家族の一員である新型ジムニー(JB64) に、家族の幸せを託した方法は?

  • スズキ・ジムニー (JB64)

    スズキ・ジムニー (JB64)

「愛車の数だけ、いくつもの思い出があります」と笑みを零しながら話してくれた三浦さんは、免許を取って初めてのクルマがJA11型、その次がJB23型、そして現在はJB64型と、ジムニーを乗り継いできたという。
「私は免許を取ったのが24才と遅かったんですけど、乗りたいクルマだけは小さい頃からなんとなく決まっていたんです。父が『ジムニーって良いクルマだよな』って言っていたことが頭の片隅にずっと残っていて、愛車はそれにしようと思っていました」

当初は「どうせ乗るならマニュアル車にしよう!」と決意していたのに「やっぱり初心者には運転がキツイかも…」と思い直し、結局AT車を購入したのは少し恥ずかしい思い出だと教えてくれた。そういった経緯で購入した初めての愛車がJA11だったわけだが、三浦さんはこの型のジムニーが1番好きなのだそうだ。
「JA11は私が乗ってきたジムニーの中で唯一の板バネ(リーフスプリング)なんです。『乗り心地が悪い』と感じるひともいるかもしれませんが、私はあれが“The・クルマ”って感じで大好きです。角張っていて無骨な感じのフォルムもタイプだったんですよ。だから手放す時もすごく悲しかったなぁ」

そんな三浦さんがJB23に乗り換えたのは、本格的にオフロード走行に挑戦しようと思ったのがキッカケだという。
サスペンションがリーフリジット式のJA11よりも、コイルスプリングを採用するJB23の方が、サスペンションの動きが良く、路面を掴みやすかったからだそうだ。
「当時、オフロード仲間の間では、レスポンスも良くて路面からの振動や衝撃を吸収する23ジムニーが主流になりつつありました。確かに、タイムトライアルのようなスピードがある競技などは、これが走りやすいんですよね。それで私も乗り換えたという感じです」

「競技といっても私なんて、ちょっとかじったことのある程度で、遊びの延長戦みたいなものですから。もともとインドア派だし、グイグイいくタイプじゃないんですよね」
そう言いながら照れて伏し目になる三浦さんの横で「いや、そんなことないと思うけどな」と、旦那様が会話に入り込む機会を狙っていたかのように話し始めた。
「妻が走るレースはよく見に行っていたんですけど、結構度胸のある男らしい走り方をするんですよ。サイドシルがボコボコに凹むくらいの走り方(笑)!ただ、すごく楽しそうに走るから、好きにやってくれればいいと僕は思っていました」
「う~ん。あの頃はどハマりしてしまって、ちょっとおかしくなっていた気もするけど、そうだったかなぁ?意外に行けちゃうからついつい走っちゃったのかなぁ(笑)?」
青森県平川市でジムニーのカスタムを手がける『オールホイールズトライバル』でお世話になりつつ、競技にも参加するなど三浦さんのジムニーライフはどんどん濃厚さを増していったようだ。

自力で登るには到底無理だと思うような道を、ジムニーだとぐんぐん進んでいけるのが、とてつもなく楽しいのだという三浦さん。『あんなにゴツゴツした岩をどうやって登るんだ!?』と半ば諦めかけていても、ライン取りさえしっかりすれば走破できてしまう。その、達成感と喜びがとても魅力的なのだそうだ。
「かなり車体が傾いてるなぁ~と車内で感じても、外から見るとそうでもなかったりするんですよ。だから、ついついやりすぎちゃうこともあります(笑)。怖い!どうしよう!このままじゃひっくり返っちゃう!?って思っても、終わればやり切った感があって、そのドキドキ感も病みつきになるんですよね~。当時は、青森県にある浪岡という所に住んでいて、山の中や岩の上、モーグルコースを走れる場所があったんですよ。職場も近くて環境も整っていたから、暇さあれば行っていましたね」
幸い、横転してしまったことはないそうだが、ギリギリのところでオフロード仲間に助けてもらったことはあると苦笑い。

