納車当時は7歳。現在28歳のオーナーが父から譲り受けた、33ナンバーの日産・ステージア25X(WGC34)

小さい頃、父親が所有するクルマの運転席は、まさに「聖域」だったように思う。

自由にクルマを操り、家族を乗せてあらゆるところへ連れて行ってくれる。自分も大人になったら憧れのクルマを手に入れて、気の赴くままに出掛けてみたいと思った人も少なくないだろう。

だが、父親が所有していた愛車のことは覚えていても、自分が大人になった時点で未だに所有しているというケースはかなりレアかもしれない。今回は、オーナー自身が少年時代に納車され、大人になって父親から譲り受けたクルマが愛車だという「かなりレア」なケースを取材することができた。

「このクルマは、1997年式日産・ステージア25X(以下、ステージア)です。納車されてから21年が経ちました。この個体は、私が7歳のときに新車で納車されたクルマそのものなんです。現在、私は28歳になりますが、4年前に父親からステージアを譲り受け、現在は私の愛車となっています」。

オーナーが所有するステージアがデビューしたのは1996年。日本でステーションワゴンが人気となった時代に誕生したクルマだ。ステージアのボディサイズは、全長×全幅×全高:4800x1755x1490mm。「RB25DE」と呼ばれる、排気量2498cc、直列6気筒DOHCエンジンの最大出力は190馬力を誇る。後に、R32型スカイラインGT-Rにも搭載された「RB26DETT」と呼ばれる、排気量2568cc、最大出力280馬力、直列6気筒DOHCツインターボエンジンが搭載された「260RS」という名のグレード(オーテックバージョンの特別仕様車)も設定された。

前オーナーにあたる父親は、どのような経緯でステージアを手に入れたのだろうか?

「ステージアを手に入れる前は、トヨタ・カルディナに乗っていました。私がクルマ好きになった原体験は、全日本ツーリングカー選手権で大活躍した日産スカイラインGT-R(BNR32型)なんです。そのGT-Rと同じRB型のエンジンを搭載したステーションワゴンであるステージアの存在を知り、父親をそそのかして、半ば強引に日産ディーラーに連れて行ってもらいました(笑)。すると思ったよりも良い条件が提示され、トントン拍子にステージアを購入することになったんです。私は、当時の最上級グレードであるRS FOUR Vを推したんですが、4WDだったためにFRが好きな父親は25Xを選びました。このとき選んだメーカーオプションは、サンルーフとリアスポイラーです。ボディカラーは、親子ともにソニックシルバーメタリックがいいだろうということで、割とすんなり決まりましたね(笑)」。

父親の愛車としてオーナーの家族とともに過ごしてきたステージアだったが、やがて乗り換えの時期が訪れる。

「納車から16年が経過したタイミングで、別のクルマに乗り換えることになったんです。このまま下取りに出したとしても良い条件が出るとは限りませんし、私自身、納車当時にステージアと2ショット写真を撮ってもらったほど思い入れのあるクルマでしたから、譲り受けることにしたんです。それが今から4年前になります。今では貴重な『33ナンバー』もそのまま引き継ぎました」。

納車当時は7歳だったオーナーも、父親から譲り受けた時点で24歳になっていた。まさにこのステージアは、オーナーの成長とともに同じ時代を歩んできた家族同然の存在だ。譲り受けてから4年、オーナーに名義が移った時点で、現在の仕様になったのだろうか?

「エアロは『DAYZ』という、当時のオプションのエアロなんです。グレードは25Xですが、フロントグリルやバンパーを交換して、外観はRS FOUR V仕様に仕上げてあります。マフラーはフジツボ製のWagolis、その他、ステージアRS専用のタワーバー、ダウンサスを組み込んであります。ホイールは何度か入れ替えましたが、日産スカイラインクーペ(V35型)の純正品に落ち着きました。内装は、知り合いの解体屋にあったステージアから移植したオリーブグレーのレザーシートを総移植してあります。あとは、何といっても日産・グロリア(Y33型)のバーチャルビジョンメーターを移植したのがこだわりですね」。

オーナーのステージアは、純正品を中心にモディファイされているため、決して主張が強いわけではない。しかし、とても21年前に造られたクルマとは思えないほどのコンディションを保っており、惜しみない愛情が注がれた1台であることは見る人が見れば一目瞭然だろう。そして、細部に至るまでオーナーのこだわりが感じられる。これも深い愛着が成せる業といえるだろう。

「1980〜1990年代の日産の高級車にとって必須アイテムだった『サンルーフ・本革シート・デジパネ』に憧れがありました。そして、子どもの頃にテレビCMで観た日産グロリア(Y33型)のメーターの映像が強烈で、このメーターが欲しいというだけの理由でグロリアを買おうとしたこともありましたよ(笑)」。

オーナーは、もう1台の日産車を所有している。日産・レパード(F31型)だ。以前、こちらのレパードも取材させていただいたが、このクルマに対する愛情とこだわりもすさまじいものがあった。

愛車との出会いは14歳、20代なのに日産 レパードを愛車にした理由とは?
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レパードを手に入れたきっかけはいうまでもなく「あぶない刑事」の影響だ。少年時代に憧れた存在が愛車となり、プラモデルのパッケージに起用され、あぶない刑事のヒストリーブックにも掲載されたという。取材時に着用していた革ジャンも、「はみだし刑事情熱系」という刑事ドラマで、柴田恭兵が着用していたものの復刻版だ。しかし、これは普段用で、当時物の革ジャンはコレクションとして大切に保管しているそうだ。さらに、シリーズごとに異なる革ジャンも所有し、手に入らないものは自ら作りあげてしまうほどのこだわりようだ。

このドラマのパート1の放送期間は、1996年10月〜1997年3月だった。まさに、オーナーが父親にステージアを勧めていた時期と重なる。オーナーにとって、この時代は、現在のルーツとなった原体験と巡り会った時期でもあったのだろうか。

憧れの存在だったレパードと、父親から譲り受けたステージア。この2台とは今後どのように接していくのだろうか?

「それぞれのクルマを通じて知り合った友人・知人もいますし、2台とも手放せないほど思い入れのある存在です。レパードは2ドアクーペということで用途が限定されますが、ステージアはステーションワゴンという性格上、たくさんの荷物が積めますし、移動の足としても使える良さがありますね。トラブルや部品の欠品がほとんどないですし、現代のクルマと同じような感覚で乗れることも魅力です。33ナンバーのまま維持していきたいですし、この仕様がとても気に入っているので、現状を維持したまま乗り続けたいです。『はみだし刑事情熱系』で柴田恭兵さんが劇中で乗っていた、日産・スカイライン25GT-Xターボ(R34型)も気になりますが、さすがに3台体制は厳しいかもしれないですね…」。

一度手放したクルマを買い戻すことは容易ではない。ほぼ不可能と考えるのが自然だ。オーナーにとって、33ナンバーを掲げたこのステージアは家族同然であり、唯一無二の存在のはずだ。多くのステージアが街中から姿を消しつつある中、オーナーの個体は確実に次の世代へと受け継がれていくのではないかと思う。父親から譲り受けたこのクルマが、いつかオーナーの子どもへと受け継がれていくことを切に願うばかりだ。

【撮影地:代官山・恵比寿周辺(東京都渋谷区)、六本木周辺(東京都港区)他】

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]