キャンプも愛車もちょっと不便だからこそ楽しい!サニー好きのこだわりが詰まったサニーバン(VB10)
日本の“元祖・大衆車”として昭和のモーターリゼーションを牽引し、海外でも多くのユーザーに愛されてきたサニー。
初代モデルがダットサンから発売されたのは1966年。モデルバリエーションは初年度に登場した2ドアセダンを皮切りに、翌年には4ドアセダン、さらに2ドアクーペ、ライトバン、トラックとへと拡大し、ファミリーカーから仕事用まで、まさに高度成長期を支える日本国民の足として親しまれていった。
コンパクトかつシンプルな作りがスタンダードだったこともあり、今もカスタムベースとして人気の衰えないモデルでもある。
そんな1969年式サニーバン (VB10)にキャンプ道具を満載し、仲間ファミリーとともにグループキャンプに訪れていたのがオーナーのササキさんだ。
ササキさんが参加していたのは神奈川県の相模原で開催されたアウトドア&カスタムカーイベント『レッツチルアウト』。『潤水都市さがみはらフェスタ2022』との共催でアウトドアグッズの展示販売ブースやアクティビティなどが多数用意され、2日間で5万4200人が来場したビッグイベントだ。
その中に用意された『カーショーキャンプ』エリアに愛車を並べていたササキさんが本格的にキャンプを始めたのは5年ほど前。ソロキャンプを前提にアイテムを揃えながら楽しんでいくうちに、現在ではソロ用テントにコット、焚き火台といったシンプルなサイトづくりに辿り着いたという。
ちなみにササキさんはこのサニーバンの前にもサニトラ(B120)を7年ほど所有していたという、根っからのサニー好き。1960年代のデザインや内装の雰囲気などは、現代のクルマのような快適性やパフォーマンスはないものの、安心して付き合える道具感が魅力なのだとか。
そんなサニー好きだからこそ、周りに乗っている人がいなかったサニーバンを1年以上かけて探して乗り替えるに至ったという。
「バンに乗り替えたのが6年くらい前なんですが、その前に乗っていたサニトラ時代にもキャンプには行っていました。だからバンに乗り換えて荷物が載せられると思ったんですが、意外とそうでもなかったんですよ。まぁキャンプはソロで楽しむ派なので、このラゲッジスペースでも十分ですけどね」
今回のレッツチルアウトでは、カーショーにエントリーした車両のなかから『BEST CAMP OUT賞』に選ばれたササキさんのサニー。キャンプサイトの作りはもちろん、サニーの絶妙なスタイリングにも高い評価が与えられたようだ。
基本的にはノーマルをキープしながらルーフラックなどのアクセサリーには1970年代を意識したパーツをチョイス。
さらに足元には空冷時代のフォルクスワーゲン用カスタムホイールとして人気を博したレーダーホイールをセット。P.C.D.205という特殊なサイズを装着するための変換スペーサーを駆使し、無理なくフェンダーに収められたホイールは、違和感がまったくないながら知っている人がみれば技アリのパーツチョイスといえるだろう。
搭載されているエンジンはオリジナルのA10型。わずか1000ccの小さな排気量ながら実用性に富んだ設計は、排気量を拡大しながら1990年代まで作り続けられていた名機。そのタフさはレーシングエンジンとしても活用され、それに伴って多くのカスタマイズパーツも用意されている。
そんなエンジンだけに、走行距離不明ながらもキャンプやイベント、さらに日常の足としても大活躍。一般的には古いクルマは壊れるといわれがちだが、メンテナンスを欠かさなければ現役で使い続けられるということを証明しているのだ。
キャンプで荷物が増えた時にも対応できるようルーフラックも搭載済み。このキャリアも最近のモデルではなく、1970年代のオプションパーツとして用意されていた当時モノを探して組み合わせたこだわりアイテムだ。
「趣味はキャンプだけじゃなくBMXも乗ったりするので、そのためのキャリアは欠かせないんですよ。もちろん1970年代当時はサイクルキャリアなんてなかったので、実用性とともにアクセサリーとしても見栄えのあるヤキマ製のサイクルキャリアを組み合わせてみたました」
適度なヤレ感は持たせつつもエンブレムなど欠品パーツもないボディは『当時からの時間の流れを楽しむクルマ作り』というササキさんのコンセプトどおりの印象を与えてくれる。ドアミラーも現行品ながらシンプルなGTミラーを組み合わせるあたり玄人らしいチョイスといえるだろう。
ボディだけでなくインテリアも、ノーマルシートに懐かしの簾シートカバーを装着し、純正のステアリングには内装色に合わせたグリップを巻き直すなど当時の雰囲気を大切にしていることが伺える。
センタートンネルに置かれるバスケットは空冷フォルクスワーゲン用として販売されているアイテムを流用するなど、素朴な中にも使い勝手を改善するアイデアが盛り込まれているのだ。
ちなみに当時の国産車ではエアコンはオプション装備の贅沢品だったため、ササキさんのサニーには搭載されていない。夏の昼間は乗ることができないという弱点はあるものの、このスタイルが好きだからこそ大切に乗り続けているのだという。
今回のレッツチルアウトではサニトラ仲間のファミリーとともにグループキャンプを楽しんでいたササキさん。同じクルマが好きな者同士、ゆっくり酒を飲みつつ焚き火を囲む空間は、開放的な泊まりイベントの醍醐味だという。
「クルマが主体のキャンプイベントでしたので仲間と時間を共有できたのは何よりの楽しみでしたね。それに、ケータリングが揃っていたので、普段のキャンプ飯とは違って食べる楽しみもありました」
余談ながら、本格的にキャンプをはじめた頃はビーフシチューなど手の込んだ料理を作っていたというササキさん。次第にのんびりと時間を過ごすことを優先するようになり、装備同様にキャンプ飯もシンプルに変化していったという。
だからこそ、出展ブースで手間なく色んなグルメを楽しめる今回のイベントは、すべてにおいて大満足だったそうだ。
この車両はバンからワゴンへと構造変更をおこなっているそうだが、リアシートを倒して積み込める量におさめられるようキャンプ装備は吟味して厳選されたものに限られている。なおかつサニーとの調和を図れるデザインや素材、質感にもこだわりが感じられ、まさにオンリーワンのキャンプサイトを作り上げていた。
「今のクルマにはない直線と曲線が入り混じったデザインはこの時代のクルマでしか味わえない」とササキさん。だからこそ、ヤレ感はあえてそのまま残しつつ、今後は長く乗り続けていくために必要なエンジンや内装を中心にリフレッシュを考えているという。
快適装備を満載した現代のクルマとはちがって、昔ながらのサニーは例えるなら不便を楽しむキャンプに近い存在でもある。最新のクルマに便利アイテムを満載していく快適キャンプもいいけれど、あえて不便さを楽しむのがササキさん流のカーライフ&キャンプスタイルというわけだ。
取材協力:レッツチルアウト
(文:渡辺大輔 / 撮影:中村レオ)
[GAZOO編集部]
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