1世紀走り続ける!? 1967年式トヨペット・クラウン

今、1960年代から1980年代の国産旧車が大きな盛り上がりを見せている。そのブームを支えているのが40歳~50歳代のいわゆる“カムバック組”。昔乗っていたクルマにもう一度乗りたくなった人や、子供の頃に憧れていたクルマを最近になって手にした人たちだ。

しかし、今回紹介する1967年式のクラウンオーナー、池畑晃平さんは1991年生まれの25歳。なんとこのクラウンが公道を走り始めてから24年後(!)に生まれた若者だ。カムバック組が大半を占める旧車シーンの中で、この組み合わせはかなり異色と言える。

「もともと古いトヨタ車の大ファンで、人気の1980年代よりもっともっと古いトヨタ車に乗りたいと思っていました。その条件に合ったのがこのクルマ。クラウンならではの伝統と格式に魅力を感じインターネットで探していたところ、程度の良い個体を見つけ、現車を見に行ったその日に購入しました。曲線美を感じるリアの複雑なデザインや、室内のアナログ時計がお気に入りです」

池畑さんのクラウン(MS41型)は今も歴史を刻み続けるクラウンシリーズの2代目。当時のトヨタの先端技術が詰まったモデルで、初の直列6気筒OHCエンジン(M型)を搭載している。ビートたけしさんと木村拓哉さんが共演したクラウンのCM「ReBORN」に出演していたことでも知られている。

購入後、ゴム類やウォーターポンプ、オルタネーターなどの消耗部品を徹底的に交換。池畑さんは父親が経営する自動車整備工場に勤めていて、整備士の免許も持っているため、クラウンに関する作業はすべて自分で行っている。また、メンテナンス以上にこだわったのが、オリジナルの状態に戻すこと。購入時は真っ黒なタイヤが装着されていたが、ホワイトのラインが描かれた当時風のタイヤを装着。さらにテールレンズもクリアタイプから赤い純正品に交換し、当時のルックスを再現した。

「工場から出てきた素の状態が好きです。カスタマイズするとどうしても個性が出てしまい、いずれ飽きます。オリジナルのままの方が目立ちますし、当時のままの状態に驚くみんなのリアクションも好き。これからもこの状態を維持するつもりです」

その決意は部品のストック状態にも表れている。なんとボディ、エンジン、部品をほぼ1台分保有。その気になれば、レストアすることも可能だ。ディーラーに勤めていた時のツテを頼ったり、部品商やトヨタ部品共販に足を運んだり。オリジナル状態を維持するための努力は惜しまない。

取材時の走行距離は7万737km。2年前に購入してから1万km以上乗った。主な出かけ先は休日のドライブと近くで行われる旧車系のイベント。普段は倉庫で保管しているが、コンディション維持のために高速を走ることもある。

「手持ちの部品で直せない不具合箇所がクーラー。コンプレッサーを交換する必要があるのですが、どうしても見つかりません。スペアエンジンに付いているコンプレッサーもダメ。今もオークションやイベントで部品を探す毎日です」

このクラウンは間もなく50年。25歳の池畑さんがあと50年乗り続ければ、登録してから100年間走り続けたことになる。実はこれ、池畑さんが大真面目に実現しようとしているプラン。1世紀走り続けるクラウンとして、これからも維持していく覚悟だ。

「50年後は75歳。その時、まわりのクルマは空を飛んでいるかもしれませんが、100年は行けるんじゃないですかね」

取材終了後、近くの駅まで送ってもらったが、クラウンの助手席から見えた車窓は昭和そのもの。LEDの信号さえ、何かのステージセットに思ってしまったほど。

2066年、クラウンから見える景色はどんな景色だろうか?

(フリーライター:ゴリ奥野)

[ガズー編集部]