初代から歴代のレガシィツーリングワゴンを乗り継いできたからこそ分かる洗練と進化。2017年式スバル・レヴォーグ 1.6GT-S EyeSight(VM4型)
1台のクルマに長く乗り続ける人がいる一方で、同じモデルを何代にもわたって乗り継ぐ人もいる。
それゆえ、同じモデルを乗り継いできた人だからこそ、洗練度や進化の度合いが分かることがあるだろう。
しかし、日本車でそんな体験ができるモデルが、実は思いのほか少ないことに気がつかないだろうか。近々、現行モデルで生産終了と噂されているクルマが存在するようだが、歴史を紡いできた存在が潰えてしまうのは寂しさを禁じ得ない。
今回は、初代スバル・レガシィツーリングワゴンから現行モデルであるスバル・レヴォーグにいたるまで、ほぼすべての前・後期モデルを乗り継いできたというオーナーを紹介したい。ただ、敢えて購入しなかったモデルもあったという。その理由についても伺ってみた。
「このクルマは、2017年式スバル・レヴォーグ 1.6GT-S EyeSight(VM4型/以下、レヴォーグ)です。手に入れてから1年で4000キロほど走りました。1年ほど前、発売されたばかりの頃に手に入れた初期型のレヴォーグから乗り換えです。私は今、67歳になりますが、実は、初代から歴代のレガシィツーリングワゴンの発売直後とマイナーチェンジ後のモデルを乗り継いできているんです。5代目にあたるレガシィツーリングワゴン(BR9型)を除いて…ですけれどね。その理由については後ほどお話しします」
レヴォーグは、第43回東京モーターショー2013においてデビューを果たし、2014年に発売が開始された。モデルチェンジを繰り返すたびに大柄になっていくレガシィに代わり、日本国内向けモデルとして開発されたのがレヴォーグだ(現在は欧州およびオーストラリアでも販売されている)。ちなみに車名のレヴォーグは、“Legacy(大いなる伝承物) ”、“Revolution(変革) ”、“Touring”それぞれのキーワードを組み合わせて作られた造語である。レガシィの血統を継承しつつ、次の世代へと昇華していこうというスバルの強い思い入れが込められているかのようだ。
レヴォーグのボディサイズは、全長×全幅×全高:4690×1780×1500mm。エンジンは2種類が用意され、オーナーが所有するレヴォーグには「FB16型」と呼ばれる、排気量1599cc、水平対向4気筒DOHC直噴ターボエンジンが搭載されており、最高出力は170馬力を誇る。もう1種類のエンジンは、「FA20型」と呼ばれる排気量1988cc、最高出力が300馬力を誇るタイプも用意されている。
レガシィツーリングワゴンが、日本車におけるツーリングワゴンブームの先駆けであり、牽引役であることに異論はないだろう。事実、その後さまざまなメーカーからワゴンタイプのクルマが発売されたが、そのほとんどが生産を終了しており、現在にいたるまで販売されているモデルはごくわずかだ。
ところで、このオーナーの驚く点は、歴代のレガシィツーリングワゴンの前・後期モデルを乗り継いでいることだろう(但し、5代目は除く)。それほどスバルのツーリングワゴンに惚れ込んでいるということなのだろうか。
「1989年のことです。スバルから新しいワゴンタイプのクルマが発売されるということで、当時、新車で手に入れたのが、レガシィツーリングワゴン2.0VZというモデルでした。このクルマを手に入れる前は、トヨタ チェイサー(GX71型)に乗っていたんです。チェイサーよりも安定した走行性能と走りの気持ちよさに魅了されましたね。そこで、マイナーチェンジ後の2.0GTに乗り替えました。その後、1993年に2代目にあたるモデル(BG5型)が発売され、同じグレードのものに乗り替えました。この頃はレガシィが飛ぶように売れていましたね」
その後も、オーナーはレガシィツーリングワゴンを乗り継いでいくのかと思いきや、別のクルマに乗り替えたという。
「スバル・アルシオーネSVXです。手に入れたのは1995年頃、S4というグレードでした。走りの気持ちよさという点においては、レガシィツーリングワゴンよりも、格段にうえでしたね。私は高速道路を走る機会が多いので、長距離を快適に移動したいという思いがありまして…。しかし、手に入れてから数年後、付き合いのあるディーラーのセールスから『どうしてもSVXが欲しくてお金を貯めたけれど、既に新車が買えないから困っているお客様がいて、良かったら譲ってくれないか』との話しがあり、そこまで仰るなら…と譲ることにしました。それで再びレガシィツーリングワゴン(2代目/BG5型の後期モデル)を手に入れたんです。SVXは、愛車遍歴のなかでも特に思い出深い1台です」
その後も、レガシィツーリングワゴン遍歴を重ねていったと語るオーナー。それは3代目(BH5型)、4代目(BP5型)まで続いた。
「3代目は2.0GT-VDC、3.0 GT30と乗り継ぎ、4代目はレガシィ アウトバック 2.5iを手に入れ、その後、ほぼ最終モデルにあたる2.0GT プレミアムレザーリミテッドという、内装がレンガ色のようなレザーに覆われた限定車を手に入れました。このクルマは装備も充実していましたし、とても気に入っていましたね」
