【MIRAIオーナー’sボイス】スプリンター トレノでカーライフを始めた人間が「MIRAI」にたどり着いた理由
この「MIRAIオーナー’sボイス」は、2020年12月にフルモデルチェンジを実施し新型へ生まれ変わったMIRAIの、初代モデルに乗るオーナーにどのようなカーライフを送っているのかを深掘っていくシリーズだ。
「興味はあるが、不安もある」
それが、トヨタ MIRAIというFCV(燃料電池自動車)に対しての、多くの自動車愛好家の率直な印象であるはずだ。
モーター駆動車ならではの力強い走り、そして燃料電池自動車ならではの先進性や環境性能はぜひ味わってみたい、堪能してみたいとは思う。
だが同時に「かなり高額らしいが?」「補助金が出るとか出ないとか?」「水素ステーションの数がまだ少ないと聞くが?」「そしてステーションは予約制なの?」等々の不安や疑問も脳内にうずまくため、なかなか「購入する」というアクションには踏み切れない人が多数派であるはずなのだ。
しかしここに、2019年6月に初代トヨタ MIRAIを購入し、日々の通勤等に活用している人物がいる。東京都にお住まいの会社員、池田和典さんだ。
子どもの頃からの自動車ファンで、18歳で免許を取ってからはAE92型スプリンター トレノなどのスポーティなクーペを中心に購入してきた池田さん。現在51歳の池田さんがなぜMIRAIを選び、そしてそれを日々どう使っているのか?
そのあたりを、言ってはなんだが根掘り葉掘り聞いてみた。
前述のとおり、18歳以降の池田さんはトヨタ スプリンター トレノなどクーペタイプのクルマで走りを楽しんだり、あるいは初代トヨタ ハリアーをちょっといい感じにカスタマイズして楽しむなどしていた、いわゆる「一般的なクルマ好き」といえる人物だった。
「でもある時期から、地球環境の問題……というと大げさかもしませんが、なんというか『果たしてこのままでいいのかな?』みたいに思うようになり、まずは初代トヨタ プリウスに強い興味を持ったんです。結論として買わなかったのですが(笑)」
世界初の量産ハイブリッド車である初代プリウスの先進性と環境性能に衝撃を受けた池田さんだったが、同時に「デザインがちょっと……」とも思ったため、とりあえずはパス。だが数年後、今度はデザイン的にも納得がいったトヨタ アクアを購入した。
「アクアは気に入りましたね。燃費もいいし、低重心だからでしょうか、実はコーナリングとかもかなり気持ちいいですし」
そして、そうこうするうちに今度は燃料電池自動車である初代MIRAIがトヨタから登場した。
「これはいい! と思いましたね。地球環境に対して、自分ひとりができることなんてたかが知れてるかもしれません。でも、やらないよりは“何か”をやったほうがいいでしょうし、あとは単純にひとりのクルマ好きとして、燃料電池自動車というものに強い興味もありましたしね」
ということで初代MIRAIの購入を検討しはじめた池田さんだったが、購入計画はなかなか進まなかった。公式サイトを見ても、いわゆる補助金がいくら出るのかが今ひとつはっきりしなかったからだ。
「それで『補助金が出るって話も、結局は眉唾だったのかなぁ……』みたいな感じであきらめかけたんです。でもあるとき、仕事関係の知人から『MIRAIに興味があるなら、MIRAIを積極的に売りたいと思ってるトヨタディーラーを紹介しますけど?』と言われまして。で、そのディーラーさんに行ってみたら、話はトントン拍子に進んでしまいました」
池田さんが予算の観点から気になっていた「補助金」は、結論として国から200万円と東京都から100万円が出ることがわかった。そして、知らなかったのだが、池田さんが住まう東京都足立区からも10万円の補助金が出ることが判明。
「さらに初代MIRAIには、ローンを組んでから4年後の買い取り保証みたいなものがあることもわかったんです。おおむね通常の使い方さえしておけば、4年後にそのトヨタディーラーが必ず約360万円で買い取ってくれるんですよ。となれば、差し引きのローン支払額はかなりお手頃になりますよね? で、『これはもういくしかないな……』と思ったと、まぁそういう次第です」
以上の流れで初代MIRAIのオーナーとなった池田さん。インタビュー中にご本人が繰り返し言っていたのは、「本当は、自分はこのような高級車を買える身ではない」ということ。ごく普通の会社員として、いわゆる普通のクルマが性に合ってるし、経済的にもマッチしている。
だが、これだけ買う側にとっての恵まれた条件がそろっているならば、「人生初の高級車」を所有してみるのも悪くないのではないか――と考えた池田さんなのだ。
そして初代MIRAIの乗り味は「快適の極み」であると言う。
「さすがは高級車というのか何というのか、すべてのタッチが上質ですよね。スポーティな乗り味ではないですが、動力性能は十分以上ですし。そして人間として堕落してしまいそうなほど快適で便利なクルマでもあります(笑)。ホワイトレザーで注文したインテリアも、納車前は友人から「白の内装なんてキザっぽい!」とも言われましたが、いざ実物を見てみると『……いいね』なんて言ってますし。私も、このインテリアカラーと雰囲気は大いに気に入りました」
だがFCV(燃料電池自動車)といえば気になるのは、まだインフラ的に十分とは言い難い水素ステーションについてだ。池田さんの場合はどこの水素ステーションで、どのような頻度で水素を充填しているのだろうか?
