トヨタMR2(SW20)をガールズ&パンツァー仕様の痛車に仕上げた、20代オーナーのカーライフとは?
痛車というと、どのようなクルマやオーナー像をイメージするだろうか。連想するものは人それぞれだろうが、愛車に対する思い入れやこだわりは半端ではない。中にはイベントが開催されるたびにボディーラッピングを一新させる強者もいるという。
元々はフルノーマルだったトヨタ・MR2(SW20型)をベースに、アニメ「ガールズ&パンツァー」仕様の痛車に仕上げた20代の若きオーナーに取材を試みた。
オーナーの年齢は24才。クルマに興味を持ったのはいつ頃だったのか訪ねてみた。
「中学生のときにテレビで観た全日本GT選手権が、クルマの格好良さに気づいたきっかけです。中でもエッソウルトラフロー スープラに魅了されましたね。僕もサーキットを走ってみたい。そう思ってカートを始めたんです。」
オーナーがカートデビューしたのは14歳のとき。高校卒業後は、自動車整備の専門校へ入学し、整備科を経てモータースポーツ科へ進級したほどのめり込んだ。学生時代は自宅にあったダイハツ・ミラを運転して通学し、学校が所有しているクルマでツインリンクもてぎや筑波サーキットを走るようになった。まさにクルマ漬けの日々を送ってきたオーナーの愛車遍歴は、スズキ・ワゴンRやホンダ・フィットを経て、現在のトヨタ・MR2(以下、MR2)に至る。
「レーシングカートに近い感覚で運転できるクルマを探していました。こうして手に入れたのが現在のMR2です。改造された個体が多い中で、このクルマはフルノーマル。自分でメンテナンスやモディファイをしたかったので、実車を見て即決しました」。オーナーは自動車整備の専門校を卒業した後、とあるディーラーでメカニックとして働いている。つまり、クルマの整備に関するプロフェッショナルだ。
自身初の2シータークーペを手に入れてからまだ1年半だということだが、現在のような仕様になるまでにはどのような経緯があったのだろうか。
外装は、納車後にマツダ・RX-7(FD3S/5型)に採用されていたイノセントブルーマイカに全塗装したという。奇しくも、オーナーのMR2も5型だ。ライセンスランプはLEDに交換している。足廻りはTEIN製MONO SPORTに交換され、ホイールはエンケイ製RPF1をチョイス。フロントは16インチ、リアは17インチとした。内装は、ステアリングがMOMO製RACE(350φ)に交換され、さらにWORKSBELL製のRAPFIXⅡを装着することで脱着可能にしている。
そしてこのボディーラッピングだが、2015年に公開された映画「ガールズ&パンツァー 劇場版」がモチーフになっているという。ガールズ&パンツァー(通称「ガルパン」)は、女子高生が華道や茶道のように乙女の嗜みのひとつとして、戦車を使用した武道である「戦車道」を極めるため、戦車道全国大会出場を目指すというストーリーが人気を博したアニメだ。2012年にテレビで放映され、この映画はその続編という設定になっている。
「正直に言うと、当初は世間体を気にして、劇中のキャラクターはラッピングしていませんでした。しかし、2015年に劇場版が公開されたときに、その世界観を自分のMR2でも表現してみたいと思ったんです」。しかし、オーナーはクルマのプロフェッショナルであっても、デザインに関しては素人である。どのような流れでこのデザインに仕上げたのだろうか。
「まず、インターネットを通じて自分が好きな雰囲気のイラストを書いている方に連絡を取り、自分の愛車を痛車にしたいということを伝えました。大まかなデザインは自分で考えて採寸し、MR2のサイズに合うように調整しました」。ボディーラッピングはオーナーとその仲間たちが施工しているというから驚きだ。メカニックであるオーナーにとって、ボディーラッピングの施工は専門外のはずだが、その道のプロに匹敵する仕上がりとなった。
「ガルパンは大洗(茨城県)が作品の舞台であり、ここには全国からファンが集まってきます。私もMR2で行きますが、この仕様にしてから声を掛けられる機会が増えました。痛車にしたからこそ知り合えた人たちとの交流を楽しんでいます」。オーナーにとってこのMR2は、走りを楽しむだけでなく、コミュニケーションツールとして重要な役割を果たしているのだ。
「見た目は痛車として仕上げていますが、中学生のときに衝撃を受けた、全日本GT選手権マシンであるエッソウルトラフロー スープラのようなレーシングカーの雰囲気も感じられるように意識しています。今後は自分の原点でもある走りも追求していきたいですね」と語る。
学生時代は、サーキットを走るとしてもフリー走行がメインだった。本格的にレースに参戦するには膨大な費用が掛かるからだ。社会人として安定した収入が得られるようになっただけでなく、自分の技術を活かしてメンテナンスやモディファイに掛かるコストも大幅に削減できる。いずれは、ツインリンクもてぎや筑波サーキットで開催されているレースに参戦し、タイムアタックで上位に食い込みたいと語る。
「現在の仕様では筑波サーキット(TC2000)のラップタイムが1分10秒を切ることができないのです。そこで今後は、より自分のドライビングテクニックに磨きを掛け、MR2のセッティングを煮詰めてタイムを縮めていきたいです。目標は1分を切ることと、レースでの上位入賞です」と熱い思いを語ってくれた。
ガールズ&パンツァー 劇場版仕様のラッピングが施された痛車仕様のMR2は、その見た目からは想像がつかないほど硬派なオーナーが運転している。その走りは実にスムーズだ。オーナーが本気を出したら、下手なドライバーは歯が立たないだろう。
ガルパン仕様のMR2とオーナーの蜜月はまだ始まったばかりだ。やがて日本各地のサーキットでこのMR2が大暴れする日も近い予感がする取材となった。
(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
[ガズー編集部]
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