「極上車」の1990年式トヨタ・スープラ2.0 GTツインターボ エアロトップ エレクトロニクス仕様車 ワイドボディ(GA70H型)を手に入れたオーナーが、あえて普段使いをする理由
去る5月17日、ついにトヨタ・スープラが復活した。実に17年ぶりの復活だ。クルマの未来に光が差し込んだかのような感覚をおぼえた。
今回登場するのは、まるで新車のようなコンディションを誇る1990年式トヨタ・スープラ(GA70H型。以下、スープラ)と暮らす38歳の男性オーナーだ。会社員からフリーランスとして独立。現在は、法人化して社員を抱えている会社の代表であり、2人の女の子の父親でもある。
「問題解決やリサーチが好きなので、それが誰かの役に立ち、生産性や品質の向上に繋がる仕事になっていることにやり甲斐を感じています。今の仕事は好きですが、本当は人の役に立てることを仕事にできていることがうれしいのかもしれません。ライフワークになっていると思っています」
と、仕事への想いを語るオーナー。彼はこのクルマを「普段使い」し、家族も乗せてドライブを楽しんでいるそうだ。今までインタビューを行ってきたなかで、旧車オーナーの多くが、他に「足車」を所有してコンディションを維持していた。しかしオーナーは、ファミリーカーという選択肢もあった中、あえてスポーツカーを選んだのだ。そのこだわりに強く惹かれて、話を伺ってみたくなった。
トヨタ・スープラ(A70型)は、セリカXXの後継モデルとして、1986年にデビューした。それまで北米で使われていた「スープラ」という名称は、これを機に統一されている。愛称は「70(ナナマル)スープラ」と呼ばれ、今も多くのクルマ好きに愛される1台だ。ボディサイズは、全長×全幅×全高:4620×1745×1300mm。駆動方式はFRだ。直列6気筒DOHCエンジン「1G-GTEU」エンジンの最高出力は、210馬力を誇った。
まずはオーナーの「原体験」を尋ねてみた。クルマが好きになったきっかけは?
「父親がスーパーカー世代なので、スタイル的には『ルマンカー』、『マツダ・787』といった『速いスポーツカー』というイメージが植え付けられているようです。そして、スーパーカーにはリトラクタブルヘッドライトのクルマが多かったので、自然と好きになっていたんだと思います。それから、中学生の頃にプレイステーションが発売されて『グランツーリスモ』にハマったのも好きになった要因のひとつかもしれません。そのときにRX-7やNSXなどのリトラクタブルヘッドライトの日本車が好きになりました。当時は『頭文字D』も流行っていましたが、それほど興味はなかったんです。そのため、『速く走る』や『MTでなければならない』といったこだわりは、今も特にありません」
では「クルマ」に乗ろうと思った理由は?
「実は、スープラが初めてのマイカーなんです。自宅周辺は交通の便が良く、クルマを持たなくても生活は快適でした。その状況であえて乗ろうと思ったのは、やはり家庭を持ったことが大きいです。自分が小さい頃に、親に車に乗せてもらって色々なところへ行った思い出があります。自分が親となった今、子供を色々な場所へ連れて行きたいと思っています。また、クルマを所有することで、仕事のモチベーションも、より向上するのではと考えました」
そんなオーナーが、このスープラに乗り始めて約1年が経つ。1990年式の「70型スープラ・前期型・最終モデル」となる貴重な個体だ。グレードは「2.0 GTツインターボ エアロトップ エレクトロニクス仕様車 ワイドボディ」。ルーフパネルが外れ、オープンエアーを楽しめる仕様となっている。オドメーターは約8万キロ、現オーナーが手に入れてからの実走行距離は約1万5000キロだという。
他にも、前オーナーによってモディファイが施してあるそうで、車内にはターボタイマー・ブースト計・電圧計・湿度計が取り付けられている。エンジンルームにはストラットタワーバー。マフラーは可変電動マフラーに変更されている。オーナーの手が加えられたのはエンブレム交換だけとごくわずかだ。
「弄りたいという欲はなくて、メンテナンスをひとつひとつ心がけて、故障も早めの発見・対応をして、とにかく良いコンディションをキープしたいんです。ただ、ユーティリティとしてのクルマを優先するので『残すことの美学』よりも、新しいものを取り入れていいと思っています。そのため、購入時に社外品のキーレスが付いていたり、純正デッキがナビに付け替えられていたことは個人的に良かったと思っています。内装も、多少であれば雰囲気が変わってもいいと思っています」
スープラを選んだ理由は?
「リトラクタブルヘッドライトのクルマの候補として、最初はRX-7も候補にあったのですが、ロータリーエンジンは、私のような素人が維持するのは大変だろうかと思い、70系のスープラに決めました。後部座席があることも大きなポイントです。子どもが小さいうちなら、家族全員で乗れるだろうと思ったからです」
この個体との出会いは?
