【MIRAIオーナー’sボイス】スーパースポーツを楽しむ経営者が選んだ、もう一台の相棒

この「MIRAIオーナー’sボイス」は、2020年12月にフルモデルチェンジを実施し新型へ生まれ変わったMIRAIの初代モデルに乗るオーナーがどのようなカーライフを送っているのかを深掘っていくシリーズだ。

愛知県にある大きなマリーナに停められた真っ白なトヨタ MIRAI。不動産業を営む辻 直樹さんは、このマリーナにカジキ釣りを楽しむためのフィッシングボートを係留しているそうだ。

現在の愛車は991型ポルシェ911 GT3、BMW X6、フィアット デュカトをベースに製作されたモーターホーム、そしてMIRAI。マリン関連ではボートの他、マリンジェットも所有している。

聞けば辻さんは幼少時代にスーパーカーの虜になり、エンジン付きの乗り物に強い憧れを持つようになった世代。大人になったら自由に乗り物を楽しむことを空想しながら、紙にポルシェ911の絵を描いていた。

社会人になってからはがむしゃらに働き、やがて独立。事業を軌道に乗せて徐々に規模を拡大し、ひとつずつ自身の夢を実現させていった。

「最初に買ったクルマはトヨタのTE27型レビン。その後、日産のフェアレディZ 240Z(S30型)やスカイライン ジャパン(C210型)に乗りました。どれも、清水の舞台から飛び降りるつもりで、長期のローンを組んで必死に働きましたね」

20代の頃は二級整備士の友人と、彼の自宅の倉庫にクルマを入れてエンジンを下ろし、解体屋から格安で仕入れたエンジンに手を加えて載せ替えたりしていたそう。夢中でクルマをいじっていたこの時期は辻さんにとってかけがえのない時間だった。

起業後は「いつか自分のボートを持つ」という目標を立て、がむしゃらに働いた。国土地理院が発行する御前崎から鳥羽までの海図を額に入れて書斎に飾り、仕事でつまずきそうになったらその海図を見て「俺はここに自分のボートで行くんだ」と気持ちを奮い立たせたという。

“エンジン付きの乗り物”を人生のモチベーションにしてきた辻さんは、なぜエンジンがないMIRAIを手にしたのだろう。

「初代MIRAIが出る前から“燃料電池自動車は究極のエコカー”と言われていましたが、正直に話すと私は環境のために選ぶという意識はありませんでした。それよりも水素をエネルギーにして走るのはどんな感覚なのか。未知の世界をどうしても知りたくなったのです。新しもの好きが飛びついたというやつです(笑)」

水素で走る感覚を一刻も早く味わいたい。その想いから辻さんはMIRAI発売開始の当日、一番乗りを目指してまだディーラーがオープンする前に店に向かった。ところが辻さんの前にはすでに多くの先客がいたそうだ。

「結局、私はそのディーラーで十数番目の予約になり、納車まで1年8カ月も待つことになりました。私は子どものような性格で、楽しみがあると興奮して寝られなくなるタイプ。そんな私に1年8カ月という期間はあまりにも長過ぎました(笑)」

辻さんにとってあまりにも長かった待ち時間が過ぎ、MIRAIが納車された日のことは今でもよく覚えているという。

その日は仕事があったので会社まで積載車で持ってきてもらった。「ああ、これがMIRAIか」と辻さんは感慨深くクルマを眺めていた。ふと気づくと歩いていた多くの人が足を止め、MIRAIとそのオーナーである辻さんのことを見ていたという。

当時はまだ街中でもMIRAIを見かけることがほとんどなかったため、運転していてもとにかく注目された。それはポルシェ 911 GT3や、4年ほど前まで乗っていたフェラーリ488スパイダー以上。あまりの注目度に気恥ずかしさを覚えたほど。

ここまで納車に時間がかかったのは、2014年12月に販売がスタートした初代MIRAIの目標販売台数が1年間で約400台とかなり少なかったため。当然、販売店には試乗車などもない。実車を見ず、試乗もできない状態での購入に不安はなかったのだろうか。

「世界のトヨタが満を持して出す燃料電池自動車ですからね。それはまったくありませんでした」

強いて気になった点を挙げるとしたら燃料である水素の充塡問題だが、会社からクルマで5分ほどのところに水素ステーションがオープンしたことで不安は解消された。

「MIRAIは仕事の移動で使うことを考えていたので、仕事圏、生活圏にステーションがあれば普通のガソリン車と同じ感覚で乗ることができます。燃料代もガソリン車とほぼ変わらないですね。ただ水素ステーションは休日や夜は営業しておらず、それで困ったことは何度かあります」

辻さんが不動産業で扱うのは主に賃貸物件。経営者となった現在も物件を探している人を案内したり、オーナーとミーティングをしたりと、自ら現場に出るようにしている。物件を回る時にMIRAIを出すと、相手はとても喜んでくれる。

「まだ燃料電池自動車に乗ったことがある人はほとんどいないので、MIRAIに案内すると初めての体験で盛り上がってもらえます。そこから話が広がることもありますよ。お付き合いいただいているオーナー様の中には私のMIRAIに乗って、ご自身でもMIRAIを買われた方もいらっしゃいます。その方は昨年の新型発表と同時に新しいMIRAIを注文されたそうです」

フューエルセルシステムを搭載するMIRAIはそのサイズから想像するよりも重量がある分、乗り味はいい意味で重厚感があると感じた。これはお客さんからも好評で、「乗り心地がいいですね」と言われることが多い。

決して煌びやかではないが、クリーンで上質な雰囲気があるインテリアも初めてMIRAIに乗った人からも評判がいい。

辻さんはMIRAIのシートを気に入っている。

「フロントシートは体へのフィット感がよく楽な姿勢を取りやすいので、長時間運転していても疲れにくい気がします。モーターならではのトルク感のある走りも気持ちいいですね。とくに出足の良さが気に入っています」

スーパースポーツや特大モーターホーム、さらにボートなど、一般の人にとっては雲の上のようなエンジンライフを楽しんでいる辻さんだが、MIRAIと出合ったことでこれまでにない価値観が芽生えた。

「ご存じのようにMIRAIは燃料である水素と大気中の酸素を化学反応させて発生した電気を使って走ります。ある日、MIRAIのボディ下から水が流れているのを見た時、MIRAIは本当にクリーンなクルマなのだと実感しました。自分も少しは環境にいいことをできているのかなって。次は新しいMIRAIにするか、電気自動車にするかはわかりませんが、今後も環境対応車を常に一台持っておきたいと考えています」

スーパースポーツと燃料電池自動車。ある意味で逆のベクトルを向いたクルマかもしれないが、辻さんの中ではうまくバランスが取れているに違いない。そして大好きなクルマで自分を奮い立たせながら、さらに大きな夢を叶えていくはずだ。

(取材・文/高橋 満<BRIDGE MAN> 撮影/柳田由人)

[ガズー編集部]

 

ミライ水素ステーション一覧
https://toyota.jp/mirai/station/index.html

※MIRAIの購入についてはお近くの販売店でご確認ください。

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