探し続けて2年、幻のFRジムニーが嫁いできた!2001年式スズキ・ジムニー J2(JB23W型)
2018年に発売された日本車のなかでもっとも注目を集めたのは、20年振りにフルモデルチェンジされた新型スズキ・ジムニー(JB64W型)ではなにだろうか。
7月に発売され、ようやく街中でも見掛ける機会が増えつつある新型ジムニーだが、現在でも相当数のバックオーダーを抱えている(先日、メーカーから正式に増産のアナウンスがあった)。ラダーフレームとリジットアクスルという成り立ちを踏襲しつつ、熱狂的なジムニーファンだけでなく、多くのクルマ好きの琴線に触れたモデルであることは間違いなさそうだ。
ジムニーの魅力のひとつに挙げられるのは、悪路における優れた走破性だろう。そのための身支度として、駆動方式は必然的に4WDとなる。そんなジムニーにも2WD・FRの駆動方式を採用したモデルがある。今回は、そんなレアなジムニーを2年間も探し続け、ようやく手に入れたオーナーを紹介したい。
「このクルマは、2001年式スズキ・ジムニー J2(JB23W型/以下、ジムニーJ2)です。実は、2年ほど探し続けてようやく手に入れることができたモデルです。現在、オドメーターは約17万キロあたりを刻んでいます。私が手に入れてからまだ1ヶ月ほどですが、既に1000キロ以上走りましたよ」
1970年に誕生して以来、世界192カ国で285万台も販売されたジムニー。スズキのみならず、もはや日本を代表するクルマの1台だろう。先代モデルにあたるJB23W型のジムニーは3代目にあたり、1998年から2018年まで実に20年ものあいだ生産された超ロングセラーモデルだ。そのなかでジムニーJ2は、およそ1年間しか販売されなかった事実上の「幻のモデル」ともいえる。短命のモデルゆえ、その存在すら知らなかったクルマ好きがいるかもしれない。
JB23W型ジムニーには、女性をターゲットにした「ジムニーL」というモデルが存在した。こちらのモデルも駆動方式はFR、その特別仕様車として2001年に追加されたのがジムニーJ2というわけだ。ジムニーJ2には、専用のボンネットフードやフロントバンパー・フロントグリル・専用シート表皮・ドアトリムクロス・15インチホワイトホイール(4WDモデルに装着されている16インチから15インチに変更されている)などが与えられた。また、4WDモデルよりも車高が35mm低くなり、乗降性を向上させている。ちなみに、オーナーが手に入れた個体は、専用のボディカラー「ミスティブルー」にペイントされている。
ジムニーJ2のボディサイズは、全長×全幅×全高:3400×1480×1650mm。「K6A型」と呼ばれる、排気量658cc、直列4気筒DOHCエンジンが搭載され、最高出力は64馬力を誇る。なお、エンジンについては4WDモデルのジムニーと共通である。
そんな、ジムニーとしては異色のモデルである「J2」を敢えて手に入れた理由から伺ってみることにした。
「周囲にジムニー乗りの友人が何人もいて、『いつか俺もジムニーを買うよ。でも、変わったモデルを選ぶから』と宣言していたんです。今回、ようやく有言実行できましたね。実は、この個体を手に入れる少し前、白いジムニーを購入する夢を見たんです。ボディカラーこそ違いますが、購入した金額もほぼ同じでした。今思えば、あれは予知夢だったのかもしれないですね(笑)」
2年ほど探してようやく手に入れたジムニーJ2、どのようにして購入できたのだろうか?
「実はヤフオク(YAHOO!オークション)に出品されていた個体なんです。私が住んでいる場所の隣県から出品されていて、相場よりも安値でしたし、これはぜひとも欲しいと思いましたね。予想通り私と同じように考える方がいて、競り勝ってようやく落札できたときは嬉しかったです。その後、出品元である中古車販売店まで引き取りに伺ったところ、そのオーナーさんも『売れなかったら自分で乗ろうと思っていた』と仰っていました。そんな不思議な魅力があるんですよね。このJ2には」
こうして、念願だったジムニー、それもレアなJ2のオーナーとなったわけだが、実際に所有してみて気がついたことはあるのだろうか。
「普段はミニバンタイプのアメ車に乗っているんです。それに比べると、ジムニーは軽快でいいですね。街乗りがメインのJ2であれば、手荒く扱われた個体も少ないだろうと予想していましたが、この個体は17万キロ近くも走っている割には状態が良く、まさに理想通りのモデルが手に入りました」
ジムニーとしては異色のモデルであるJ2の気に入っているところについて伺ってみた。
「レアなところ、そして謎めいているところでしょうか。総生産台数を調べてみたけれど、結局分かりませんでしたし…」
そんなミステリアスな存在でもあるジムニーJ2、今後この状態を維持するのか、それともモディファイしていくのだろうか。
「購入時にスタッドレスタイヤが装着されていたんです。ホイールを購入して、リム以外はボディと同色にして雰囲気を変えてみようかなと思っています(現在のタイヤ&アルミホイールは暫定仕様とのことだ)。あと、ここから1インチローダウンする予定です。それから、ボディと同色のオーバーフェンダーを取り付けたり、剥がせるラバーペイントでグリルのブラックアウト化をしたりと、手を加えてみたいところはいろいろありますね。ただ、モディファイするとしても『オリジナルに戻せること』が大前提です。現在も、ウォッシャーノズルとワイパーアームの純正戻しを進めています。『J2』のステッカーも注文して貼りましたし。既に欠品の部品もありますが、オリジナルに戻せる方向性を常に意識つつ、モディファイを楽しみたいですね」
最後に、この愛車と今後どのように接していきたいか伺ってみた。
「熱心なジムニーファンにとって、J2のようなモデルはしっくりこないのかもしれません。個人的には、可愛らしいデザインのジムニーがあってもいいのかなと思いますね。J2は短命に終わってしまったけれど、この雰囲気がラパンやハスラーにも受け継がれているような気がしています。私自身、まだまだジムニー初心者ですが『4WDだけがジムニーじゃない。意味のないスペックのクルマなんてないんだぞ!』ということを示してみるつもりです。いずれは、近々、運転免許を取得する予定の息子に譲ってもいいかなとも考えています。気に入ってくれたらいいのですが…」
ジムニーJ2は、オリジナルから派生したモデルであり、商業的には決して成功したとはいえないかもしれない。しかし、無骨なイメージのジムニーの新たな可能性を示したモデルでもある。オーナーが語ってくれたように、後に販売されたモデルにJ2で得られたノウハウが活かされている可能性もある。もし、この記事を通じて初めてジムニーJ2の存在を知り、魅力的に感じてくれるクルマ好きがいてくれたら…。2年越しでこのモデルを手に入れたオーナーにとっても本望であるに違いない。
(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
[ガズー編集部]
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