「スープラ専門店の公式サイトや中古車サイトを探していたとき、偶然この個体がヒットしたんです。前のオーナーが10年間、屋根のある場所で大切に保管していたそうです。あまりにも綺麗だったことと、自分にMTとATにこだわりがないこと、そしてボディカラーは白がいいという妻の希望で、実車を見てほぼ即決でした。エアロトップを見て『あ、これ外れるんだ』と思ったとき、オープンカーの雰囲気が楽しめることも分かったので、まさに理想的な個体が手に入ったと感じられました。納車時は自走で帰ることを楽しみにしていたので、叶えられてうれしかったです。もし、この型の新車を手に入れることができたとしても、私はこのグレードを選ぶと思います」
購入当時、オーナーの奥様はどんな思いを抱いていたのだろうか?
「荷物が置けない部分は気になったようでしたが、カッコいいと言ってくれました。荷物の問題はリアハッチを開ければ積載できますし、ベビーカーも載せられることも確認しました。スープラって意外と実用性があるんですね。それに、2ドアなので、後部座席からドアを開けることが困難なため、子供が勝手にドアや窓を開ける心配もない点等、妻の評判もいいですよ」
個体との縁に加えて奥様の理解も深かったことが、購入を後押ししたのかもしれない。ここで、スープラの大まかな年間維持費や、部品の再生産についての思いを伺った。
「自動車税は年式もあって4万5400円かかっています。プラスしてガソリンが月に3万5000円で、年間で42万円。オイル交換が1回6000円で年間4回交換して2万4000円。保険料が年間で6万3000円かかります。合計すると、年間でだいたい60万弱かかる計算になりますね。ただ、購入後の保証時点で不具合を解決し、乗り始めてまだ1年足らずですので、現在は修理や部品調達を迫られてはいません。今後、どのような修理が発生するかはわからないですが、経験談やオークションなどを見る限り、部品は少なそうなので苦労するでしょうね。メーカーには、部品の再生産で利益の出る仕組みづくりを考えてほしいです。例えば、プロダクトの生産価格が違うため、あまり比較はできませんが、ソニーミュージックエンターテイメントがやっていたCD再販の要望が一定数に到達したら再生産するとか、汎用性の高い設計にして、複数車種に対応可能な部品を開発するなどを希望します。IT関連の仕事をしている者からの視点ですが、現代は想像以上に、民意を簡単に集約できると思います。古いクルマのオーナーに対して、統一した何らかのインターフェースを提供するといいかもしれません」
スープラに乗って、実際に「やってみたこと」は?
「納車して1ヶ月後、佐賀県まで旅をしました。行きは滋賀・広島で1泊ずつしましたが、帰路は佐賀から約1300km走行して、一気に帰ってきました」
オーナーは納車後まもなく、かなりアクティブに楽しんだようだ。では、乗り始めてからの自身の変化、または周囲の変化は感じているのだろうか?
「最初は、古い車なので不安もありましたが、自分なりに知識を身に着けていくうちに、よりクルマという存在に魅了されましたし、カーライフが楽しくなりました。ガソリンスタンドのスタッフに声をかけられたりと、注目される機会も増えましたね。エアロトップを外したときは特に見られます(笑)。先日、甥っ子を乗せて走ったんですが、エアロトップを外すと凄く喜んでくれました。あとは、大切に乗りたいという意識が、自然と働きます。例えば、雨に濡れるたびにボディを拭いたり、仕事へ行く前にわざわざ眺めたりします。好きなクルマに乗っているという充足感に満たされるんですよ」
クルマ好きにさせた張本人である、お父様はどのようなリアクションを?
「スープラを実際に運転したんですけど『こんな燃費が悪いのに乗るなよ』と言いながら、楽しそうにしていました(笑)。私が小さかった頃、ちょうどソアラやスープラが人気だったので、本当は乗りたかったんだと思います。現実的にはファミリーカーを選ぶことになったのかもしれないですね」
将来、子どもたちには、このスープラを乗り継いでほしい?
「2人とも女の子ということもあって、クルマに興味を持ったり、乗りたいと言うかはわかりませんが、彼女たちには『将来に必要なことを自分で選択する力』を身につけてほしいと日々願っています。そのひとつとして、彼女たちが望んでスープラを乗り継いでくれるのはうれしいですし、父親が大切にしていたという記憶も、これから残していきたいとは思っています」
最後に、今後愛車とどう接していきたいかを伺った。
「エアロトップは、なるべく外して乗りたいと思います。実は雨漏りしやすくなるため、ショップからはやめたほうがいいと忠告されているのですが、物理的には密閉されればいいと思っているので手段はあると思っています。あくまで普段使いにこだわりたい。以前、豊田章男社長のトークショーを見に行ったことがあるんですけど、そのときに『プロダクトとして“愛”がつく工業製品はクルマ以外にない』といった趣旨の内容があり、感銘を受けました。できる限り愛情を注いであげたいですね。そして、さらに仕事を頑張っていこうと気合いが入ります(笑)」
オーナーにとっての「愛車」とは、家族への「愛」と、仕事への「愛」も有しているのかもしれない。スープラとの生活は始まったばかりだが、「家族の一員」として可愛がられるのがイメージできるようだった。今後もぜひ、愛車との近況を聞かせてほしい。
(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
[ガズー編集部]
【愛車紹介】トヨタ・スープラ
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