セカンドカーにも愛情を!2735ミリの全長が魅力、2004年式スズキ・ツイン ガソリンB(EC22S型)
愛車広場の取材に協力していただいたオーナーに話しを伺うと、セカンドカーを所有している割合が思いのほか高いことに驚く。メインはあくまで本命のクルマだが、通勤や家族との移動を目的としてセカンドカーを所有しているケースが多い。なかには、サードカーか、それ以上の愛車を所有している羨ましいオーナーを取材させていただいたこともあった。
今回のオーナーも、日産・スカイライン25GTターボ(ER34型)という本命の愛車を所有しつつ、セカンドカーとしてスズキ・ツインを手に入れたという。
本命であるスカイラインの取材は別の機会にお願いするとして、なぜ、セカンドカーにこのクルマを選んだのか?また、所有してみてから初めて分かったスズキ・ツインの魅力についても伺ってみることにした。
「このクルマは、2004年式スズキ・ツイン ガソリンB(以下、ツイン)です。この個体を手に入れてから2年、現在のオドメーターの走行距離は3万9500キロです。私が手に入れてからは8千キロくらい乗りました。自宅の駐車スペースの関係でツインを購入したんですが、手に入れてからこのクルマの魅力を改めて知ることになりましたね」
ツインがデビューしたのは2003年。潔く、2シーターと割り切り、軽自動車のなかでも最小のボディサイズを実現。また、軽自動車として初めてハイブリッドシステムを搭載したことや、アイドリングストップシステムをいち早く装備したことでも話題となった(当時としては驚異的な10・15モードで、34キロ/Lの超低燃費を実現した)。また、極力装備を省いた「ガソリンA」の車両本体価格は49万円と、あらゆる点において当時のスズキの意欲作といえるだろう。
ツインのボディサイズは全長×全幅×全高:2735×1475×1450mm。オーナーの個体には「K6A型」と呼ばれる排気量658cc、直列3気筒DOHCエンジンが搭載され、最高出力は44馬力を誇る。実は、わずか3年間しか発売されなかった短命のモデルであり、現代の道路事情やクルマに求められる要素に目を向けてみると、ツインの登場はいささか早すぎたのかもしれない。
ところで、駐車スペースの関係でツインを選んだということだが、他に候補はなかったのだろうか?
「自宅の駐車スペースが限られており、ほとんどの軽自動車では収まらないんです。しかし、月極の駐車場を借りることは考えていませんでした。そこで候補に挙がったのが『ツイン』と『スマート K』だったんです。初代スマートには日本の軽自動車規格のモデルがあったんですね。しかし、スマートはハイオクガソリンを給油することになりますし、部品代をはじめとする維持費も気掛かりでした。あくまでも『セカンドカー』ですから、維持費が抑えられて安く乗れることも重要なポイントです。その結果、消去法で最後に残ったのがツインでした(笑)」
こうして、程度の良いツインを探すことになったオーナーだが…。
「生産期間が短いからなのか、総生産台数が1万台程度と少ないようです。それに最終型でも2005年式ですから、どんなに新しくても14年も前のモデルなんですよね。すでに廃車になった個体もあると思います。さらに、ツインをこよなく愛するマニアが多いのか、中古車も割高なんです。中古のワゴンRの方がよほど選択肢も多く、割安だと思いますね。こうして数台のツインをチェックして、最後はインターネットで検索していたときにディーラーで売られていた個体が目に留まり、現車確認せず『見ないで買い』してしまいました」
インターネットの普及に伴い、中古車検索が飛躍的に容易になったことは確かだ。買うつもりもないのに、夜な夜な新規物件に一喜一憂したり、お気に入りのショップのストックリストを訳もなく巡回している人も意外と多いのではないだろうか。最近では、現車を確認せず、インターネットに掲載されているページや、個別にショップから送られてきた画像を見て購入を決めるというケースも珍しいものではなくなりつつあるようだ。
それはさておき「見ないで買い」したツイン、手に入れてみてこのクルマならではの魅力を改めて実感したようだ。
「全長が3メートルに満たない小さなクルマなので小回りが効きますね。気軽に乗れますし、使い勝手が良いので、軽自動車ならではの魅力を再認識しました。いまではスカイラインよりもツインの方が乗る機会が増えたほどです(笑)。さらに、モディファイして自分好みのツインに仕上げる楽しみを見つけてしまったんです」
確かに、オーナーのツインは内外装に青色を基調としたモディファイが加えられている。
「手に入れたときはノーマルでしたが、『キャッツアイブルー』という名のボディカラーに合わせて、少しずつ手を加えていきました。フロントリップスポイラーはスズキセルボの純正オプションです。ヒートガンで温めながらスポイラーをボディに馴染ませることで装着できると知り、自分で加工しました。サイドステップは社外品ですが、そのまま装着するとボディラインが崩れてしまうため、微妙な塗り分けを行っているところがこだわりです。この作業も自分で行いました。さりげなく装着されているリアスポイラーや、ボディカラーの青を差し色にしたアルミホイールもお気に入りですね」
そして、何といっても目を惹くのが内装だろう。
「パネル類の塗装、シートカバー、シフトノブのカバー、天井の貼り替えなど、できるだけ自分で行いました。ダッシュボードマットだけはワンオフでその道のプロの方に制作していただきました。ちょっと値が張りましたが、内装の統一感を表現できるだけでなく、ダッシュボードに当たる紫外線をカバーできるので、まさに一石二鳥ですね」
もはや、本命のクルマと変わらないくらい愛情が注がれたツイン、未塗装のバンパーに刻まれた成形時の模様が、絶妙なさじ加減でこのクルマの魅力を引き立たせているように思う。事実、オーナーもそんなツインがかなりお気に入りのようだ。
「全長2735ミリのサイズだからこそ実現できたであろう、取り回しの良さとデザイン、青色を軸に統一感を表現できた内外装がお気に入りですね。湯水のごとくお金をつぎこめばさらなるモディファイができると思いますが、なるべく自分で作業したり、あえてマフラーではなくマフラーカッターを取り付けるなど、費用を抑えながら自分好みに仕上げていく過程を楽しんでいます」
最後に、今後このクルマとどう接していきたいのか?意気込みを伺ってみた。
「ツインの代わりになるクルマが見つからないんです。ここまで自分好みに仕上げましたし、お気に入りのセカンドカーなので、可能な限り乗り続けたいですね」
ツインが生産を終了してから14年、少しずつ人々の記憶から忘れ去られつつあるモデルかもしれない。しかし、日本という島国、そしてスズキだからこそ誕生したモデルともいえる。今回の取材で、改めてツインならではの魅力を再認識したように思う。いずれ、このクルマをお手本にしたシティコミューターが近未来の日本の道路を走り回る日もそう遠くないような気がするのだ。
オーナーにとっては「必要に迫られて」購入したセカンドカーだが、本命のクルマと分け隔てなく接する姿が印象的だった。本命のクルマは我が子のように大切に扱っても、セカンドカーとなるとあまり洗車もせず「雑に接する」人をしばしば見掛けるからだ。
同列に扱うのは難しいとしても、普段から内外装をきれいにしたり、大切にすることくらいはできる。いくらセカンドカーとして嫁いで来たからと邪険に扱わず、愛情を持って接してもいいはずだ。どちらのクルマも家族の一員であることに変わりはないのだから…。
(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
[ガズー編集部]
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