ランドクルーザー60にぞっこん 角張ったデザインやエンジンの振動がやめられない
乗りやすさ、快適さ、速さ、カッコよさや可愛らしさ…
愛車に求める条件はいろいろあるけれど、トヨタ・ランドクルーザーといえば『質実剛健』なクルマと思っている人も多いのではないだろうか。
その歴史は長くモデルも多岐にわたるが、もともとは戦時中に開発された四輪駆動の軍用車を起源とし『堅牢さ』『悪路走破性』『信頼性』といった能力を求められ続けてきた。例えば2023年に再々販が決まって話題を呼んだ“ナナマル系”と呼ばれるモデルは、もともと1984年から2004年に販売されていたモデルのリメイク版であり、ラダーフレーム構造や電子デフロックなどによる強靭さや悪路走破性の高さが魅力。キャッチフレーズでも『“70”となら行ける。この大地のどこまでも。』と、その堅牢で剛健な性能を全面に打ち出している。
そして、秋田県在住の今野さんが乗る1989年式のランドクルーザー GX(HJ-60V)は、歴代ランクルの中でも“ロクマル系”と呼ばれるモデル。“ナナマル系”のひとつ前のモデルであり、1980年から1990年の10年にわたって発売され、本格ステーションワゴンとしてそれまでのランクルシリーズからイメージを変えようとクロームメッキバンパーの採用やインテリアの快適性アップが図られたモデルだ。
「天気の良い週末に、ドライブだったり、釣りだったり、海に行ってコーヒーを淹れたりってかんじですね。ふだんは通勤距離が2kmくらいしかないから、逆にランクルにかわいそうかなと思って平日はあまり乗らないです」
キレイに整えられた車内でお気に入りの小物に囲まれ、折りたたみ自転車を積み込んで気ままに出かける様子を想像するだけで、なんだかオシャレな雰囲気が伝わってくる。
クルマ好きで頻繁にクルマを買い替えていたというお父さんの影響でクルマに興味を持つようになり、自身もこれまでいろいろなクルマに乗ってきたという今野さんだが、ランクルとの出会いはというと?
「じつはランクルには最初はそれほど興味がなかったんです。でも、子供が小さい時に『安全なクルマってなんだろう?』と考えて、他人と同じのはイヤだなと選ぶうちに、これだったらいいかなと思ってランクルに乗りはじめたのが最初かな。もし何かあっても子供が守れる、そこが魅力的だと感じていましたね」
実は30代の頃にも同じ60系ランクルに10年ほど乗っていたことがあるという。そのときの購入動機は、まさに『堅牢さ』であり『信頼性』だったというわけだ。
その後しばらくクルマ趣味から離れ気味だったという今野さんだが、あるキッカケでクルマ熱が再開したのだとか。
「奥さんが乗るクルマとして旧型のランドクルーザープラドを購入したんです。角張ったデザインがカッコよくて、人数も乗れるクルマをと考えた結果だったんですが…それを見ているうちに自分も我慢できなくなって『俺も買う』と(笑)」
あくまでも勝手な推測ではあるが、奥様に78プラドを選んだ時点で、こうなる未来は見えていたのではないだろうか。
こうして今野さんが5年半前に購入したのが、1989年式のランドクルーザープラド GX(HJ-60V)だ。
「やっぱりデザインが好きなんですよね。乗り心地的にはいいものじゃないとわかっているんですが、でもなんだかやめれないんですよ。ディーゼル車の振動だったりエンジン音だったりがなんか抜けられないというか…また買ってしまったというかんじです」
まるで子供がおやつをつまみ食いして見つかった時の言い訳のような話をしつつ笑う今野さんを見ていると、このロクマルランクルの魅力がじわじわと伝わってくる。
そんな愛車とどんなカーライフを送っているのか?と伺った時の回答が、先ほどの「天気の良い週末に、ドライブだったり、釣りだったり」というお話だ。
「昔は冬でも普通に乗っていましたね。でも今は車両価格が高騰していて、もし次を買うとなったら簡単ではないなと考えちゃうなと思って。やっぱりサビちゃうんですよね。サイドステップは雪の影響でサビたから、板を3枚使って自分で曲げて作って鈑金屋さんに持っていって綺麗につけてもらいました。そして、2〜3年前の冬に本当に数回しか乗らなかったのに新品のグリルがダメになったので、さすがにもう冬に乗るのはやめようと決めましたね(苦笑)。去年ようやく車庫も買ったので、最近は冬眠させるようにしています」
「ランクルなのに、冬は乗らないし険しい道も走らないしキャンプもしません(笑)。どちらかというと、大切にしたいコレクションみたいなかんじですね」という今野さん。愛情を注いで大切に乗っていることは、必要最低限の物だけを置きつつキレイに保たれ、ところどころに自己主張が感じられる車内からも感じ取ることができる。
「チェック柄のフロアマットはドアを開けた時に明るい雰囲気になるし、広く見えるかなと思って。あと純正マットは使うのがもったいないので(笑)。運転席のシートも、純正っぽい生地で張り替えてもらいました。ドリンクホルダーは自分で作ってみたものです。あまり上手じゃないけど加工するのが好きなんですよね」
「もう一度ランクルを買おうと思ったとき、これより後のモデルはもっと快適装備なども充実していて乗りやすいのはわかっているんですが、やっぱり以前の思い出などもあってロクマルしかないなと思いました。あと、昔からの憧れだったのでバックドアが観音開きのタイプにこだわりました。実際は使いがってはあまり良くなかったけど、見た目はカッコいいのでお気に入りです。外装に関しては、丸目のクルマが好きで過去に乗っていたのも丸目が多いので、本当は前期の丸目が欲しかったんですが、なかなか出てこなかったので後期の角目を選びました。以前乗っていたロクマルも角目でしたね」
基本的に純正のスタイルがお気に入りとのことでなるべく手を加えないようにしているものの、唯一サイドミラーだけは「カッコいいから」とオーストラリア仕様に交換しているとのことだ。
「昨年『これまで何台くらいのクルマに乗ってきたのかな?』と思って数えてみたら、48台でした」という今野さんだが、特にお気に入りなのは1台目のランクルよりも少し前に乗っていた旧型のミニだったという。
「エンジンや足まわりなど自分で全部イジれちゃうし、本当に自分で運転している感が味わえるので乗っていて楽しいのは正直ミニのほうかな。半分ゴーカートみたいな感じですね。じつは、そっちも去年買ってしまいました(笑)。今はまだナンバーが付いていないですけど、これから乗りたいなと。ランクルはなるべくイジらないようにしているので、そのぶんミニで発散しようかなと思っています」
ランクルの方も「まだサビを直したりしている途中のところなんかもあったりして、しっかり仕上がっていないので、これからってかんじですね。走行距離は22万kmですがディーゼルエンジンなのでまだまだ乗れますし。もしも欲しかった丸目のロクマルが出てきたら買っちゃうと思うけど、たぶん乗り換えじゃなくて増車しちゃうかな(笑)」と、これからも楽しんでいきたいことが盛りだくさんの様子。
頼りになる相棒の“ロクマル”ランドクルーザーを手に入れたことで再び動き出した今野さんのカーライフは、まだまだ続いていきそうだ。
取材協力:道の駅 あきた港 ポートタワーセリオン イベント広場(秋田県秋田市土崎港西1-9-1)
(⽂: 西本尚恵 撮影: 平野 陽)
[GAZOO編集部]
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