アメ車好きだったはずが気づけばロードスターの虜。今ではカフェのマスコット的存在に!

  • GAZOO愛車取材会の会場で道の駅 あきた港 ポートタワーセリオン イベント広場で取材したマツダ・ユーノス ロードスター(NA8C)

    ユーノスロードスター(NA8C)

オリジナルスパイスカレーがイチ押しで、日中はランチやデザート、夜にはバーも営業している秋田県秋田市のカフェ『GZLAMP ジーズランプ.akita』。このカフェオーナーでもあるみゆきさんの愛車は、リトラクタブルヘッドライトが可愛らしい1993年式のロードスター(NA8C)。
今ではすっかりお店のマスコット的存在となった愛車と、明るく気さくでクルマ好きなみゆきさんが出迎えてくれるこのジーズランプには、一般のお客様だけでなくクルマ好きなお客様の来店もとても多く、店内の一角にはお客様が持ち寄ったミニカーなどが飾られた棚まで存在するほどだという。

ところがそんな現状は、みゆきさんがこのカフェをオープンした際に意図したものではなかったのだとか。そもそも、このロードスターも彼女自身の意志で手に入れたものではなく、当初はあまり気乗りもしなかったのだという。
今回はそんなみゆきさんがロードスターを愛車にしたことで大きく変わったというカーライフをご紹介したい。

「鈑金塗装業をしている旦那の影響もあって、以前からアメ車が好きでした。エンジン音が大きくてカッコいいなって。特に旦那が乗っていたシボレーのエクスプレスが大好きで。ただ、自分で乗りまわすということは想像もつかなかったので私は日産のモコに乗っていました。でも5年前の2018年に、クルマ好きな旦那の先輩が所有していたEK9型シビックを私にプレゼントしてくれるという話が浮上したんです。ただあまりにもカスタムされすぎていたので結局は旦那が乗ることになり、その時に『おまえにもプレゼント買ってきたよ』的なかんじで一緒にこのロードスターも我が家にやってきたんです」

当時のみゆきさんが興味を持っていたのは大きなアメ車。しかもロードスターというクルマのこともまったく知らなかったそうで、車体もボロボロだったことから「え! これに乗らなきゃいけないの!?」と戸惑いを隠せなかったという。
「今考えると旦那の計算通りだったのだと思います(笑)。そのロードスターはサビも進んでとにかくボロかったこともあり、旦那は買ってすぐにリペアと全塗装をしました。あとはソフトトップの後ろのビニール製スクリーンが汚れすぎていて“視界ゼロ”状態だったのでそれも取り換えて、ボロいながらも私が乗りはじめることになりました」

こうして突然やってきて半ば強引に愛車となったロードスターが、その後みゆきさんのライフスタイルに大きな影響を与えることになるなど、この時の彼女は知る由もなかった。

その後、2021年に自宅兼店舗でカフェ『GZLAMP ジーズランプ.akita』をオープンしたというみゆきさんは、知り合いもいない土地で女性1人でお店を始めることに不安を感じ、とある行動に出たという。
「SNSで1000人くらいのメンバーがいる秋田のクルマ好きグループページに書きこんでみたんです。そうしたら、その書き込みを見てお店に来てくれるクルマ好きの方がとても多くなって、そんなお客さんたちにこのクルマの価値を教えてもらっているうちに、どんどんロードスターが好きになっていきました。そして、お客さんたちに『あれが壊れた、これがダメになって悲しい』って話をしていたら『ちょうどウチに使わなくなったこういうパーツがありますよ』と譲ってくださるようになったんです」
SNSの宣伝で興味を持ってお店に来店したクルマ好きな方々にとって、気さくで明るくクルマの話題で盛り上がれるみゆきさんのカフェは、きっととても居心地が良いに違いない。そしてそんな人柄の彼女が困っているのであれば手助けしたいと思うのも当然の流れだったのかもしれない。

