人と違うものがほしいから何でも作る! いすゞ「ピアッツァ」オーナーズクラブの代表の奇想天外マシン

いすゞピアッツァ」は、1981年から1991年に生産された3ドアハッチバッククーペで、イタリアを代表するジョルジェット・ジウジアーロによるデザインが特徴的なクルマだ。
エッジの効いたボンネットと、3ドアハッチバックの独創的なジウジアーロデザインは、今でも輝きを放つ。そのスタイリングに惚れ込み、熱狂的なファンも多い車種でもある。

そんなピアッツァに19歳から乗り続け、現在ではピアッツァオーナーズクラブ「PIAZZA TECHNICAL CLUB SOP TECHNICAL CLUSTER」の代表を務めているのが川端秀和さん(53歳)だ。

川端さんの愛車は、1986年製のピアッツァ・ネロで、グレードは「XS NERO5」になる。ちなみにピアッツァは、販路拡大のために日本国内ではヤナセからも販売され、その際の名称が「ピアッツァ・ネロ」になる。
ピアッツァは、さまざまなグレードや海外仕様も存在し、川端さんのピアッツァ・ネロは2.0L直列4気筒SOHCターボの4ZC1型エンジンを搭載モデルだ。

ピアッツァの説明はこのあたりにして、川端さんがなぜピアッツァに乗りはじめたのか聞くと、「じつはピアッツァが大好きってわけじゃないですよね。ただ、人と同じクルマに乗りたくなかった。あとは4ドアには乗りたくないし、ハッチバックがほしいなと。それがピアッツァを選んだ理由ですね。オーナーズクラブを運営していますが、みんなピアッツァが好きだなぁと思っているくらい(笑)。ただ、ずっと乗って、いじってきたから手放せないんですよ」と謙遜するが、傍から見れば異常なピアッツァ好きにほかならない。

また、ピアッツァに乗るにあたり、川端さんならではのこだわりもある。それが「業者に出さず、すべて自分の手で作業する」ということだ。

これは、自身が代表を務めるオーナーズクラブ「PIAZZA TECHNICAL CLUB SOP TECHNICAL CLUSTER」の入会条件にもなっている。ちなみにオーナーズクラブ名には、「SOP=SLAVE OF PIAZZA(ピアッツァの奴隷)」と、「TECHNICAL CLUSTER=技術的集団(自身でメンテナンスやモデファイをしていこうとする集団)」という意味が込められている。

そんなオーナーズクラブを運営していることから、このピアッツァ・ネロもすべて川端さんの手によってカスタマイズされている。
「もともとメンテナンスやモデファイの知識なんてなかったんですよ。ただ、カー用品店でオイル交換するとき、その作業を見られるじゃないですか?それを見ていたら、これくらいの作業なら自分でできるな。だったら工賃を払うぶん、工具を買えばいいじゃないか、そう思ったんですよね」と、変態ぶり(!?)が顔をのぞかせる。

最近では、DIYという言葉も流行っているが、川端さんの場合はレベルと発想が常軌を逸している。ボディメイクはもちろん、エンジン本体も自身で組み、必要ならメインハーネスやブレーキの配管だって自作する強者だ。そのレベルは、ピアッツァに限れば、チューニングショップ以上と言えるだろう。

このピアッツァも一見普通だが、じっくりと観察すると他車種パーツ流用やワンオフ加工のオンパレード。というよりも純正パーツを探すほうが至難の技といったほうが正しいだろう。例えば、ヒューズボックスはホンダ車(ステップワゴン)のものを流用している。

そしてエンジンは、もともと2.0Lだが、2374ccまで排気量をアップ。エンジンの制御は、モータースポーツでも実績のあるコンピューター「モーテック」を使用する。ちなみにピアッツァ用の配線キットがあるわけではないので、配線関係はすべて自作。

さらにコンピューターセッティングも自分で行っているそうで、以前に同じエンジンで、ブースト圧1.7kg/cm2まで高めることで400psオーバーも実現!ドライ路面でホイルスピンするほど強烈なパワーだったそうだ。
「このクルマはお買い物用で、奥さんも乗るので200psくらいですけどね(笑)」と、控えめに仕上げているそうだ。

