「家族が安心快適に乗れるように」エンジン&AT換装や快適装備追加でアップデートした縦目のグロリア

  • 日産・グロリア(タテグロ)

1980年代以降巻き起こったマッスルカーをはじめとする往年のアメリカ車ブームに端を発し、1990年代には日本車をアメリカンな雰囲気にカスタマイズする流れも一大ムーブメントに成長していった。
そんな中、アメリカを感じられるベース車として一躍脚光を浴びたのが、kazzeeさんが所有する1970年式日産グロリア(HA30)、通称『タテグロ』だ。

タテグロは日産とプリンス自動車の合併時の1967年に発売された3代目モデル。プリンスグロリアは、初代からアメリカ車のデザインを色濃く踏襲していたのが特徴のひとつ。

なかでもヘッドライトが縦に2灯並ぶ特徴的なフェイスに直線的なボディライン備えるタテグロは、リンカーンやポンティアック、クライスラーといった当時のアメリカ車のデザイントレンドを取り入れていたというのは有名な話。
1990年代のブーム時にはアメリカ的デザインを手軽に楽しめる「代用アメ車」として人気を集めたモデルだ。

  • 日産・グロリア(タテグロ)のフロント
  • 日産・グロリア(タテグロ)のNマーク
  • 日産・グロリア(タテグロ)のリアのロゴ

セダンやバンなど26年で3台のタテグロを乗り継いできたというkazzeeさんも、気軽にアメリカ車的な雰囲気を楽しむことができたことが、このモデルにドハマリした理由だという。

「もともとはアメ車っぽいスタイリングが気に入ってセダンに乗っていたんですよ。その後1台目のMTから2台目のATへ同じセダンで乗り替え、さらにバンへと移り変わった感じですね。このバンは家族が増えたタイミングで奥さんが広いクルマが欲しいって言い始めたのがきかっけで、14年ほど前に乗り替えました」

タテグロのセダンから乗り換える際、奥さんは実用的なミニバンを希望していたものの、kazzeeさんが購入したのはまたしてもタテグロ。セダンからバンに変わることで車内スペースこそ広がったものの「奥さん的には不本意な結末となってしまったようだ」というのは、今だから語れる笑い話なのだとか。

  • 日産・グロリア(タテグロ)のエンジンルームを覗くオーナーのkazzeeさん

もちろんファミリーカーとして迎え入れるからには、家族全員が不安なく快適にどこでも行けるクルマに仕上げることは大前提。

「エンジンとミッションは同じ日産のRB20に積み換えました。さらにブレーキもローレルのマスターバックを流用して安全性をアップしています。ノーマルのG7エンジンもメンテナンスをしっかりしていれば壊れないんですが、年式的に新しいRB20の方が安心感は高いですからね」

安心して使い倒せるスペックに進化したことで無事にファミリーカーとして受け入れ(諦め!?)られ、以来ドライブや買い物、さらに車中泊などアウトドアでも活躍するようになったという。

  • 日産・グロリア(タテグロ)のリア

製造から50年以上が経過しているもののボディコンディションは良好で、オリジナルペイントの独特なホワイトが綺麗な状態でキープされている。バンパーなどのメッキパーツも美しい状態を保持しているのは、ファミリーカーとして大切にされてきた証ともいえるだろう。

また、タテグロから最終モデルのY31ワゴンまで受け継がれる左クォーターウインドウのパワーウインドウも健在だ。

  • 日産・グロリア(タテグロ)の左フロント
  • 日産・グロリア(タテグロ)のホイールとタイヤ

ちなみにタテグロはP.C.D.が139.7の5穴という特殊なハブサイズが採用されているため、ホイール選択の自由度が極端に少ないのが悩みどころ。

「このグロリアは昔から大好きだったエンケイ・5スポークの後期モデルを装着するために、フロントハブをP.C.D.114.3に変更して、リアのホーシングは230セドリック用に交換しているんです。ただ、最近はホワイトリボンタイヤが少なくなってきていて、理想サイズである185/75R14の選択肢がなくなってきているのは悩みなんですよ」

旧車オーナーにとってパーツ供給は死活問題でもある。それはクルマ自体の部品だけに限らず、タイヤなどの消耗品に関しても大きな問題なのだ。
そのためkazzeeさんは、これからもタテグロに乗り続けていくためのライフワークとして、アジアメーカーなどを含む様々なタイヤメーカーで希望サイズのホワイトリボンタイヤをチェックしているそうだ。

  • 日産・グロリア(タテグロ)の運転席に座るkazzeeさん
  • 日産・グロリア(タテグロ)のフロントシート

ノーマルのコラムシフトをそのまま活かしATを組み合わせることで、インテリアも基本的にはノーマルの雰囲気をキープ。しかしエンジンやミッションを積み換えることで、その走りは現代の道路事情でも不安は一切なし。
趣味とファミリーカーとしての実用性を併せ持つタテグロは、kazzeeさんにとってまさに理想の1台といえるだろう。

フロントシートは本来セパレートシートだったものの、偶然同色系のセダン用ベンチシートが手に入ったため交換したという。

1990年代当時のアメリカンカスタムで大人気の“ベンコラ”(ベンチシート&コラムシフト)で仕上げているあたりも、長年のタテグロ歴を持つkazzeeさんこだわりの仕様といえるだろう。

  • 日産・グロリア(タテグロ)の運転席とDVD用のモニター
  • 日産・グロリア(タテグロ)のスピーカー

またファミリーカーとして重要なのは幼い子供が飽きないでいてくれること。そのためダッシュボードには1DINサイズのDVDモニターを設置しているのは苦肉の策。当時流インテリアの中で、唯一近代的な装備はそんな家族思いの理由があるというわけだ。

「DVDが見られるようにしているのは子供のための装備です。ただ、スピーカーは当時モノを探してラゲージに置いてありますが、レストアはしていませんので音質的には……。それでも子供たちには大好評でしたね。あとは夏でも快適に乗れるようにビンテージエアのエアコンキットを使って、純正の吹き出し口からエアコンもしっかりと効くようにしてありますよ」

  • 日産・グロリア(タテグロ)のオーナーズクラブのパーカー

今回のジャストマイテイストミーティングではカークラブとして何台かのタテグロがエントリーされていた。
クルマを介して仲間ができることも楽しみのひとつだし、同じ車種のネットワークで様々な情報を共有することは旧車乗りにとって重要なことでもある。
kazzeeさんにとってタテグロは趣味でありファミリーカーであり、さらに仲間と楽しむためのツールという、かけがえのない存在なのだ。

  • 日産・グロリア(タテグロ)のの左フロントビュー

14年前に迎えたタテグロのシートに喜んで乗っていた娘さんは、大学生になって自分で運転したいという年頃に成長したという。
父としては子供が成長し、唯一無二の愛車に対して興味を持ってくれたことは喜ばしいかぎり。
また、快適仕様に作り上げた甲斐あって、娘さんにとっても良い思い出がいっぱい詰まっているに違いない。

このタテグロは、kazzeeさんだけにとどまらず、親から子へと受け継がれる旧車趣味というクルマ好きが夢見る憧れのシチュエーションを実現した1台というわけだ。

取材協力:ジャストマイテイストミーティング

(文:渡辺大輔 / 撮影:土屋勇人)

[GAZOO編集部]

ジャストマイテイストミーティング

MORIZO on the Road