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スーパー耐久ルール解説Vol.6 フルコースイエロー(FCY)、セーフティカー(SC)やレースの中断、再開、終了について解説
決勝レースでは、アクシデントや天候の変化などでレースの継続が困難な状態になることがある。そうした場合でもレースが中断されることや、拡げたリードがなくなるなどレース展開が大きく変わることを避けるために導入されるのが、『セーフティカー(SC)』と『フルコースイエロー(FCY)』だ。
また、レース中断になった場合にドライバーに求められること、レースが再開される場合の手順、不幸にも再開されず終了となった場合の規定などについて、わかりやすく解説していこう。
目次
フルコースイエロー(FCY)とセーフティカー(SC)
フルコースイエロー(FCY)
FCYの流れ
スローゾーン
FCY中のピット作業
セーフティカー(SC)
SCの流れ
SC中のピット作業
レースの中断
レースの再開
レースの終了
フルコースイエロー(FCY)とセーフティカー(SC)
レース中には、ドライバーやオフィシャルが危険な状態であるが、レースを中断するほどではない場合に、FCYやSCを使用する場合がある。
FCYの特徴
コース全域において、全車に同じ制限速度が設けられることによって、前後の車両とのタイム差が維持される。
そのため、FCYが出されるまでのレース展開をそのままに、天候の回復やコース外の比較的安全なエリアに停止した車両や脱落したパーツの撤去、コース設備を安全な状態に復帰させることが可能となる。
F1で導入されているバーチャル・セーフティカー(VSC)も、車速の制限の方法が異なるが、同じように車両の間隔が維持される制度だ。
SCの特徴
セーフティカー(SC)が出動し、コース上に走行するマシンを先導することによって、コース上に停車した車両や落下したパーツなどを、オフィシャルがより安全に撤去することが可能となる。
ただし、セーフティカーの背後に車両が隊列をつくるため、前後の車両との差はなくなったり、周回遅れの車両が隊列の最後尾につくことで周回遅れが解消されたりと、レース展開としては振り出しに戻ることとなる。
それでは、FCYとSCそれぞれについて詳しくみていこう。
フルコースイエロー(FCY)
競技長が安全上の理由でFCYが必要だと判断した場合に「FCY」期間を宣言することができる。FCYは国内では2018年にスーパー耐久が初めて採用し、現在ではSUPER GTシリーズでも運用されるようになった。
FCYの流れ
- 「FCY」宣言がタイミングモニターやレースコントロール無線で行われる。
- FCYのカウントダウンが始まる。
- 宣言が行われると、約10秒後にマーシャルポストでFCYボード(ナイトセッションではFCY信号)が表示される。
- この時点から追い越しが禁止され、ドライバーは周囲の安全を確認しながら減速を始める。
- FCYボード提示の約10秒後には、コース上での走行速度は上限50km/hに規制され、FCYボードに加え黄旗が振動される。
- FCYの状態になると、事故現場の通過など危険回避の場合を除き、50km/hの一定速度で、1列縦隊で前後の車両間隔を維持し、追い越しや加減速は厳禁となる。
- コース上の問題が解決次第、競技長はFCYを解除する。
- 解除宣言はタイミングモニターやレースコントロール無線で伝えられ、解除宣言が行われた約10秒後にすべてのマーシャルポストは黄旗とFCYボードを緑旗の振動表示に変え、この時点からレースの追い越しや速度の規制が解除となる。
スローゾーン
レースによってはスローゾーンが設けられることもある。
これはコース上での撤去作業や危険な現場直前の現場ポストで、イエローフラッグ2本の振動と「ZONE50」と記載されたボードが提示され、車両はただちに50km/hまで速度を落とさなければならない。
FCY中のピット作業
- FCY導入中は、すべての競技車両はピットレーンに進入することはできない。
- ガス欠寸前などの理由で止むを得ず従えなかった場合には、60秒以上のペナルティストップが課される。
- FCY導入中は、ドライブスルーやペナルティストップを消化することはできない。
フルコースイエロー(FCY)が宣言されると、各コーナーポストにFCY看板が提示され、イエローフラッグが振られる (c)スーパー耐久機構
セーフティカー(SC)
SCは、コース上またはコースサイドで安全なレースができない場合に出動し、事故処理が終了するまで隊列を先導する。
FCY走行から、その後に安全性を求めるためにSCになる場合もある。
SC車両の両サイドとリアには「SAFETY CAR」と表記され、ルーフにイエローかオレンジの回転灯を、車体後部にグリーンライトを備える。
SCの流れ
- SC導入決定と同時にシグナルタワーを含むすべてのマーシャルポストでは、振動表示の黄旗と「SC」と書かれたボードが表示され、SC活動中は継続提示される
