【ハチマルミーティング2020 愛車紹介】不人気さを逆手にとって唯一無二の愛車へと進化を遂げた、カーショップ代表の「専用機」

自分の愛車は「量産機」ではなく「専用機」でありたいと願うクルマ好きは少なくないはず。だからこそ、ドリンクホルダーやステッカーなどの手軽なアイテムからはじまってどんどんカスタマイズが進んでいくのであり、さらにマニアックにその道を突き詰めていくと、その素材も定番車ではなくレアなベース車を求めてしまうというものだ。
ブラックマスクの異名を持つこの1985年式トヨタ・セリカ(AA63)のオーナーもまた、そんな天邪鬼な精神から「専用機」を求めたクルマ好きのひとりだ。
トヨタ・セリカといえば、日本初のスペシャリティカーとして誕生し、国内外様々なモータースポーツでも活躍した伝統の車種。そんなセリカの3世代目として1981年にデビューしたのがこのA60系だ。
しかし同時期にデビューした上位モデルの2代目セリカXX(輸出名スープラ)にその人気を奪われて販売は苦戦。WRCやサファリラリーでは好成績を収めながらも人気が爆発することもなく、ついにはセリカ=XXと認識する人が多数を占めるようになってしまうほど不遇のモデルでもあった。

オーナーさんがそんなセリカに目をつけたのは、今から15年半ほど前のこと。当時AE86でドリフトを楽しんでいたのだが、まわりを見るとどれもおなじような仕様のクルマばかり。どんなにカスタマイズしても、大抵は誰かのクルマと被ってしまっていたという。そんな状況が嫌になってきたある日、ふと思い出したのがブラックフェイスの存在だった。 「中学生の頃に見たヤングオートという雑誌で、族車仕様のブラックフェイスがあったのを思い出したんですよ。XXではなくブラックフェイスをベースにしていたあの唐突感はすごく印象に残っていました。それを思い出して、ブラックフェイスでドリフトしたら面白いんじゃないかって考えて車体を探しはじめたんです」
もちろんドリフトを楽しむのであれば搭載エンジンも重要。その点でもブラックフェイスならAE86とおなじ4A-GEを搭載するFRレイアウトのため問題なし。それまでのノウハウが活かせる車体で、なおかつ他の誰とも被らない最適解だったというわけだ。

しばらくして見つけた車体はボロボロの状態でお値段15万円。ボディの腐食穴などもあることを考えれば、当時の感覚では高くもなく安くもなくといった適正価格だったという。
ボディを夜な夜な板金作業で修復し、ナンバーを取得して公道復帰を果たしたのがおよそ15年前のこと。その後ボディカラーは何度か塗り替えられ、現在のカラーリングはスバル純正色のカーキでペイント。派手さをおさえつつもハチマルにも違和感のない流行りのアースカラーを取り入れることで、現代流にアレンジが加えられているというわけだ。

エンジンはノーマルの4A-GEからすぐに4A-GE+ターボにバージョンアップ。さらにパワーを求めてセリカ(ST-165)に搭載されていた3S-GEに換装。そこからモアパワーを実現するため、新たに180psのMR2(SW20)の3S-GEへとステップアップを重ねてきた。
内部も鍛造品のピストンやコンロッドを組み込み、コンピュータもフルコンに交換。加えて4連スロットルやワンオフエキマニを投入することで210psまでパワーアップを果たしている。
「やっぱりドリフトで使用することを考えるとパワーは必要なんですが、同時に見た目もしっかりとさせたい。だから4連スロットルや自作のエキマニなんかも見せられるように作っています。今後はエンジンルーム内をキレイに作り直していくのが目標ですね」

リンクのフルコンで制御を行うと同時にメーター類も刷新。リンクダッシュディスプレイやスタックのゲージを組み合わせ、機能性とともに見た目もリニューアル。さらにシートはアメリカで人気のステイタス製を組み合わせるなど、現在のカスタムシーンでも目を引くアレンジも加えられている。

また、北米輸出されていたモデルの特徴を活かし、オーバーフェンダーは北米純正パーツをセット。加えて深リムのホイールの奥には、Φ300ローターにスカイラインR33タイプM純正キャリパーを装着。エンジンのパフォーマンスアップに合わせて、ブレーキの性能も高められているというわけだ。

天邪鬼な思いつきからスタートしたブラックマスクのカスタマイズ歴はすでに15年以上。
ここまでのカスタマイズを行いながら、すべて公認を取得し完全ストリート対応の合法仕様として作り込まれているのもポイントだ。
また、進化してきたのは愛車だけではなく、その間にオーナーさん自身も独立してカーショップオーナーへと転身を遂げたという。
人気不人気といった世間の評価だけで判断するのではなく、そのクルマをどこまでカッコよく進化させられるか。このブラックマスクはオーナーさんの飽くなきチャレンジ精神が生み出した、好例と呼ぶにふさわしい1台ではないだろうか。

(テキスト:渡辺大輔 / 写真:平野 陽)

[ガズー編集部]

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