センチュリーはファミリーカーとしても最適なのか?セダン好きがセンチュリーを選んだ理由

  • トヨタ センチュリー 2代目 (GZG50)

    トヨタ センチュリー 2代目 (GZG50)

「クルマ好き」と呼ばれる人の中には、1台のクルマを長く愛し続ける人もいれば、いろいろなクルマに乗ってみるのが好きという人もいる。さらに後者の中には、自分にピッタリのクルマを探し求めて乗り換え続けているという人も含まれている。理想の1台にたどり着くまでの妥協なき紆余曲折が、その車歴に反映されているのだ。
これまでに、さまざまなジャンルのクルマを30台以上も乗り継ぎ、自身の到達点としてトヨタセンチュリー(GZG50)にたどり着いたというHasuYasuさんも、そんなこだわり派オーナーのひとり。サラリーマンながらファミリーカーとしてセンチュリーを手に入れたそのワケと、センチュリーで楽しむカーライフについて伺ってみた。

トヨタ・センチュリーといえば、日本のショーファーカー。大企業の社長車や公用車、さらには皇族車両としても使用されている。
後部座席の快適性や安全性について興味を抱くことはあっても、自分が運転する愛車として所有するというイメージを持つひとは少ないだろう。「我が家は夫婦と子供3人の5人家族なんですが、乗車人数的に考えてミニバンまでは必要ないんですよ。センチュリーは自分が好きなセダンのフォルムで、家族全員がゆったりとくつろげるスペースも十分です。ノーマルのままでもミニバンより威圧感がありますしね(笑)」

HasuYasuさんがセンチュリーにたどり着いたのは、数々のクルマを乗り継いだ結果、セダンが自分の中で最もシックリくるクルマだと感じたことが発端だという。
日産・グロリアSGL(Y30)をターボブロアム仕様にして6万キロほど乗ったあと、セルシオを3台乗り継いだことでトヨタの高級セダンの乗り味に心酔。さらに上質な乗り心地を求め、その上のグレードの車種へと興味が湧いていったそうだ。
「30セルシオからの乗り換えだったので、レクサスLSが順当かなと思いましたが、レクサスは巷での人気が高くて自分の性に合っていないかなと思ったんですよ。そこで興味が湧いたのが、日本最高峰のセダンであるセンチュリーだったんです」

参考までにボディサイズを比較すると、現行のレクサスLS500が全長5235ミリ/全幅1900ミリに対し、センチュリーは全長5270ミリ/全幅1890ミリと、意外にもそこまで大きな差はない。

そうしてセンチュリーを探しはじめたものの、希望するシルバー系ではなかなかいい個体が見つからなかったという。
ちなみにシルバー系といってもセンチュリーには鸞鳳(らんぽう/グロスグレーメタリック)、精華(せいか/レイディエントシルバーメタリック)、瑞雲(ずいうん/デミュアブルーマイカメタリック)という3つのカラーが存在する。この名称を見ただけでもセンチュリーに対して心躍ってしまう人も少なくないはずだ。

話を戻すと、シルバー系では見つからなかったものの、ネイビー系カラーとなる摩周(ましゅう/シリーンブルーマイカ)で欲しかったデュアルEMVパッケージ搭載車両が見つかり、法人車両でありがちな黒の神威(かむい/エターナルブラック)ではないことと、東京の医療法人が長年所有していた来歴が確認できたことで購入を決めたという。コンディションの良い車両を探すために、非降雪地で使用されていたクルマを選ぶことも条件のひとつだったのだ。

ちなみにセンチュリーといえば日本を代表するショーファーカー。そのためオーナー自らがハンドルを握るようなクルマではないと思われているが、重量級ボディながらもトルクフルなエンジンはどんな回転数からでも加速してくれるし、安定性も高くて高速巡航もストレスなく楽しめる。実は運転しても楽しめるのは所有したからこそわかる本質だという。
そして何よりも、家族が楽しそうに乗ってくれる姿を見るとファミリーカーとしての素養も高い、とHasuYasuさんは太鼓判を押す。

