【MIRAIオーナー’sボイス】「家庭用プリメインアンプ」を車載したマニアックな初代MIRAIは、今日も長距離通勤のお供として走る

「興味はあるが、同時に不安もある」というのが、FCV(燃料電池自動車)であるトヨタ MIRAIというクルマに対して、多くの自動車愛好家が抱いている印象の率直なところだろう。

だが今回ご紹介するMIRAIオーナー、濱崎 進さんは「MIRAIは燃料電池車だから」というまさにその1点だけの理由から、2019年に購入を決めた。

「大学時代にバケガク(化学)を専攻していて、そのなかでも工業化学という、まさに燃料電池に直結する部分も多い分野の研究をしていたんですね。まずはそれがあって、『燃料電池で動くクルマがトヨタから正式に発売される』という話を聞いたときは、これはもう買わねばなるまい! と思いましたね。単純に興味があった、ということです」

それに加えて濱崎さんが生まれ育った場所も、燃料電池自動車という存在への強い興味につながっていたという。

「私は東京都下の出身なんですが、その市内を走っている某街道沿いに生家があったんです。で、そこがひどい渋滞をする箇所で、昔のクルマは今のクルマと違って排ガスも濃かったですから、正直かなり閉口していたんですね。喘息で苦しんでいる人も、まわりにはいましたし」

そんな背景は持ちつつも、やはりクルマ好きな少年および青年に育っていった濱崎さんは、初代ホンダ フィットや先代のスズキ スイフトスポーツ、あるいは「クルマ以上に好きかもしれない」という大型バイクを楽しむ生活を送ってはいた。

「でも燃料電池車が、排ガスをいっさい出さないクルマが、もしも本当に市販されるのだとしたら……ぜひそれを選びたいと思ったんですよ。私ひとりがFCVに替えたところで、環境に対する影響は微力すぎるほど微力なのかもしれません。でも、自分にできることはやりたいというか。あとは先ほど申し上げたように、単純に『燃料電池そのものに興味がある』というのもありましたしね(笑)」

そういった形で初代トヨタ MIRAIに大いなる興味を抱いた濱崎さんではあったが、「ではさっそく購入します」ということにはならなかった。

なぜならば、発売当初の初代MIRAIには「オーディオレス仕様」というものが存在していなかったからだ。

「初代MIRAIに付いている純正のオーディオ&ナビが悪いものだとは思いません。でも自分の性分として『オーディオ関係はメーカーのお仕着せではなく“自分が好きなモノ”を使いたい』というのがありますし、自分好みの車内オーディオ環境をゼロから作っていくのが好きなんですよね」

ということで、排ガスを出さない燃料電池車に惹かれつつも「ううむ……」と思っていたが、あるとき、濱崎さんがまさにお望みの「オーディオレス仕様」が、初代トヨタ MIRAIに追加された。

「で、これはもう買うしかないな――ということで、さっそくトヨタディーラーに注文を入れました。ご存じのとおり初代MIRAIは車両価格700万円以上となる決して安いクルマではありませんが、国からも東京都からもけっこうな額の補助金が出ますし。

そして4年しばりのリース契約で入手すれば、4年後にトヨタディーラーが約360万円で買い取ってくれるというのもありましたし。それゆえ、購入にあたって金銭的には特に問題なかったというのが正直なところです」

濱崎さんいわく、2019年当時はMIRAI購入にあたって国から200万円ちょい、東京都から100万円ちょいの補助金が出て、合計307万円になったとのこと。それを頭金に加味したうえで4年間のリース契約を組むと、濱崎さんの場合の月々支払額は「1万円ぐらい」でしかないのだという。

「だから、私にとってMIRAIは『携帯電話をもう1台持つことにした』ぐらいの話なんですよ。支払額的には(笑)」

そして濱崎さんの場合は「走行距離」がけっこう増えることがほぼ確実であった点においても、リース契約のほうが有利だったのだそうだ。

「自宅から板橋区の勤務先までは毎日クルマで、というかMIRAIで通勤しています。その往復距離がだいたい55kmですので、通勤以外にはMIRAIをいっさい使わなかったとしても、年間走行距離は1万5000kmぐらいになります。

……となると、MIRAIのリース契約はいちおう『年間走行距離は1万kmまで』ということになっていますので、リース満了時にはkmあたりいくらで計算されるアディショナルなお金を支払わなければなりません。私の計算によると、そのアディショナルな代金は50万円ぐらいなんですが、それでも、普通に買って普通に下取りや買い取りに出すよりもぜんぜん有利なんですよね」

1日に約55km走る“MIRAI通勤”を週に5日間行う場合、ステーションでの水素補給は週に一度のペースで行うという。

「板橋区にある私の職場のすぐ近くにたまたま水素ステーションがあるので、私の場合はほとんど不便を感じていません。週に一度、職場近くのステーションでササッと充填するだけですからね。しかし通勤以外にもMIRAIを使うとなると、ステーションの数がまだまだ少ないことと、『あるんだけど、夜間や土日は営業していない場合が多い』という今の現状は、正直ネックになるでしょうね」

ここばっかりは行政や業界団体の努力でなんとかしてもらうほかない問題だが、それ以外は、重厚感ある走りを含めて「MIRAIがある生活」についての不満はないという濱崎さん(ただ「車両はやっぱり重いですよね~。構造上、仕方ないのですが」とのこと)。

だがそれはそれとして、例の「オーディオレス仕様」だった部分は今、どうなっているのだろうか?

「それがですね、結果として『家庭用のプリメインアンプ』を車内に設置することになりました」

自動車用に特化したアンプではなく、家庭用のアンプを?

「乗用車の電気の電圧は基本的に12Vですが、MIRAIには家庭用電力と同じ100Vコンセントが標準装備されていて、1500Wまで使用できます。で、音を作るにあたっては電圧が高いほうが“いい音”をスムーズに作ることができます。なので、せっかくですから家庭用アンプのいいやつを積んだほうがいいだろう――と思いまして」

購入前に、標準装備のコンセントが「正弦波」であることを調べ上げ、結果として米国『Marantz(マランツ)』の家庭用プリメインアンプをMIRAIの後席背後に固定し、スピーカーは、現在はマランツと同グループに属する『DENON』のそれを選択。MIRAIというクルマならではの特性を生かした「とてもじゃないが車載オーディオとは思えない良音質」を、往復約55kmの通勤のなかで堪能しているという。


「初代MIRAIというのは、その気になれば多少のカスタマイズもできるクルマですし、私のようにそこそこ長い距離の通勤に使うにも、特に不便はありません(長距離ドライブをする際のステーション不足はまた別の問題ですが)。4年しばりのリースが満了したときにどうするかはまだ決めていませんが、とりあえず今はこの、水素で動く、排ガスをいっさい出さないクルマを愛でていこうと思っています」

夕暮れ近くの、まだまだガソリンエンジン車が数多く走り回るビル街を見つめながら、濱崎 進さんはそう言った。

(文=伊達軍曹/写真=阿部昌也)

[ガズー編集部]

ミライ水素ステーション一覧
https://toyota.jp/mirai/station/index.html

※MIRAIの購入についてはお近くの販売店でご確認ください。

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