「自宅からそう遠くはない『東京板橋水素ステーション(移動式)』を利用してます。足立区の自宅から職場のある板橋区まで、日々の往復約20kmの通勤にMIRAIを使ってますので、水素を充填するのは10日に1回ぐらいでしょうか。そこのステーションは移動式ですので営業日は火曜と木曜のみ、営業時間も11時30分から13時30分までと限定されているのですが、私の場合はたまたま都合がつく曜日および時間であるため、さほど不便は感じていません」
水素ステーションは「予約しないと使えないから不便」とも聞くが?
「『東京板橋水素ステーション』の場合は予約不要です。やっている曜日のやってる時間帯に行けば、3分もかからずにシュッと充填が終わります。でもまぁガソリンみたいに『ほぼいつでもどこでも入れられる』という状況とは違いますので、もちろん『それなりに不便ではある』というのは間違いないのですけどね」
不便といえば、気になるのは航続距離だ。初代MIRAIの場合はJC08モードによる航続距離は650kmとのことだが、実際は1回の充填でどのぐらい走れるものなのか? また長距離ドライブに行く際などの不安や不便はいかほどのものなのだろうか?
「満充填からの航続可能距離は、だいたい450kmといったところですね。ですから、けっこう遠くまで行こうと思えば行けます。ただし問題は、(東京から見て)西の方面の沿岸に行く場合は、水素ステーションの数はけっこう多いのですが、東北方面に向かおうとすると、ステーションの数がまだ少ないこと。そして現状の水素ステーションは、肝心の土日にお休みというところが多いため、普通の人が週末に遠出をするのはやや厳しいんですよね。私の場合は、たまたまなんとかなってますが」
しかしそんな池田さんも、やはり水素ステーションの数や実働時間の少なさには不安があるため、「何らかの理由で充填できなかったとしても、確実に自宅まで帰り付ける距離」、すなわち片道約200kmまでの遠出にとどめているという。このあたりは、燃料電池自動車が普及していくためのネックではあるのだろう。
「でもね、そこさえ気にしなければ、というかしっかり頭に入れて計算しておけば、MIRAIはとってもいいクルマですよ。私、キャンプが好きでけっこう行ってるんですが、クルマをMIRAIに替えてからも普通に行けてますからね。MIRAIのトランクって、そんなに広大なわけではないけど、決して激狭ではないので、キャンプ道具も普通に積めるんです」
そして池田さんのMIRAIは、キャンプ時の「炊飯」に活躍したこともあったと言う。
「もちろん普段は普通に火をおこして鍋で米を炊くわけですが、あるときのキャンプで、たまたまうまく炊けなかったんです。で、まいったな……と皆で言っていたのですが、よく考えたら私、その日は“サブ機”として電気炊飯器も持参していたんです。そしてMIRAIから電気を出力して炊飯器で炊いてみると、当然バッチリ炊けるじゃないですか? 『……さすがはMIRAI!』と思いましたね。しかしながら、友人が『じゃあ今後、池田のMIRAIは“炊飯用のクルマ”として来てもらおうか』と言うのには『ふざけるな!(笑)』と反発しましたが(笑)」
地球環境の保全に対して「排ガスを出さないという意味で、わずかかもしれないが貢献できる」という意味で、そしてそのパワフルで上質な乗り味に対して、池田さんは「大いに満足している」という。
そして同時に、「もしも興味があるなら、手に入れたほうがいいと思います」とも言う。
「普通のガソリン車にできて、燃料電池車にできないことって『エンジンの心地よい鼓動を感じる』など、無くはないのですが、決して多くはないと実感しています。次も、FRで5人乗りになった新型のMIRAIを買いたいなぁ……。欲を言えばもう少し全長が短くなってくれると嬉しいんですけどね。私にとって初代MIRAIの不満点は、とりあえず『全長がちょっと長すぎる』ってことかな?」
苦笑しつつも、大切な道具または相棒を眺める目で、池田和典さんはそう言った。
(文=伊達軍曹/写真=阿部昌也)
[ガズー編集部]
※MIRAIの購入についてはお近くの販売店でご確認ください。
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