こうしてオフロードの楽しさを知ってしまった三浦さんは、その後もどんどんのめり込んでいったそうだが、その代償としてJB23には至る所にガタがきてしまったという。
次の車検を通そうとショップに持っていったときに「修理するよりも別の1台を購入した方が費用が抑えられるよ」と言われ、現在の愛車である新型ジムニーの購入に踏み切ったのだという。

「タイミング良く新型ジムニーが発表されたので、全貌を見ないまま飛びつくように注文しちゃいました。ただ、色だけは発表されていたんです。今までのジムニーは中古で購入していたから、自分で好みのボディカラーを選ぶことはできなかったんですよね。JA11とJB23は黒と白だったんですけど、正直に言うとあんまり好きな色じゃなかったんです。だから、新車だと好きなボディカラーが選べるのが嬉しくて“ミディアムグレー”を選びました」

そして、いよいよ納車の日。「どんな形をしているんだろう?」と、おっかなびっくりで初対面した新しい愛車は、角張っていて無骨なフォルムが自分好みで胸が弾んだという。
今までの愛車には付いていなかったという助手席のシートヒーターは息子さんのお気に入りだ。

「車高はちょっと上げています。あとはグリルも交換して、純正バンパーの下の部分をカット!こうすることでバンパーが細くなって、その分車高が高く見えるんです。まぁ、貧乏チューンですけどね(笑)」

「貧乏チューンって言えば外装の塗装もじゃないの(笑)?バンパー部分をチッピングスプレーで塗装しているんですよ。表面に凹凸が出来て、マットな質感になるというか、無骨な雰囲気が増すっていう感じですかね。これね、僕がやったんですよ。お願いされたというより、半ば強制的にやらされました(笑)」と旦那さん。

作業を強制したかどうかについてはイタズラっぽく笑うだけでなにも答えてくれない三浦さんだが、2人で顔を見合わせながら、これが楽しいのだと答えてくれた。次に施すカスタムを考えたり、新しいカスタム部品に関して相談したりというのが夫婦の日常の会話なのだという。
ちなみに、旦那様も初めて乗ったクルマがジムニーだったため、思い入れのあるクルマなのだという。

夫婦で理想とするジムニーに仕上げていきたいという三浦さんの次なるカスタムは、バンパーとマフラーをスッキリと見せること。ただし「私は静かでいいかなって思うんですけど、旦那は大きい音の方がいいんじゃないかって言うんです」と、マフラー音については意見が食い違っているのだとか。数ヵ月後、どんな変貌を遂げているかが気になるところである。

「大きいオモチャですかね。イジって乗ってと、いろいろ楽しみ方がありますから。私たち夫婦にとっては共通の話題のネタであり、息子にとっては小さい頃から見ているし乗っているから側にいて当たり前のクルマでしょうしね。楽しいクルマですよ、ジムニーって。オフロードもまた挑戦していけたらと思うんですけど、それはもうちょっと色々なことが落ち着いてからかな」
最後に、三浦さんとってジムニーはどんな存在なのか伺ってみると、こんな答えがかえってきて、心がほのかに温まり微笑みが浮かんだ。

今回の取材中、1番印象的だったのは三浦さんの表情だ。
優しく包み込むような、なんともいえない表情で遠くを見ているその視線の先を追うと、ジムニー越しに旦那様と戯れる息子さんが見えた。
「何やってるの~?汗、こんなにかいて~」と2人に駆け寄っていくようすを眺めていると、まるでジムニーから幸せな灯りが溢れ出しているように感じた。
オフロード走行やカスタムの内容うんぬんといったストーリーよりも、愛車との充実したカーライフを物語ってくれるのは、オーナーが幸せをかき集めたような顔をしていることなんだと思いしらされた。
これからも、三浦家らしいジムニーライフを送れますように。

取材協力:旧弘前偕行社

(文:矢田部明子 / 撮影:平野 陽)

[GAZOO編集部]