手塩にかけたGT-Rを手放して購入したスカイラインクーペでオンリーワンを探求する
10年を共にしたR32型スカイラインGT-Rを手放して、新たに手に入れたスカイラインクーペ370GT (CKV36)。オーナーさんは、ノーマルの状態から自分好みに仕上げていく道程のスタートラインに立ち、ワクワクが止まらないみたいだ。
愛媛県松山市の中心部に建ち重要文化財にも指定されているフランス風の洋館『萬翠荘』。その庭園に現れた真っ赤なボディの日産・スカイラインクーペ370GT (CKV36)の佇まいはあまりにも美しくて、つい見惚れてしまうほどだった。
このスカイラインクーペのオーナーである愛媛県在住のかずやんさんは、10年ほど乗っていたスカイラインGT-R(BNR32)を手放し、昨年末にこのクルマに乗り換えたのだという。
世界的に日本の旧車人気が高まっている中、R32型のスカイラインGT-Rはその筆頭とも言えるほどの貴重なモデルだ。その愛車を手放して新たな相棒としてこのモデルを選んだのには「まわりに乗っている人が少ないクルマで、他人と違うことがしたい」というかずやんさんのスタイルがあった。
「近所のおじちゃんがケンメリやハコスカに乗っていたり、友達や先輩もみんなクルマに興味があった時代だったので、子供のころから気がつけばクルマを好きになっていましたね。それに僕らがクルマに乗り始めたころはちょうど旧車ブームだったので、周りも旧車乗りばかりですごかったですね。その中でも僕は日産車が好きです。」
そう話すかずやんさんの愛車遍歴は、910型ブルーバードから始まりF31型レパードを3台、R31型スカイライン、Z32型フェアレディZも3台、さらにC33型ローレルや20&30型ソアラなど、これまで20台以上を乗り継いできたという。
「あれに乗りたい、これも乗りたいという感じで乗り換えてきましたね。とりあえず乗ってみて満足したら次のクルマっていう。最初に乗ったZ32はけっこうイジったりていたんですけど、缶スプレーでイタズラをされて、それからは大人しめのカスタムをするようになりました(笑)。外見が好きで乗ったC33型ローレルや3台乗ったF31レパードなどは純正のままで楽しんでいましたしね」
気になったモデルを手に入れては自分好みのスタイルに仕上げて楽しむ。嬉しそうに語る様子は、まるで子供がプラモデルやミニ四駆の話をするかのように純粋で無邪気だ。
そして歴代の愛車のなかでも、かずやんさんが特別な想いを抱いていたのが、R32型スカイラインGT-Rだったという。
「僕が高校生だった時にたまたま前から走ってきたガンメタのGT-Rにひと目惚れしたのがキッカケです。いろいろと乗り継いだあとにやっと念願のR32型スカイラインGT-Rに落ち着いて、同僚の友達の影響もあってけっこうイジりながら10年乗ったんですが、さすがにボディがボロボロになってしまって。しっかりとキレイに直そうかなとも考えたんですけど、もうじゅうぶん乗ったし、これを機に新しいクルマにしようと思ったんですよ」
フロントグリルに装着していたハコスカ用のエンブレムや、ロゴマークの赤色が消えるほどに使い込まれた1994年式の愛車で使用していたキーが、その歴史を物語っている。
こうして次のクルマ探しを始めたかずやんさんだが「さすがにそろそろ落ち着こうかなと、50系プリウスにちょっとエアロでも…って考えたりもしたんですけど、やっぱり物足りない、やり足りないなって(苦笑)」と『好きなクルマを自分好みにして乗る』という性格に抗うことはできなかったようす。
そこで相談相手になってくれたのが、取材会当日も会場に足を運んでくれていた愛媛県松山市のサーキット系チューニングショップだったという。
かずやんさんと同い年で10年来の友人でもあるショップさんによると「マニュアル車で現在のスポーツカーでFRというのが本人の希望でした。86のようなライトなクルマよりヘビー級が好きなのも知っていたし、周りでは誰も持っていないモデルで、ワイドボディのクルマに乗りたいとも言っていたので、思い至ったのがこのクルマでした」とのこと。
こうして2022年12月にかずやんさんのもとにやってきたのが、全長4655mm、全幅1820mm、全高1390mmという美しく堂々としたスタイリングに3.7リッターのV6(VQ37VHR)という大排気量エンジンを搭載したスカイラインクーペ370GT (CKV36)。
もちろん、かずやんさんのこだわりである6速マニュアルミッションを搭載した2008年式のTYPE SPで、長く付き合っていくために程度のいい個体を探したという。
スカイラインクーペを購入してから数ヶ月、新しい相棒と通勤時や休みの日のドライブなどを楽しんでいるというかずやんさん。
「純正のままで足まわりもしっかりしているしパワーもあるし、フルチューンのGT-Rから乗り換えてもそれほど遜色ないので満足しています。過去にはターボ車からノンターボに乗り換えた時にパワーの差を感じてガッカリってこともあったけど、今回はそれもなかったですね」
ノーマル状態のままでもパワー感のある乗り味を十分気に入っているようだ。しかし、このまま手を加えずに楽しむのかと思いきや、やっぱりそうはいかない様子!?
「リバティウォーク製のエアロを見たことで火をつけられたというか(笑)。やっぱり僕らの年代って、ビス留めオーバーフェンダーっていうのは結構ツボにくるんですよね。オリジナルエアロを作ってマフラーもワンオフで、どうせならまわりにいないようなクルマを作りたいなと。それに、いずれはターボやスーパーチャージャーを追加しても面白いかなと思ってます。せっかくクルマに詳しい同級生の友達がおるんやったら、いろんなことを試すのもいいかなって。ノーマルから仕上げていくのが楽しみですね!」
「やっぱり人と違うことがしたいんでしょうね。R32 GT-Rに乗っていたときはリアスポイラーを取り外してチビスポイラーだけにしたり、Z32のときもフルエアロにボンネットやフェンダーを交換していました。ただ、いろいろとやりたいなーと思うのはもう今回が最後かなと。あとはもう大人しく乗って…いや、やっぱり車高くらいは多少落として乗るんだろうな(笑)」
意気投合するショップさんと二人三脚で、新しい愛車のカスタムを進めていく構想を練るのが楽しくて仕方ない様子のかずやんさん。
クルマもカスタムも知り尽くした頼もしい仲間と共に作りあげていく、世界に1台だけのスカイラインクーペ。きっとその過程もまたかずやんさんにとっては日々の生活の励みで刺激になるに違いない。
そして、そんなかずやんさんのカスタム熱が冷めるのは、もう少し先の話になりそうだ。
取材協力:萬翠荘(愛媛県松山市1番町3丁目3-7)
(⽂:西本尚恵 / 撮影:西野キヨシ / 編集:GAZOO編集部)
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