【ハチマルミーティング2020 愛車紹介】ハチマル偏愛家が受け継いだ、中学生時代から知る奇跡のワンオーナー車! 1990年式レクサス・LS400(UCF11)

ハチマルミーティングに参加するオーナーの中には、新車購入からずっと乗り続けている人も少なくない。1台のクルマに尋常ではないほどの愛情を注ぎ続け、メンテやトラブル暦も知り尽くし、そのクルマの歴史の生き証人となっている愛車家たちだ。

しかし年齢とともに、扱いやすくて安全機能の充実したクルマに乗り換えたり、免許を返納してクルマを手放すオーナーも存在する。そんな高齢の方が所有する車体に運良く巡り合い、その歴史を受け継いだのが、このレクサスLS400のオーナーさんだ。

レクサス・LS400は、日本で初代セルシオとして1989年に販売され、折からのバブル景気に後押しされ爆発的ヒットを記録したトヨタのフラッグシップセダン。
レクサス・LSシリーズはそもそも北米モデルとして設計・販売されたため、ボディサイズなどは日本伝統のフラッグシップセダンのクラウンよりも上位に位置づけられていた。豪華な装備やV8 4.0Lエンジンを搭載する余裕の走りは、当時の高級車志向を牽引するモデルだったのだ。
北米からの逆輸入車ということもあり、セルシオとはエンブレムやハンドル位置が異なっているのも特徴だ。

当時はセルシオ人気の高まりを受けディーラーの新車納車待ちを回避し、少しでも早く乗るために逆輸入車を選択するという買い方があったそうで、このLS400もそんな事情で海を渡ってやってきた1台だという。

前述の通り現オーナーは新車購入したファーストオーナーではなく、その個体を譲り受けたセカンドオーナーだ。しかしこのLS400との出会いはすでに30年前に果たしており、時を経て運命の再開を果たし、トントン拍子で受け継ぐこととなったという。

「このLS400は、自分が中学生の頃に近所に住んでいた人が、新車で購入したものなんです。当時から左ハンドルのセルシオとして認識していて、近所だったので眺めに行ったりもしていましたね。その後は自分が引っ越してしまったため、あのLS400がどうなったか知らなかったのですが、昔の家の近所を通った時にこのLS400が当時のナンバーのまま走っているのを見かけたんです、それも何度も。これは運命だと思ってその方の家のインターホンを押しちゃったのが受け継ぐキッカケになりましたね」

いきなりインターホンを押された前オーナーさんからは、嫌がられるかと思いきや、意外ともいえるほど好感触な返答が得られたというから驚きだ。
というのも、納車からすでに30年が経ち、どうしても手放せなかったというこのLS400を、そろそろ卒業したいと考えていた矢先だったというから、奇跡的なタイミング、運命の出会いだったというほかない。
こうして譲り受ける話はすぐに進み、再会から数ヶ月後には手元にやってきたというわけだ。

今では10セルシオもレクサス・LS400も、少なくはなってきたものの中古市場で見かけることもある。しかしそういった中古車ではなく、ワンオーナーで歴史が詰まったクルマであることを証明できる“2桁ナンバー”を受け継いでいるのが、オーナーさんの強いこだわりだ。

ちなみにこのLS400は、前オーナーが「1番いいヤツを」とオーダーした車体。そのため北米モデルとしては希少なエアサスを搭載する前期のファーストロッドなんだとか。この希少性に加え、北米周波数のまま手を加えていないラジオや純正アルミなど、オリジナルが保たれているのはオーナーの心を鷲掴みするポイント。

特にホイールなどはその時々のブームに従って、社外品に交換されてしまう確率も高く、オリジナルを探しても、ネオクラシックな純正ホイールは見つけることも難しくなってきている。無闇にカスタマイズするのではなく、そういったパーツが残されていることも、ワンオーナー車であることに価値を見出す理由ともいえる。

もちろん電動レザーシートやサンルーフなど、当時でいう“フル装備”の豪華仕様。2020年現在も不満のない快適性は、当時の1番いいヤツだからこそというわけだ。

受け継いだ時はJRの線路沿いに長年保管されていたためか、鉄粉によってボディは変色気味だったというが、その汚れを一掃しながら磨き上げ、現在は新車並みのボディコンディションまで復活!
しかし30年、12万マイル(19万km)の走行で足まわりのブッシュにはガタが出はじめているという。そういった部分を含めた安全安心して走らせるためのメンテナンスは、今後の楽しみとして継続的に行っていく予定だとか。

いっぽうで、前オーナーが使い込んで劣化したステアリングやシフトノブは、このクルマの歴史として残しておくことも考えている。
もちろん各部品をリフレッシュすれば新車に近いコンディションへと修復も可能だ。しかし新車を求めるのではなくそのクルマ個々の歴史をひっくるめて楽しむのなら、ちょっとしたダメージもアジへと変化するはず。

2桁ナンバーのワンオーナー車へのこだわりは、もしかするとアートや歴史遺産愛好家にも通じるのかもしれない。

(テキスト:渡辺大輔 / 写真:平野 陽)

[ガズー編集部]