しかし、ここでオーナーのレガシィ遍歴がストップしてしまう。
「レガシィツーリングワゴンが、5代目にあたるBR9型にフルモデルチェンジしたと聞いて、ディーラーで試乗してみました。でも、私にはしっくりこなかったんですね。ボディが大柄になり、全体的に大味になってしまったという印象を持ちました。その後も、事あるたびに試乗してみたんですが、自分にとっては当時乗っていた2.0GT プレミアムレザーリミテッドが好みだったんです。それまでは、マイナーチェンジ後の進化に惚れ込んで数年ごとに買い替えていたのに、とうとうこのモデルを手に入れることはありませんでした。もし、2014年にレヴォーグが発売されていなかったら、欧州車のステーションワゴンに買い替えていたかもしれません」
このオーナーをはじめ、そんなレガシィオーナーたちの声がメーカーに届いたのか、ついにレヴォーグが発売されることとなった。それは、オーナーにとっても待ちに待った瞬間だったようだ。
「かつてのレガシィを思わせるようなクルマが、スバルから発売されるかもしれないと知ったときは嬉しかったですね。私は長年、英語塾を経営しているのですが、かつての教え子のなかにクルマ好きがいて、レヴォーグがデビューした2013年の東京モーターショー会場から画像を送ってくれました(笑)。その後、発売後に試乗してみて『あ、これはいいぞ』という手応えを得ました。レガシィに近いフィーリングが味わえたんですね。そこで、7年間愛用したレガシィツーリングワゴン 2.0GT プレミアムレザーリミテッドに別れを告げ、レヴォーグ1.6GT EyeSightに乗り替えることにしたんです」
歴代のレガシィツーリングワゴンと1台目のレヴォーグを経て、現在のモデルを手に入れた理由を伺ってみた。
「1台目のレヴォーグはとても気に入っていました。しかし、昨年のマイナーチェンジしたモデルに試乗してみて、その伸びしろに驚いたんです。乗り心地が改善され、発進時のエンジンの出力特性も改善され、より『運転していて楽しい』ということが実感できたんですね。EyeSightがさらに進化していたり、個人的に気になっていたところが全方位的に改善されていたこともあり、思い切って買い替えることにしました」
まるでメーカーの広告ページのようになってしまったが、歴代のレガシィツーリングワゴンとレヴォーグを乗り継いできたオーナーのコメントだけに説得力がある。そんなスバルのワゴン車の進化を見続けてきたオーナーに、これまでの進化の印象を伺ってみた。
「初代~2代目あたりのレガシィツーリングワゴンは燃費が悪く、エンジン音や振動が大きいため、ガソリンスタンドで『ディーゼルエンジンですか?』と聞かれたほどです。でも、運転する楽しさや高速安定性など、それを補ってあまりある魅力があったんですね。荒削りだったところが少しずつ洗練されてきたなと感じたのは3代目あたりからでしょうか。4代目あたりになると、スバル車特有のボクサーエンジン音や振動もほとんど気にならなくなりました。レヴォーグは、その正常進化版という印象です。室内のデザインや質感も向上しましたし、全体的に垢抜けた感じがしますね」
レガシィやレヴォーグに深い思い入れが感じられるオーナー。最後に、この愛車と今後どのように接していきたいか伺ってみた。
「そのうち次期レヴォーグが発売されると思いますが、このクルマがとても気に入っていますし、しばらくは乗るつもりです。いずれ電気自動車や自動運転になったとしても、未来のレヴォーグに乗り続けることになると思います。自分にとってステーションワゴンは使い勝手がよく、人や荷物が積める万能選手というイメージです。運転する楽しさや使い勝手、安全性など、あらゆる要求を高次元で満たしてくれるのがレヴォーグなんです。決して安いクルマではありませんが、欧州車で同様の性能のものを手に入れるとなるとさらに高額になってしまいます。日本車でこのカテゴリー(ステーションワゴン)のクルマはほとんどなくなってしまったけれど、こうして造り続けてくれるスバルには感謝したいですね」
世界の市場を視野に見据えたとき、母国とはいえ、わざわざ日本での需要を重視したモデルを開発することは、自動車メーカーにとって大英断かもしれない。スバルがレヴォーグを発売していなかったら…、このオーナーはもちろん、多くのレガシィファンが他メーカーへの乗り換えるという、苦渋の選択をした可能性が高い。世界規模から見れば日本市場の規模は小さいかもしれない。しかし、母国のユーザー向けにクルマを開発・販売する姿勢は、レヴォーグのオーナーだけでなく、スバル車を支持するユーザーにも充分に伝わっているはずだ。
(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
[ガズー編集部]
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