さらに驚かされたのがエアコンコンデンサーの位置。普通ならエンジン前方にエアコンコンデンサーとラジエターが並ぶが、水温対策としてエアコンコンデンサーをバンパー下に移設。さらなる冷却性能アップを狙い、フロア面に水平にエアコンコンデンサーを追加しているのだ。こんな奇想天外なモデファイは、チューニングショップでも思いつかないだろう。

「普通のチューニングショップなら、水温対策でエアコンを取っ払っちゃいますよね。でも、街乗りでも使うのでエアコンは必須!」というが、フロア面にエアコンコンデンサーを追加しようとは、普通なら思いつかない発想だ。

ちなみにこの日、川端さんは超巨大なエアコンコンデンサー&電動ファンも持ってきていた。
「デモンストレーション用に持ってきたベンツ用のエアコンコンデンサーです。ベンツ用なんですけど、すごい風量なんですよ!」と笑顔で語る。とにかく、流用できそうなパーツは購入し、試してみる。それが川端さん流のモデファイだ。

足回りに目を移すと、ベンツの18インチホイールとポルシェのブレーキキャリパーが輝く。このホイールを履くためにPCDも112に変更。ちなみにブレーキローターはベンツ用、ブレーキキャリパーはポルシェ・カイエン用だ。
「入るかじゃなく、入れるんです!」と、熱いDIY魂を感じる。

じつは、ブレーキの巨大化はさらに進行中!巨大なベンツ用のカーボン製ブレーキローター(たぶんSLS純正?)と、本物のインディーカー用ブレーキローターも準備しているんだとか!?レーシングカー用のブレーキローターなんてどこで手に入れたのか気になるが、「意外とネットで探すと見つかるもんですよ。あと、購入する人がすくないのか、思った以上に安いんですよ」と、驚きの回答。

インテリアも普通に見えるが、じつはこだわりが満載。運転席まわりは左ハンドル用のパーツに交換され、リヤの内装以外はほぼ手が加えられている。
また、クルマと同じくらいオーディオも好きな川端さん。「往年のサウンドストリーム、幻のSTP480も自慢ですね!リヤにはプリアンプとパワーアンプも積んでいます」と、オーディオマニアぶりが垣間見える。

そんなマニアぶりがさく裂しているのが、このクルマの歴代ナンバープレートのコレクション。
「じつは、ナンバープレートって言えば持って帰れるんですよ!だからラグビーワールドカップやオリンピックのときに特別仕様のナンバープレートに変更して、また戻して、それを記念に集めているんです!」と嬉しそうに並べてくれた。

また、過去に解体した車両のメインキー&コーションプレートも大量に保管。
「これまで解体したクルマのメインキーとコーションプレートも残しています。最初の頃は残していなかったり、次にオーナーがいるクルマは鍵を渡しちゃったりするので、実際に手元にあるのは半分くらいかな?」と驚くばかり。
オーナーズクラブの代表としての布教活動はもちろん、現在では少なくなったピアッツァの再生工場的な役割も果たしているのだ。

ちなみに現在、手元にあるピアッツァは、この白いネロも含めて4台。
「このネロのほかに、持ってきたばかりのフルノーマル車が1台、メインカーのメタノール車が1台、そして現在制作中の12気筒マシンが1台あります」という。
ピアッツァに12気筒エンジンなんてあったかな?と思って詳しく聞くと、なんとBMW・7シリーズに搭載されていた12気筒エンジンをピアッツァに移植中というのだ。

「クルマ好きなら12気筒に憧れますよね!ただ、ランボルギーニやフェラーリ、ベンツのエンジンは大きすぎて入らない。そんなときに偶然見つけたのが7シリーズ。エンジンの寸法を測ったらピアッツァに入りそうじゃん(笑)。というわけで、エンジンマウントを製作して、フェアレディZ(Z32)のマニュアルミッションとドッキング。リヤの足まわりはR33スカイラインのマルチリンクを流用しながら作っています。最終的には、レガシィ純正ツインターボを2セット、4タービン仕様にする予定です!」と、超ド級マシンを製作中というのだから、そのバイタリティと行動力に脱帽するばかり。

「指を指して笑ってもらえるクルマを作っているだけですよ」という川端さん。そのピアッツァ&DIYライフに終わりはなく、これからも爆走し続けるだろう。

(文:三木宏章/撮影:市原浩二)

[ガズー編集部]

愛車広場トップ

MORIZO on the Road