限られる。
- 燃料補給装置検査に合格したもののみ使用ができる。
- 燃料補給は登録された最大2名までの燃料補給要員により行い、少なくとも1名のピット要員が消火要員として内容量3kg以上の消火器を持って待機しなければならない。
- 給油開始は、給油装置が給油口に向かってボディーラインから隠れた状態。
- 給油終了は、給油装置が給油口から外れボディーラインから出た状態。
- ST-5クラスの一部車両は燃料補給の開口部を開けた時点、閉じた時点で給油の開始、終了とする。
- 給油中は4輪全てが走行可能な状態で装着され、ジャッキアップ用のエアホース、アース、オイル補給用のボトル以外は車両に触れてはならない。
- 燃料補給要員、及び消火要員は耐火被服(JAF/FIA 公認を強く推奨)を着用し、更に頭部についてはバラクラバとバイザー付きのフルフェイス型ヘルメットの着用が義務。
- 燃料のピットガレージ内への持込は、20L以下の消防法に適合した市販の金属携行缶で、最大100Lまでとする。
- 燃料をピット内に貯蔵する場合、内容量 3kg以上の消火器を2個以上配備しなければならない。
ペナルティ
レース中には違反を犯したことでペナルティが科せられることがある。ペナルティは本コースのコントロールライン付近でペナルティを示すボードが掲出された時点から、ペナルティの消化が認められ、ボード掲出前の行為はペナルティ履行とは認められない。
ペナルティの種類はさまざまあるが、ピット作業に関する主なペナルティとしては、ピットロード速度違反、停止時にエンジン停止を怠ったり、作業中にエンジンをかけてしまったり、タイヤを平置きしなかったりすることが見受けられる。
救済措置
決勝レース中、コース内で車両が停止した場合、レッカー車等により車両をリペアエリア(パドック)まで運ぶ「救済措置」をとることがある。その場合は、各大会の特別規則書または公式通知で示される。また停止位置や状況によっては「救済措置」が行われない場合もある。
この「救済措置」はかつて開催されていたスーパー耐久の十勝24時間レースで実施されたのが最初。長距離(時間)の耐久レースなので、エンジン交換やミッション交換といった大きなトラブルでも、リペアエリアで作業ができレースに復帰することもできる、スーパー耐久ならではの措置だ。
レース終了と順位確定
レースの終了は総合1位の車両が当初のレース距離を走破した時点となる。
時間レースの場合は、特に大会規則書にレース終了の表示方法が定められている場合を除き、所定のレース時間を終了し、最初に総合1位の車両がコントロールラインを通過した時点でレース終了となる。
順位判定は最終周回を完了し、本コースのコントロールライン上でチェッカーフラッグを受けた車両に対してのみ行われる。したがってピットロードやガレージでレースを終えた車両は完走とは認められない(チェッカー優先)。
最終周回を完了した車両の中で、クラスごとに走行周回数が優勝車両の70%(端数切り捨て)に達しない車両は順位の認定を受けられない。
レース終了後の車両保管については、各大会特別規則または公式通知により公示される。決勝後の車検が終わるまで、車両保管は解除されず、車両を触ることはできない。
抗議、判定に関する問い合わせ
抗議は、規定の抗議料を添えて文書で競技長に提出する。抗議や判定に関する問い合わせができるのは、競技参加者(エントラント)、チーム監督(競技責任者)のみであり、ドライバーが抗議することはできない。
抗議は他チームの車両規定違反に関するものが多く、レース後になかなか暫定結果が出なかったりする場合もある。また場合によってはJAFの審議を待つ場合もある。
なお各大会の規則で定められている以外の抗議・アピールについては一切認められない。
(文:皆越和也 編集:GAZOO編集部 写真:スーパー耐久機構)
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