映画で疾走する姿にひと目ボレ!最大8台を所有していたT160系コレクターのこだわりが詰まったST165【全国ST16ミーティング】
1980〜90年代にトヨタの2ℓクラススポーツエンジンとして多くの機種に搭載され、モータースポーツでも活躍した3S-G/3S-GT。セリカシリーズでもT160からT200までの3世代に渡って主力エンジンとして採用されていたが、先日、その開発を担当していたヤマハ発動機への里帰りとして『ST16ミーティング』が企画された(その様子はイベントレポートをご覧ください)。そして、このミーティング開催の立役者でもある上田真吾さんが所有する愛車が、このST165型セリカGT-FOURだ。
国内では1986年8月にデビューしたT160系セリカ。シリーズ4代目となるモデルの最大のトピックは、長年のFRレイアウトからFFレイアウトへの変更だった。プラットフォームは兄弟車のコロナやカリーナと共通で、ボディスタイルはハッチバックのみで発売をスタート。そのグラマラスで流動感あふれるスタイルは“流面形"と名付けられていた。
そして、FFモデルのデビューから翌年追加されたのが、メカニカルロック方式のセンターデフを採用したフルタイム4WDのスポーツモデルST165セリカGT-FOURだ。
エンジンは2ℓツインカムターボの3S-GTを搭載。水冷インタークーラーの採用で、当時の国産4気筒では最高となる最高出力185ps、最大トルク24.5kg-mを獲得。マクファーソンストラット式の4輪独立懸架サスペンションは、ハイパワー化に合わせてフロントスタビライザー強化のほか、軽量・高剛性なサブフレーム方式のリヤメンバーを採用した。
ST165と聞いて多くのひとがまず思い浮かべるのは世界ラリー選手権(WRC)での活躍だと思うが、もうひとつ忘れてはならないのが1987年に公開された映画『私をスキーに連れてって』(主演・原田知世)である。
スキー場での出会いをきっかけに展開されるトレンディラブストーリーだったが、そのクライマックスで新作スキーウェアを発表会場に届けるために激走をみせたのがST165。スピード狂の真理子(原田貴和子)とヒロコ(高橋ひとみ)が雪道を攻める前にドアを開けて路面を触ってつぶやいた「凍ってるね」は流行語になり“スキーには4WD”というイメージが当時の若者たちに浸透するキッカケになったのだ。
上田さんがST165を購入したのも『私をスキーに連れてって』がキッカケ。といっても上田さんは現在30才で映画の公開当時は生まれていないので、レンタルビデオで見た例のスタートシーンとリトラクタブルライトのスタイルに憧れて「いつかあれに乗る!」と決めたのだそうだ。
しかし19才の時に最初に手に入れたのはFFモデルの後期型ST162。「購入した当時は憧れのクルマだったので感動しましたけど、やっぱり劇中に登場するのと同じヤツ(ST165前期モデル)をいつかは手に入れたいという気持ちが強くなっていきました」と、当時を振り返ってくれた。
実は、今回のミーティングに乗ってきた1987年式ST165(前期)のほかに、FFモデルのST162(前期)、ST165(後期・WRCカンクネン仕様に変更中)と合わせて、計3台のT160系セリカを所有しているという上田さん。
「ずっと探し続けて、5年前にようやく映画と同じこのST165前期モデルを手に入れました。どこかにT160系セリカがある、セリカの仲間が手放す、という話を聞くと放っておけなくて最大で8台所有していたこともあります」というから驚いてしまう。
純正のスタイルをしっかりとキープすることをコンセプトとしているのがこの1台。新車のようなコンディションのスーパーホワイトIIの外装は、オールペイントによるものだが、ボディサイド、リヤのデカール類も含めてしっかりとレストア。アルミホイールも前期型純正品(6J×14)をセットしている。サスペンションは補修のために、ダンパーをカヤバのニューSRに交換済みだ。
エンジンまわりも基本的にノーマルで、劣化したホース類は新品に交換されている。純正タービンの刻印を赤くペイントしているのはさりげないオシャレ!?
インテリアも素晴らしいコンディションで、ステアリングやシートはもちろん、エアコンスイッチやオーディオ類まですべて純正品となっている。リヤクオーターに張られたステッカーの“SALLOT"は、映画に登場するスキーブランドだ。
「当面の目標は、今所有している3台をしっかり維持していくことですね。そのうえで苦労するのはやはり部品がないことですが、なかでもホースやゴム類の調達がもっとも大変です。30年以上も前のクルマを維持するには、ストックを融通し合ったり、流用情報を共有したりと、クラブメンバーの支えも欠かせません」と語ってくれた上田さん。これからも絶滅危惧種の保護活動に尽力してくれることだろう。
[ガズー編集部]
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