【カーライフメモリーズ ~愛車と家族の物語~】中学生の息子と父親が二人三脚で挑む!! 初代カペラ(S122A)のレストア日記
クルマ好きな家族の影響で、子供の頃からミニカーやゲーム、イベントなどでクルマと触れ合う機会を与えられ、気がつけばクルマ好きに…というのはよく耳にする話。
今回、取材させていただいた神居りゅうと君(14才)も「ミニカーは数百台くらい持っていて、117クーペやジャパン(スカイライン)が好きです。小さい頃から父親の運転するクルマの助手席に乗って、いっしょにイベントや大黒パーキングに行っていました。もちろんクルマ系のゲームも好きだし、最近はまずクルマより先に免許が取れるバイクにも興味を持ち始めました」と、王道路線を驀進中の男の子だ。
そして、なんと半年前に父親の隆さんからこのマツダ・カペラ ロータリー4ドアDX(S122A)を「りゅうとが免許を取るまでにレストアして乗ったらいい」と与えられたのだという。まさに実寸大の1/1プラモデルだ。
1970年に発売されたカペラは、コスモスポーツ、ファミリアに続いてロータリーエンジンを搭載。120psを発揮するハイパワーな12Aエンジンを生かしてレースなどでも活躍し、1972年にはアメリカでカー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど海外でも人気を博したモデルだ。
とはいえ、スカイラインやフェアレディZなどと比較すると残存する個体数は少なく、お目にかかれる機会もめったにない。
りゅうと君のカペラは後期型の4ドアモデルで、角目ヘッドライトの前期型に対して、丸目4灯のフロントマスクが特徴的。内装はなんと新車時のビニールが残っている状態だ。
しかし、実はエンジンルームの中には、肝心のエンジンが存在しない。
「前のオーナーさんがすごく大事に乗っていたのですが、エンジンブローしたクーペを手に入れてそっちにエンジンを載せ換えてしまったんです。そこで、長らく保管されたままの状態になっていたこのボディを譲ってもらったんです」と隆さんが事情を説明してくれた。
ちなみに、息子にこんな壮大なチャレンジ(!?)をさせようと画策している父親の神居 隆さんはというと、小さな頃からモトクロスのプロ選手として活動。免許を取得してからはKP61スターレットにはじまり、RX-7、カリーナ、アルトワークス、サファリ、ファミリア、そしてカペラなどを乗り継いできたという生粋のクルマ好き。
「18才から20代前半まではとにかく走るのが楽しくて、そのためにサスペンションのセッティングなどをいろいろ学びました。GMCサファリに乗り換えた頃から大黒埠頭に集まるドレスアップカーやオーディオカーを見てアメリカンカスタムに目覚め、その後に乗ったR100(ファミリア ロータリークーペ)ではAE86の足まわりを移植して太いホイールを履かせるなど時間もお金もかけて作りましたね」と、時の流れと共にさまざまな仕様の経験を積み重ねてきたという。
そして、その集大成として製作した1台が「14年前に手に入れて、エンジンから足まわりまでオーバーホールとカスタムに2年をかけて作り込みました」というカペラ ロータリークーペ。
現在はショップに長期入院中とのことだが、幼い頃からりゅうと君も親しんだ1台だ。
ちなみに、マシニングセンタによる金属加工業を営む職業柄、欲しいと思ったパーツや部品を自らワンオフで作り上げることもできるという隆さん。
「普通はクルマ屋さんが発案したものを加工屋さんに依頼して製品化しますけど、自分の場合は設計から製作までひとりでやるので『ここはこうやって作った方がロスなく簡単に加工できるな』というかんじで、効率よく安価に仕上げることもできます。また、まわりに溶接や塗装のプロフェッショナルがいるのも心強いですよね」と、仕事のネットワークが趣味にも多大に貢献しているようす。
「今も知り合いからの依頼でインマニを作っているんですが、他の車種にも流用できるようにひと工夫くわえて設計しています」と、まわりのクルマ好きからも頼りにされている存在だ。
そんな父親の背中を見て育ったりゅうと君も、最近はCADの使い方を勉強中。お父さんの仕事を手伝いながら、カペラのパーツを作るための知識を蓄えているという。
また、不動車のカペラに変わってクルマいじりの基礎を学ぶ教材となっているのが、隆さんが4年前に手に入れたというBNR32。
「洗車のやり方からはじまって、小学校の時の自由研究としてカムカバーやサージタンクの塗装をやらせてもらったりと、少しずつ勉強しています」とりゅうと君。
カペラの方も、月極ガレージに修復用パーツや工具を集め、休みの日には掃除や洗車をするなど、4年後の復活にむけて少しずつ準備をはじめているという。
もちろんクルマの整備やレストアに関する知識はこれから学んでいくことになるのだが「まずは、外装はこのままでもいいかなと。もともと渋いスタイルが好きなのでハデにはしないつもりです。いずれドリフトとかもしてみたいけど、このカペラでは無理だろうなぁ(笑)」と、りゅうと君の未来予想図は無限に広がっている。
貴重なクルマを子供に預けることについて、不安はないのか?と隆さんに伺ってみたところ「クルマいじりだけに限らず、遊び心を忘れちゃいけないと思っています。修理の様子を撮影してYouTubeにアップしてみるとか、自分で作ったパーツをつけてみるとか、EV化しちゃったりとか!? とにかくいろんな経験につながったらいいなと。自分のカペラを修理するときも、ゴム類などは日本では手に入らず海外から仕入れたりするなどいろいろ苦労しましたから、そういうことを通して世界のさまざまなカスタムの情報にも目を向けてみてほしいですね。4年後に、どうなっているか楽しみです」と楽しそうに語ってくれた。
最後に、いつもであれば愛車のエンジンサウンドを聞かせていただくところだが、りゅうと君のカペラと隆さんのカペラ、2台がそろってロータリーサウンドを聞かせてくれる4年後まで、お預けにしたいと思う。
(写真:平野 陽)
[ガズー編集部]
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