19才の初心者女子が“丸さ”にこだわって選んだ相棒は37才年上のVWタイプ1“ビートル”
「生産年式1985年までの国産車及び空冷エンジン搭載のVW」で「鉄バンパー装着車」というエントリー条件である『ジャストマイテイストミーティング』に、多数参加していたフォルクスワーゲン・タイプ1、通称“ビートル”。
その中で、会場の一角にあった運営スタッフのこだわりの愛車が展示されているエリアに、初心者マークがついたタイプ1が佇んでいた。
19才の来愛さんがオーナーであるそのタイプ1は、彼女より37才も年上のクルマだ。ボディの各所に見られるサビ、重たいハンドル、安全装置もナシとくれば、新型車と比べて機能的に劣っているのは明らかである。
ただ、“劣っている”と思えばそれまでだけれど、“なんか面白い”と感じられれば、楽しいカーライフを送ることができると話してくれた。
「ビートルに乗るようになってから、クルマイベントのお手伝いをさせていただくようになったんですけど……、それまではイベントどころか、クルマにも興味なんてなかったんです(笑)」
そんな彼女がタイプ1に乗ることになったキッカケはというと、ご両親から前の愛車だったムーヴを妹さんに譲るようにと突然言われたからだったと、あっけらかんと笑う。
次のクルマを選ぶにあたってもそれほどこだわりはなかったとのことだが、ひとつだけ“これは外せない”というポイントはあったのだとか。
「“まぁるいデザイン”というのが譲れないポイントだったんです。でも、いざ探してみるとライトが切れ長でキュッとつり上がっているクルマが多くて。丸いフォルムのクルマもあるにはあるけど、どれもコレだ! というものが見つからなかったんです」
妥協はしたくないと模索しているうちに、ふとあることが胸をかすめたのだそうだ。
「古いクルマの中からも探してみよう」
そういった経緯で丸さを追求しながら見つけたのが、このクルマだったと嬉しそうに微笑んだ。
来愛さんの愛車は、ドイツの自動車メーカーであるフォルクスワーゲンが初めて製造した乗用車のタイプ1。小さく丸いフォルムがカブトムシにそっくりなので、英語でカブトムシを意味する“ビートル”の愛称で多くの人に親しまれている。
そんなタイプ1だが、後継モデルである“ニュービートル”が登場するまでの1941~2003年のあいだ、フルモデルチェンジすることなく長きにわたり製造されてきた。
「どうせ古いクルマに乗るんだったら、今のクルマにはないデザインに乗ろうと思ったんです。となると、高年式だとヘッドレストが付いていたり、シートが今のクルマと似ているから、年式の古い個体を選ぶしかなかったんですよね」
そうして、こだわり抜いて手に入れたタイプ1は、1966年式。丸いライトや曲線を描くリアのボディライン、愛嬌のあるフロントマスクが来愛さんの心を掴んで離さないのだとか。また、空冷水平対向4気筒エンジンをリヤに搭載するRR車なので、トランクルームが前側にあるところも特別感があって気に入っているそうだ。
休日は、ここに椅子やお皿を詰め込んでBBQに行くこともあるのだとか。
「見た目は自分の理想には申し分ないんですけど、それだけじゃダメなのがビートルの面白いところなんです。乗り続けるためには、自分もスキルアップしていかないといけないんです!」ということだが、トランスミッションがMTなことがそれにあたるそうだ。
当初はオートマ限定で免許を取っていたため、まずはそこが壁になったと思い出して笑みを浮かべていた。
「免許を限定解除して、いざ初めてのMT車運転だ~! って意気込んでいたんですけど、運転もなにもギアが入らないんですよ。とくに4速から2速が入りにくくて、グアングアン車体が揺れてましたね(笑)。
あとは、坂道発進がなかなか……。そして、大丈夫かな? って心配しているときに限って、私が先頭なんですよねぇ。後ろに迷惑かけちゃう、初心者マークが貼ってあるから許して! という気持ちでドキドキしながら発進していました。でも、それ以上に“自分でクルマを動かしている感”があるから楽しくて。パワステが付いてなくても全然OKでした」
そんな来愛さんにタイプ1の走行性能について伺うと、走りについてというよりも、“色々なことが心配で眠くならないこと”が魅力だと胸を張って答えてくれた。
とはいえ、ハンドルを握って4ヶ月たった現在は、今回のイベント参加のように京都から岐阜くらいまでは余裕で走れるようになったという。
故障や維持に関しても不安はあったそうだが、これはフォルクスワーゲン・タイプ2に乗っていたお父様の心強い助っ人があったということだ。どうやら“まぁるい”デザインが好きなのは、親子共通だったようだ。
事実、友達とご飯に行って動かなくなったときも、JAFよりも先にお父様を呼んだら走れる状態に直してくれたのだと自慢げに鼻を鳴らしていた。
故障以外にも、心強い助っ人(お父様)にはいろいろなことをお願い(注文!?)しているそうだ。まずは、サビによって穴が開いてしまったフェンダーと右ドア下の鈑金塗装。これによってタイヤが巻き上げた水で床が水浸しになってしまうという事態を免れたのだとか。
ラジオにBluetoothを取り付けて音楽を聞けるようにもしてもらったという。
「音楽を聴くのが大好きだから、買ってすぐにやってもらいました。もともと付いていたスピーカーは今のクルマと比べると音質が悪いですが、それもひとつの個性として、そのままにしておくことにしました」
使い勝手の良いドリンクホルダーもお父様による自作品で、取り付けてくれ大満足だったと満面の笑みを見せてくれた。この笑顔を見てしまうと、多少の無理難題は聞いてしまうのだろう…と確信した。
と、ここまでお話を伺うなかで、来愛さんは1度も“大変だ”という言葉を使わなかった。むしろ、それが楽しい! 次はどんなことが待ち受けているのか? と胸を踊らせているようにすら見えた。
「購入したばかりだし、旧車オーナーとしてはまだまだなんです」と謙遜していたが、この短期間で“旧車の面白さ”を見つけているとなると、立派な旧車オーナーであることに間違いないはすだ。
次はどんなことが待ち受けているのだろうか? それは、来愛さんとビートルと、そしてお父様のみぞ知る!!
To be continue♡
取材協力:ジャストマイテイストミーティング
(文:矢田部明子 / 撮影:平野 陽)
[GAZOO編集部]
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