子供たちの指定席でもあるリヤシートは広々としたゴージャス空間。前席と後席にモニターを備えた『デュアルEMVパッケージ』を選んだことで、移動中のDVD視聴などが飽きずに楽しめるのも狙い通りだったという。
またファミリーカーとして使用するだけに、子供たちの部活の送迎などでも大活躍。一緒に乗った子供の友達から「スゲー!!」と歓声を受けることもあり、そういった場面でもセンチュリーオーナーならではの優越感を味わうことができるのだ。

エンジンは日本の乗用車で唯一のV型12気筒を搭載。5リッターの大排気量はトルクフルで、エンジンを回さなくても高速巡航が楽しめるため、静粛性の高さや快適さにも大きく貢献してくれる。高速移動中はソフトな乗り心地も相まって、後席の子供たちは爆睡していることも多いのだという。

ちなみに現行モデルのセンチュリーはV型8気筒+ハイブリッドシステムを搭載するため、V型12気筒を体感できるモデルはこのセンチュリーまで。このプレミアム感もまた所有欲を満たしてくれる特徴のひとつだろう。

運転席周りは購入時にステアリングやシフトノブを交換するなど、自らハンドルを握って楽しむためのこだわりが詰まったコーディネイトをおこなっている。これらのパーツは純正のウッドトリムとの相性もよく、ノーマルのグレー革よりも高級感がアップするのは愛着が高まるポイントだとか。

偶然見つけて手に入れたという『トミカリミテッドヴィンテージNEO』のセンチュリーは、もともとはフェンダーミラーのモデルだったが、愛車に合わせてミラーを取り外したという。希少なスケールモデルであっても愛車を再現するためなら加工を躊躇わないのは、クルマ好きの性(さが)!?

50系のセンチュリーは1997年から2017年まで20年もの間生産されていたため、ヘッドライトなどは世代によってマイナーチェンジが行われている。HasuYasuさんの車両は前期がベースながら、前オーナー(医療法人)の手によってヘッドライトなどを後期仕様に変更されている。
スクエア形状のボディは四隅が見やすく「想像していたよりもずっと運転しやすい」そうで、車両の見切りに役立つ純正のコーナーポールは“あればさらに安心"というくらいなのだとか。

フロントマスクと同様にリヤセクションも後期仕様に変更されていて、その特徴ともいえるのがバックカメラ内臓のオーナメント。手に入れた段階ではバック信号と連動しておらず手動でスイッチを切り替える作業が必要だったが、せっかくの純正装備だからということで配線加工を行ってバック連動に変更したという。

もともと歴代セルシオは若干車高を落とす程度でホイールもノーマルのまま乗っていたというHasuYasuさん。そのこだわりを受け継いだセンチュリーも、エアサスコントローラーを追加した以外は基本的にノーマルをキープしている。ホイールは色あせや傷がひどかったため、コンディションの良い純正品を探して交換したというこだわりようだ。

リヤバンパーに残されるのは、購入時のこだわりポイントでもあった雪国で使われていなかったことを示す「東京トヨタ」のステッカー。リヤドアに貼られた「Century」のデカールは、カタログのロゴを元にオリジナルで製作したアイテム。細かい部分でオリジナリティを追加して楽しんでいるようだ。

クルマが少しでも汚れたら即洗車するのはHasuYasuさんのこだわり。しっかりメンテナンスが行き届いたボディは、あいにくの雨模様の中でもご覧の通り珠のような水弾き。普段はガレージに保管して、洗車は自宅前で念入りに行っているという。

国産車最高峰にして唯一無二のV型12気筒エンジン搭載車。これ以上の贅沢はないセンチュリーは、家族にも愛されるファミリーカーの最高到達点といっても過言ではないだろう。
そして、今回の撮影場所となった旧弘前偕行社は、以前、保育園として使用されていた頃に、現在小学校1年生になる娘さんが通っていたため馴染み深い場所なのだという。そんなスポットで愛車を撮影できたこともまた、センチュリーとの思い出の1ページに彩りを与えてくれるのではないだろうか。

取材協力:旧弘前偕行社

(文:渡辺大輔 撮影:金子信敏)

[GAZOO編集部]