「スポーツカーとの出会いが私を変えた」思い通りに操る楽しさを教えてくれるトヨタ86
「免許を取ってから、早めのタイミングで86に出会えて良かったと思っています。だって、ちょっとでも長く楽しみたいじゃないですか」
トヨタ・86 GTリミテッド(ZN6)に乗る『たわのん』さんは、このクルマを愛車に迎え入れてから、一言では語れないくらいの変化が自分の中にあったという。クルマに対する価値観、休日の過ごし方、幅広い年齢層の友達が増えた、というのはよくある話だが、自分を取り巻く環境や性格までも少し変わったそうだ。池に石が落ちて、そこから波が広がって大きくなっていくように、じわりじわりと変化していったと話してくれた。
たわのんさんがスポーツカーに乗ってみたいと思うようになったのは、友達に誘われて行ったツーリング会の影響が大きいという。等間隔で行儀良く並んでいるスポーツカーを訳もわからず眺めていると「スポーツカーに乗ったことないの? 良かったら助手席に乗ってみる?」と、隠しようもない得意顔をしたオーナーに誘われて、言われるがまま助手席でシートベルトを締めたのがことの始まりだそうだ。
「それまで、スポーツカーに乗るという人生を送ってこなかったんですよ。というか、クルマ自体にあまり乗っていなかったですね。職場は歩いて行ける距離だったし、休日も家から一歩も出ずに部屋でゴロゴロしているタイプだったので」
そんなたわのんさんが助手席に座ると、スポーツカーは思っていたのとは違う、想像以上の楽しさを体感させてくれたという。
車高が低く目線が道路に近いため、まるで這っているように進んでいく感覚。大きな音の出る騒がしいマフラーは、アクセルを踏むとさらに大きくなって実際よりもスピードが出ている錯覚に陥いるということ。そして、くねくねした曲がり道は体を左右に持っていかれるが、まるでそれが遊園地のアトラクションのようで、とにかく良かったのだそうだ。
この体験で“味をしめた”というたわのんさんは、ツーリング会に行くたびに色々なスポーツカーに乗せてもらったそうだ。そうすると、クルマによって個性がそれぞれ違い、それと同じように、乗る人の性格が運転に反映されることに気付いたという。
相変わらず『シフトダウンがどーのこーのという話は意味不明だった』そうだが、ひとつだけ、どのオーナーにも言えることは“楽しそうに運転している”ということだったらしい。
「みんな、イキイキしているんですよ。『楽しい!』という気持ちが体全体から溢れ出ているというか。そんなのを隣で見せられたら、自分も試してみたくなるのが人間ってやつじゃないですか(笑)。自分のクルマで、私の運転で走ってみたいと思うようになりました」
とは言ったものの「どんなスポーツカーに乗りたいのか?」と聞かれると「どんなスポーツカーがあるのか知らない」というレベルだったと笑っていた。
ただし、クリアしておきたい条件があったそうで、家族4人が普通に乗れるということと、ある程度荷物が詰めて、利便性のあること。そして1番ハズせなかったポイントは“マニュアル車であること"だったという。
「回転数によってシフトをガチャガチャ変えていくんですけど、アクセルの踏み方やハンドルの切り方よりも、このシフトチェンジのタイミングが1番その人の特徴が出ているなと思ったんです。いろいろな人の運転を見ていて、オートマよりもより自分の思うようにクルマを操れそうだなと感じたんです」
ちなみに、この取材から1ヶ月後にご結婚が決まっているという旦那様のシフトチェンジについてお話を伺うと「ギアを変えたときにギアショックがほとんど感じられず、まるでオートマ車に乗っているようだった」と回答してくれた。そしてたわのんさんが『どういうことを心掛けて運転しているのか?』と聞くと、隣に座っている人が酔わないように、気持ちよく乗れるように運転していると言ったそうだ。
のちに、このスマートな運転と回答が鍵となって交際がスタートするわけだから、運転がいかに重要なことであるかを筆者は悟った。
さて話を戻すと、たわのんさんのクルマ選びの条件を聞いて旦那様が提案してくれたのはスイフトスポーツ、RX-8、インテグラタイプRなど4ドアのスポーツカーだったとのこと。自身とのカーライフを思い描きながら、現物があれば足を運んだりもしたという。
そして、悩んだ末にたわのんさんが購入したのが、それまで1度も候補に挙がったことがなかった86だったというわけだ。