「BBSホイールとファッションバーはお客さんからのいただきものです。『これを付ければ
全然印象が変わるよ』って言われて、本当ですかという感じだったんですけど、実際装着してみたら派手すぎずめっちゃカッコよくてスポーティな感じになったので、ありがたく使わせていただいています。お客さんによるとこの内装は何かの限定車みたいで、内装はベージュのレザーで、純正はサイドブレーキやシフトノブ、ステアリングもウッドみたいですね。ちなみにシフトノブもお客さまからのご厚意でいただいたものです」

「実際にロードスターに乗ってみると、思いのほか楽しかったんです。とくにカーブですね。やっぱりトルクとか馬力はそこまで優秀な子ではないんですけど、スピードを出して攻めている訳ではないのにカーブがすごく楽しい!」

また、みゆきさんが1番気に入っているというのが初代NA型の特徴でもある丸目のリトラクタブルヘッドライト。
「NBもNCもNDも悪くないけれど、やっぱりこの丸目のリトラがないと…。ロードスターに乗らない人からすると全部同じクルマでしょっていう人もいますけど、私には違うクルマとしか思えないんです」

すっかり愛車となってみゆきさんからの寵愛を受け、お客さんたちにも可愛がられて輝きを増していったロードスターは、さらにクルマ好きではない一般のお客さんまで魅了していく。
「ある事情からガラス張りになっている玄関の正面にロードスターを停めるようになったんですが、店内で飲食をしていたお客さんから『窓から見えるって最高じゃない!』とすごく好評をいただくようになったんです。クルマ好きでない年配の女性の方が『可愛い』と言ってくれたり小さなお子さんが『一緒に写真撮っていい?』と言ってくれたり。今ではみんなから“かえる号”と呼ばれています」

そんなみゆきさんとロードスターは、今では一緒にイベント出展に出向いたり、店内でクルマ好きなお客さん向けのイベントを主催したりと精力的に活動しているとのこと。
「年に一度の『秋田オールドカーミーティング』っていう旧車ミーティングイベントに出展するときには、ノボリや資材なども全部ロードスターに積み込んで向かうんですが、オープンにして助手席にも積み込めば想像以上に運べるんですよ! そして、ロードスターを横に置いて店頭売りさせていただいていると『懐かしい』と声をかけていただいたりして人気があるんです。あとはお店でクルマ好きだけが集まる貸切日を作って、駐車場に停めた自分たちの愛車を眺める『ただ夢を語るだけの会』を開いてみたり(笑)」

古いクルマだけにメンテナンスや維持は大変だと思うが、クルマに詳しい旦那様がいることは心強いのでは?と伺ってみると…
「去年もエンジンが動かなくて1ヶ月不動だったこともあったんですが、そういうのも旦那が修理してくれたので助かっています。ただ、最近は『自分で調べてやりなさい』と言われることも多くて…。ちなみに旦那はもうロードスターと一緒にきたシビックを降りてアメ車に戻っていて、エアコンが壊れていて狭いこの子で移動するのも嫌がるんですよ(苦笑)。夏のオープンカーはエアコンがないとキツいですけど、開けている時はどんなに暑くてもカッコよく涼しい顔して乗らなきゃいけないじゃないですか。特に女性だとよく見られるので…」と切実な様子が印象的だった。

古いクルマであればあるほど、乗り続けることに不安を感じるのは当然のこと。しかし頼りになる旦那様や彼女のファンとなったクルマ好きなお客さんたちがついている限り、きっとそんなピンチも乗り越えられるのではないだろうか。
「本当に、このクルマがないと知り合わなかった人ばっかりです。ここまでハマるとは思いませんでしたね」そうみゆきさんは目を細めて微笑んだ。

ちなみに、この取材会の直前に発生した秋田豪雨によってお店の駐車スペースの一部が崩れる被害が発生したと伺っていたが、そちらも復旧に向けて邁進中とのこと。
素敵な笑顔のみゆきさんとシックで可愛いロードスターが出迎えてくれる『GZLAMP ジーズランプ.akita』は、きっとこの先もお客さんの笑顔で溢れているに違いない。

取材協力:道の駅 あきた港 ポートタワーセリオン イベント広場(秋田県秋田市土崎港西1-9-1)
(⽂: 西本尚恵 撮影: 平野 陽)
[GAZOO編集部]

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