女子力MAXの20代オーナーが、男勝りなランサー エボリューション6に乗る理由
「えっ、この女性が本当にランエボ6のオーナー?」
取材チームの率直な第一印象である。右側のドアからスラリとした足が覗き、美しい女性がクルマから降り立ったとき、本当にこのランサー エボリューション6(以下「ランエボ6」)のオーナーなのかと勘ぐってしまったほどだ。もしかしたら左ハンドル仕様で、助手席から降りたのかもしれないとさえ思った。しかし、ステアリングの位置は明らかに右。ここまで運転してきたのは間違いなく彼女だ。
アイセルブルーという名のボディカラーに暖色系の色が極力抑えられたコーディネート。統一感のあるエアロパーツでセンス良くモディファイされた外観。実に男気のある(こういってはオーナーである彼女に失礼かもしれないが)佇まいなのだ。遠目に見て、このランエボ6のオーナーが女性だと当てられる人は皆無だろう。
いやはや。男は実にこういうギャップに弱い生き物だなと痛感させられた。しかし、そんな邪な感情を寄せ付けないほど、彼女のランエボに対する愛は半端ではない。
運命の出逢いは幼少期に遡る。
小学生のとき、街で偶然見掛けて格好いいと思ったのがランエボ5。まさに一目惚れだった。このときから「将来、必ずランエボに乗ろう」と心に誓ったという。こんなとき、彼女の父親や兄弟がクルマ好きで、その影響で…というのがお決まりのパターンだが、今回は違う。幼少期からクルマを小さな動物に例えていたそうで、誰の影響を受けるわけでもなく自然発生的に興味も持つようになっていった。
そして、運転免許を取得できる年齢になってもランエボ愛は変わらなかった。補足しておくと、彼女にとって「愛しのランエボ」とは、エボ5からトミーマキネン仕様(通称6.5)までと、ピンポイントな点も興味深い。彼女にとって「運転免許を取得する=愛しのランエボに乗ること」なのだ。しかし彼女の母親からはAT限定免許にしなさいと言われてしまう。そこで彼女は、こっそりMT免許の限定解除を行い、着実にランエボオーナーへと歩みを進めていったのだ。
18才になり、ついに念願のランエボ探しがスタートした。彼女はランエボ5よりも、より進化を遂げた6を狙った。しかし、なかなかお眼鏡に適うクルマが見つからない。理想のランエボ6探しは実に2年間にも及んだ。ときには住まいである東京から日帰りで遠方まで観に行った。チェックしたランエボ6は実に4~50台になった。それでも気に入った個体が見つからなかったのだ。
しかし、現在の愛車となっているランエボ6に試乗した瞬間「ビビッとくるもの」があったという。理屈ではなくフィーリングを重視するあたりも、女性らしい決め方なのかもしれない。同行していたクルマに詳しい友人のお墨付きを得たことで、その日のうちに契約書にサインすることとなった。
ついに念願のランエボオーナーになったときには20才になっていた。彼女がランエボに乗ることに対して懐疑的な母親と兄に対して、理解を示し応援してくれたのが父親だった。幼少期を含め、父親に対して初めて通したワガママが「私、ランエボに乗りたい!」だったのだ。こうして念願のランエボ6を手に入れたことで、10代から60代まで、日本全国にランエボ乗りの友人ができた。ランエボとは事実上のライバル関係にあるインプレッサ乗りの友人もいるそうだ。
そんな彼女のランエボに対する情熱は、並の男では太刀打ちできないだろう。カナドール製カーボンミラーにはじまり、KS-AUTO製バンパー、VARIS製のフェンダー、フロントのリップスポイラーおよびサイドステップはワンオフ品。リアウイングのセンター部分はBOZZ SPEED製。足元はTEINの車高調と鈍く光るホイールはWedsSport製…等々。随所にカーボンパーツが奢られている。これらはすべて彼女自身が吟味し、一気にここまで仕上げている。もちろん構造変更済みだ。柿本製マフラーは取材日当日に彼女自身が友人のサポートを受けながらクルマの下に潜り込み、交換したのだという。
所有して6年目に入った彼女のランエボ6、ワンオーナー車を購入したときには6.9万キロで、現在は11万キロを超えた。1999年に発表されたランエボ6も、気づけば17年の時が経っている。愛しのランエボが古いクルマに見られたくないとの想いから細部に至るまでモディファイを妥協しなかった結果、現役マシン特有のオーラが全身からあふれ出ている。
経年変化で退色しつつある赤いブレンボキャリパー以外は暖色系の色味を抑えることで、統一感を出している。三菱のスリーダイヤの赤もカーボン調のアクセントで落ち着いた雰囲気を放つ。しかしよく見ていくと、リアのトランク部分にはハートマークのステッカーが貼られているし、運転するときに履くという靴もピンク色だ。車内も、追加の計器類がきれいに収められ、ケーブルが極力見えないように配慮されている点など、女性オーナーならではの細部まで気配りの行き届いた清潔感のあふれるものだ。しかし、MOMO製「DRIFTING」という名のディープコーンステアリングや、RALLIART製シフトノブ、スパルコ製のフルバケットシートなど、いずれも硬派なチョイスばかりである。
彼女にとって、このランエボ6はまだまだ発展途上だという。ボンネットもカーボン製に交換したいし、GTウィングだって装着したい。将来、結婚して子どもが生まれ、このランエボ6が動かなくなっても側に置いておきたいと語る。もし何らかの事情でランエボ6を手放すことになってしまったら、この種のクルマには乗らないつもりのようだ。
きっと、彼女は惚れ込んだものにとことん一途なのだろう。そんな彼女に見初められたこのランエボ6は幸せだ。どこかでアイセルブルーという名のボディカラーをまとった、硬派なランエボ6に出会うかもしれない。フルバケットシートに収まり、ステアリングを握る彼女は実にセクシーだ。そんな彼女が運転席から降りてきたら、見事そのギャップにやられてしまうに違いない。繰り返すが、男はギャップに弱い生き物なのだ。
(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
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