- SCはオレンジ灯を点灯させピットレーン出口よりコースインするが、先頭車両の位置に関係なくコースインする。
- SCに後続する車両は、車両5台分の距離を置いて隊列&整列で走行する
- SCがピットに戻った後、車両がスタートラインに到達するまで追い越しは禁止。ただしSCから合図された場合、SCがピットレーンを使用している間に指定されたガレージエリアに車両が停車している場合、明らかに問題を抱えて車両がスローダウンしている場合は追い越しが可能。
- 競技長から指示があった場合、SCはSCと先頭車両の間にいる車両に対してグリーンライトを使ってSCの前に出るよう合図することがある。これらの車両は他の車両を追い越さずに走行を続けSC後方の隊列につくことになる。
- もしSCの後方にいた先頭車両がピットインした場合には、SCの直後を走行している車両を先頭車両とみなし、SCはピットインした先頭車両を再度後方につけることはない。
- SCが隊列から離れピットインする場合は、SCはその周回の途中でオレンジ灯を消しピットイン。その周回が完了した時点でマーシャルポストでは黄旗と「SC」ボードが取り込まれグリーンフラッグが振動提示される。ただしそこからコントロールラインまでは追い越しは禁止となる。
- SC活動中は、周回としてカウントされる。
- SCのまま最大時間超過や安全性が保たれないとして、レースが終了や打ち切りになる場合もある。
SC中のピット作業
- SC運用中はピットレーンに進入することはできる。
- ピットインした車両やSC導入時にピット作業をしていた車両は、ピットレーン出口でグリーンライトが点灯している場合に限りコースインできる。
レースの中断
悪天候や視界不良、また重大な事故になどによりコースの安全状態の復旧に時間がかかる場合は、レースが中断する場合がある。
レース中断の流れ
- 止むを得ず決勝レースを中断する場合には、競技長が赤旗をすべてのマーシャルポストで提示することを命じ、レース中断となる。
- 赤旗が出された時点で、追い越しは禁止となりピットは閉鎖される。
- 各車両は赤旗ライン(コントロールライン)後方までゆっくりと進み、2列交互のスタッガードフォーメーションで停止する。
- グリッド上には登録されたピット要員と競技役員のみしか立ち入ることはできない。
- この時点でドライバー交代のためにピットインしていた車両はドライバー交代が認められる。
レースの再開
天候の回復や、コースの安全が確保されるとレースが再開される。
レース再開の流れ
- レース再開の時間が決定されると、監督ミーティングやピット放送などを通じて全競技関係者、大会入場者全員にも通達される。
- 再開「5分前」が、パドック放送とモニター表示により進行がスタートする。
- 再スタートの際はグリッド先頭に停止している車両ではなく、レース総合トップの前にSCがつく。このため、総合トップ車両の前に並んでいる車両は、コースを1周してグリッドの後尾につくことになる
- 赤旗中断時点で正規にピットインしていた車両のうち「5分前」の時点でピット出口に整列できた車両は、さらに隊列の後尾につくことができる。
- レースはスタートシグナルのグリーンライトを合図にSC先導により再開される。
- すべての車両が整列できていて、SC介入が必要な状況が発生していなければ、SCは1周でピットインしてレース再開となる。
- レースが距離レースではなく時間レースの場合、赤旗中断からレース再開までの時間は競技時間として数えられる。
- ドライバー運転時間は赤旗中断中の時間を除き当初の規定時間を超えてはならない。
- ジェントルマンの最低義務周回数の適用は除外される。ただし除外しない場合や規定時間等を変更する場合は、STOが新たな規定時間等を決定し発表する。
2021年の第4戦オートポリスは、スタート直後に視界不良のためSCから赤旗中断に。その後SCの先導からレースはリスタート
レースの終了
天候の不良やコースの安全性が確保できない状況、またレースの残り時間や距離などが考慮され、赤旗による中断のままレースが終了することがある。
レース終了の流れ
- 赤旗中断後、レース再開が不可能と判断された場合は、監督ミーティングやピット放送などを通じて全競技関係者、大会入場者全員にも通達される。
- レース中断の合図が出された周回の1つ前の周回が終了した時点の結果が採用となる。
- 赤旗中断をもってレース終了となった場合には、ジェントルマンドライバーの最低義務周回数(時間)、ドライバー交代を伴うピットストップ回数の適用はなくなる。
こうしたルールがあることで、レースはスタートしてもその後の荒天によりレース中断や途中での終了が予想される場合は、ジェントルマンドライバーを温存するという作戦を採るチームもある(ST-X、Z、TCRクラス)。
(文:皆越和也 編集:GAZOO編集部 写真:スーパー耐久機構)
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