次世代へ継承すべき名車、日産・スカイラインGT-R V-specII(BNR34型)と暮らす、3人目のオーナーが抱く想いとは?
往年の名車たちが時間を超えて存在していられるのは「このクルマを次世代へ継承しなければ」という使命感を持ったオーナーたちに守られてきたからこそだと思う。こうして、人々に愛されてきたクルマたちはみな、生命が吹き込まれたかのようなオーラを感じる。まるで、息遣いが聞こえるかのような存在感を放っているのだ。
ここに1台のスポーツカーが佇んでいる。日産・スカイラインGT-R V-specII (BNR34型、以下GT-R)は誰もが認める「名車」だ。未来へ受け継がれるべき1台だろう。名機「RB26DETT」を搭載した「最後のスカイラインGT-R」として1999年に登場。2002年に生産終了してから15年の歳月が流れているが、今もなお熱狂的な人気を誇る。
今回は、このGT-Rのオーナーになったばかりという男性を紹介したい。サーキット走行を好む父親を見て育った彼は、自然とファーストカーにホンダ・シビックタイプR(EK9型)を選び、サーキットを走りはじめる。その後、ホンダ・S2000、日産・シルビア(S15型)、日産・スカイラインGT-R(R32型およびR34型)と、スポーツモデルばかりを乗り継いできた。
現在は、このGT-Rと、オーナーの好みのモディファイを施したアウディ・TTSとともに暮らしている。スポーツ走行をメインとしたカーライフを送ってきたオーナーだが、このGT-Rだけは保管場所にも気を配り、特別の愛情を注いでいるという。今回は、そんなオーナーとGT-Rのカーライフにフォーカスしてみたい。
「このGT-Rは、2002年式の最終型となるV-specII、ボディカラーはベイサイドブルーです。納車してまだ2ヶ月なんですよ。オドメーターは3万キロ台で、新車同様の個体です。実は、以前にもR32とR34のGT-Rに乗っていたのですが、RBエンジン独特のサウンドや加速感が忘れられず、また手に入れたいという気持ちが抑えられなくなってしまったんです。もう一度乗ると決めてからは、売り物があると、時間を見つけては全国各地へ実車確認に行きました。しかし、錆が酷かったり、程度のよくない個体があまりに多かったんです。それでも、根気良く探した甲斐があって、ついにこのGT-Rと巡り会えました。オートオークションの査定ランクでも新車並みの評価で、もちろん無事故車です。私で3オーナー目だったのですが、モールや内装も色褪せがなく、しかも二人のオーナーが残した整備記録簿が売却される寸前まで残っていました。歴代のオーナーにずっと大切にされてきた愛情を感じましたね」。
写真からも伝わるかもしれないが、新車のように輝く車体は「GT-Rだけが持つオーラ」を一層強く感じさせる。オーナーでさえも触れるのを憚られるような素晴らしいコンディションだ。納車されてから間もないが、所有してからの心境の変化をオーナーに尋ねてみた。
「サーキット走行が好きですが、このGT-Rで走ることは考えていません。できる限り、このコンディションを維持したいと考えています。なるべく雨の日には乗らないようにしていますし、飛び石を避けるためにトラックの後ろは走りません。毎回、乗った後には軽く水洗いをしています。時間がないときでも、ホイールだけは必ず洗いますね」。
このGT-Rには、走りを楽しむオーナーらしく多少のモディファイは施してあるものの、純正加工品およびNISMO製のパーツに統一されている。エクステリアはNISMO製のフルエアロ。フロントにはNISMO R34GT-R Z-tuneのバンパーおよびワイドフェンダーを装着しているほか、リアスポイラーも純正のままで、さりげなくまとめられた「大人向けの仕様」だ。漆黒のLM GT4 OMORI FACTORY SPECマシニングロゴバージョンのアルミホイールから覗くbremboの6POTキャリパーが、アクセントにもなっている。
「いかにもチューニングカーという感じが好きではなく、さりげなく手を入れつつもオリジナルを大切にしていることが伝わるような仕様をめざしています。例えば、サイドウインカーは、少しだけスモークのかかったNISMO製のものに替えてみました。リアウィンドウには一切フィルムを貼っていませんが、本当は内装を守るために、UV加工された薄い色のものを貼りたいですね。UV加工されたフィルムを貼るだけでエアコンの効きも良くなりますし」。
このGT-Rのエンジンは、大森(東京都大田区)にあるNISMOファクトリーでメンテナンスされており、純正タービン加工で最大出力400馬力を実現、さらにTOMEI製ポンカム TYPE-Rも組み込まれているという。さらにR35用の純正イグニッションコイルを流用、燃圧レギュレーターとインジェクター容量の調整などの点火系チューンも、一通り行っているという。インタークーラーは、交換しているように見えるが、実は純正品で、パイピングのみHKS製のものに、マフラーはTRUST製のフルチタンをチョイスしたという。
この年代のGT-Rは、最終型でも生産終了してから15年もの歳月が流れている。通常であれば、そろそろ部品の欠品が出てきてもおかしくない状況だ。実際はどうなのだろうか。
「既に部品の欠品がありますね。例えば『ドアの内張り』がそうです。前のオーナーがドアのパネルに少し穴を開け、社外品のスピーカーを貼りつけていたのが好みではなかったので、元に戻すために内張りを購入しようとしたところ、欠品が判明しました。それから、メーターも同様ですね。私が購入したもので“ラス1(最後の1個)”でした。NISMOに確認すると、バックオーダーになっていないうえに再入荷も未定だったので、おそらく生産しなくなるのでしょう。R32の部品は再販されますから、R33・R34もそのうちされるような噂はありますが、実際はどうなのでしょうか?実現してもらえるとありがたいのですが…」。
部品再販の話はよく見聞きする。多くのオーナーからもよく挙がる話題のひとつなのだが、今回は具体的にどのような部品が必要なのか、オーナーに尋ねてみた。
「例えばエンジンハーネスですね。年式的にもそろそろ劣化してきているモノだと思いますので。メーカーさんには『走れる部品』を最低限リリースしていただきたいです。特にスポーツカーは走るための1台であり、一生モノの1台でもありますから」。
最後に、このGT-Rと今後どう過ごしていきたいかを伺った。
「一生モノのクルマだと思っていますので、コンディションを維持して、大切に乗りたいと思います」。
絶版車を含む「旧車」に乗ることは「クルマを預かること」という考え方があるそうだ。現オーナーを含む3人のオーナーを渡り歩いてきたこの美しいGT-Rは、もしかすると「次世代へ継承する」という星の下に生まれた個体なのかもしれない。インタビューを行いながら、これからもGT-Rと濃密な時間を楽しんでほしいと、心から願った。
【撮影地:晴海埠頭周辺(東京都中央区)】
(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
[ガズー編集部]
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