「ネットでスポーツカーを検索していたら、一目惚れしてしまったんです♡ 後席にはぎゅうぎゅうで座ってもらって、荷物も押し込めばいけますから♪」
そう無邪気な笑顔を見せている横で「僕の提案は何だったんだ…」とブツブツ言う旦那様との天と地の差に、絶対に笑ってはダメだと必死に堪えたのは内緒である。
兎にも角にも、こうして20歳の頃に愛車として2012年式の86を迎え入れたわけである。納車日に改めて見る愛車は、ヘッドライトがキリッと上がっていて、迫力のあるバンパーがいかにもスポーツカーという感じがしたという。「派手すぎかも?」と懸念していたボディカラーは、太陽の光をバッチリ反射して挑発的に輝いていたそうだ。
ただ、ここからが問題だったと表情を曇らせた。オートマ限定解除はしたものの、教習所内を数回走っただけで、購入した86の納車日に初めて公道に出るという流れだったからだ。それだけではない。それまで月に数回ほどしかクルマに乗っていなかったたわのんさんは、そもそも運転に慣れていなかったのだ。
教習所のクルマとは半クラの位置が違ったため、最初はシフトチェンジが上手く行かず発進すらできなかったらしい。そうすると、先程までの嬉しいという気持ちはどこかに消え去り、無事に家まで帰らなければという使命感に襲われたという。
「発進が苦手で手こずっちゃうから、後ろからクラクションを鳴らされるんですよ。分かってる! 青信号なのは分かってる! と何度も思いました(苦笑)。いつも助手席専門だった私が、今度はみんなでツーリングに行けるんだと思っていたから、結構ショックでしたね…そこから2ヶ月間、坂道発進やシフト操作などを練習して、なんとか仲間達とのツーリングに行けるまでに成長しました」
エンストをしなくなって曲がった初めてのコーナーで、自分とクルマが一体になり、一緒に走っているという不思議な感覚を味わえたという。このように、クルマとリンクしているということがたわのんさんにとっては重要で、そういった点を重視してカスタムも施しているという。
純正より少し抜けが良いマフラーに交換したことで発進時の吹け上がりのタイムラグが減り、普段使いに支障がない程度に車高を下げることで左右に揺れず安定して走れるようになったそうだ。
「大きな変更点でいえば ファイナルギアを4.1から4.5というのにしたことです。86の後期GRモデルに乗る機会があって、加速の仕方や回転数の上がり方などが全然違ったので調べてみると、ここの違いが大きいのかなと思いまして」
ローギアード化による変化について流暢に話すその姿は、発進が上手くいかずに、後ろからクラクションを鳴らされていたとは思えないほどだ。
旦那様もその変わりように驚いたそうで、下道で4時間かけて1人で仙台に行くようになるとは思ってもみなかったと話してくれた。
「実は、1番驚いているのは私なんです。生活圏は自宅付近だったのに、天気が良いと用事がなくても遠くにお出かけしたくなっちゃうんです。今までこんなこと思いもしなかったのに。だけど、これは良い変化だと思うんです。こっちの方が充実した時間を過ごせている感じがしますから」
行きたい場所があったり、同じ趣味を共有できる友達と話す時間は、たわのんさんの人生において、重要で生活を豊かにしてくれる大切な時間だということだ。世界が一気に広がり、色々なことを知ることができたので、それもプラスになったと笑顔で教えてくれた。
そして、86は旦那様と たわのんさんの恋のキューピットでもあるという。86を購入して2年目で交際がスタートし、運転の特訓、一緒にツーリング、カスタムの相談と、色々なイベントを一緒に楽しんでいるうちに惹かれあったのだという。
もちろん、前述した“運転するときに心掛けていること”の印象が大きく影響しているのは言うまでもない。
「クルマでこんなに人生が変わるとは思ってもみませんでした。私は86に乗って良かった!」
これからも長く乗っていきたいとのことで、日々のメンテナンスをしながら走行距離を伸ばしていくと意気込んでいた。さて、次はどんなイベントがたわのんさんを待っているのだろうか? 考えると、ワクワクする。
取材協力:道の駅 あきた港 ポートタワーセリオン イベント広場(秋田県秋田市土崎港西1-9-1)
(⽂: 矢田部明子 撮影: 堤 晋一)
[GAZOO編集部]
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