WRXではなく、あえてNAスポーツのSRXを選んだインプレッサオーナーの23年
約23年に渡り2台のインプレッサSRXを乗り継いできたというオーナーさん。初代インプレッサの後期型だけに設定された希少なグレードを選択し、運転に慣れていなかった最初の1台はオートマ、2台目はマニュアル車を選択した。NAの魅力、充実したカーライフをご紹介しよう。
1992年から発売されたスバル・インプレッサシリーズ。その中でも水平対向エンジンEJ20ターボとフルタイム4WDを組み合わせたインプレッサWRXは、世界ラリー選手権(WRC)で戦うために開発された高性能モデルとして高い知名度を誇る。
そんな初代インプレッサWRXをはじめターボモデルが人気を集めるいっぽうで、NAモデルのスポーツグレードもラインアップされていたのをご存じだろうか。
今回ご紹介させていただく香川県在住の岡田さんは、初代インプレッサの後期型だけに設定された本格NAスポーツ、インプレッサSRXをこよなく愛するオーナーさんだ。
子供の頃にミニカーを買ってもらったことをきっかけにクルマ好きになったという岡田さんは、父親がレガシィに乗っていたことや水平対向エンジンが好きなことからスバル車好きに。
「僕はセダン車が好きなんですけど、スバルのセダンというとインプレッサかレガシィなんですよね。でもレガシィだと僕にとってはサイズが大きいし、見た目もタイプじゃなかったんです。となると、もうインプレッサしか選択肢が残っていなくて、さらに好きな80年代から90年代のノンターボとなると、もう選択肢がかなり狭くなるわけですよ」
「もともとターボ仕様があまり好きではなくて、ノンターボのツインカムエンジンのグレードを探していたところインプレッサSRXという選択になりました。それに僕は大学生でマニュアル免許を取ったものの、学生の時に全然クルマに乗らんかったので、マニュアル車の運転ができなくてオートマ車を探していたんです。乗り心地が気に入って、購入後は約10年間乗っていました」
こうしてオートマの愛車も十分気に入っていたという岡田さんだが、仕事の関係でマニュアル車に乗って練習する機会を持ったことで、改めてマニュアル車の運転の楽しさを実感し、マニュアル車を探すことにしたのだという。
「3ヶ月くらいオークションで中古車を探してもらって、ようやくこのクルマがでてきたんです。状態を見て綺麗だったこともあって購入しました。ボディカラーは好きな色の青と白とシルバーのどれかだったらいいなと思っていたので、ちょうどよかったです」
こうして今から13年前の2010年、岡田さんは現在の愛車である1999年式のインプレッサSRX(GF-GC8)のMT車を手に入れ、大事に乗り続けているのである。
それにしても、岡田さんはなぜ選択肢を狭めてまでNAモデルにこだわるのか?「NAスポーツならではのフィーリングが好き」といった感じかと予想していたが、少し違った。
「ターボ車が嫌なわけではないんです。正直そっちの方が速くていいんですけど、自制心がない僕はターボに乗ると踏み込む可能性があると思ったんですよ。というのも、昔父が乗っていたレガシィがターボ仕様で、練習に乗っとったんですがやっぱり自分には合わんのやろうなって…。それでNAのクルマが欲しいなと思ったんです」
そう、岡田さんがNAモデルを求める理由はターボで踏み込んでしまうリスクをなくすための自制心からだったのだ。それでもドライブが大好きだというオーナーさんにとって、このインプレッサSRXは、理想どおりの1台だったというわけだ。
そんな岡田さんのSRXへのカスタムのこだわりは、純正らしさを損なわずにさりげなく似合うカスタムを施すイメージなのだという。
「とにかく純正のイメージを壊さないように1代目のAT仕様のインプレッサの時から気をつけてパーツ交換しています。今、そのパーツの多くはMT仕様インプレッサに移植されています。気にいっているのはフェイス周りで、純正バンパーの下のフロントリップ、それから、6本スポークのホイールです。これは最終型のWRX用をネットオークションで探して購入したものです。赤いキャリパーは22Bというグレードからの流用で、見た目重視で選びました。それとショックはWRX専用のものです。このクルマの純正パーツは大体ほかのモデルのインプレッサやWRXから流用できるので、社外品を使っているのはフジツボのマフラーとエンドレスのブレーキパッドくらいですね。ヘッドライトのガラスも交換して綺麗にしていますよ。」
エンジンルームや内装については「車内で変えているところはペダルと、純正CDデッキが壊れたのでカロッツェリア製デッキに交換しパイオニア製ドアスピーカーにかえたくらいです。エンジンルームは見た目がちょっと寂しいのでタワーバーを追加してみました」と、こちらも純正の雰囲気を崩さない範囲でのカスタムを楽しんでいるそうだ。
現在はセカンドカーのプレオ・ネスタとの2台体制。普段乗りはプレオで、このSRXは休みの日のたまに行くドライブやイベントの時に動かすことが多いそうで「僕の周りにはクルマ好きの人がいないので、オフ会は岡山の方まで行くことが多いです」とのこと。また、消耗を減らして少しでも長く大事に乗っていたいから車庫保管しているそうだ。
「ボディは一度だけ純正色で全塗装して、去年はコーティングも施工しました。メンテナンスに関してはオイル交換を半年に1回、そして車検ごとにミッションやパワステブレーキやデフなどの全部のオイル交換をするようにしています。ただ、長く維持していくにしても、だんだんパーツの供給がされなくなるのかなって…。以前リアワイパーの付け根が壊れたんですけど部品が見つけるのに時間を要したことがあって、そういうことが今後はどんどんでてきそうだなって。なにせ初年度登録からは25年目になりますからね」
ちなみに岡田さんが調べたところによると、SRXの新車登録台数は香川県で5台、愛媛県でも7台しかいないくらい希少で、さらにこのクルマは走行距離も現在6万7000kmと年式からすれば非常に少ない部類に入る。オーナーさんが大事に長く乗っていきたいと考えるのも当然だろう。
「次に乗りたいクルマも今のところないので、直せるかぎりはずっとこれに乗っていたいですね。このクルマは僕に取っては“欲求"そのものなんです。これに乗ったら満足するというか、週に1回くらいとはいえこれに乗らんかったらストレスみたいなのが出てきて自分の体調があまり良くないような気がするんで。本当になかったら困りますね」
フラッグシップモデルとしてインプレッサWRXが王道をひた走る中、影に隠れてしまった感もあったNA搭載のスポーツグレードであるインプレッサSRX。
しかし岡田さんのように、リスペクトするスバル車のコンパクトセダンで、スポーティな4WDの走りをNAで楽しみたい人にとってはオンリーワンの魅力的な1台だったのは確か。
岡田さんの深い愛情によって、このSRXはこれからもしっかりメンテナンスされながら美しい姿を保ち続けることだろう。そして今後も大切なパートナーとしてあり続けてほしい。
取材協力:萬翠荘(愛媛県松山市1番町3丁目3-7)
(⽂:西本尚恵 / 撮影:西野キヨシ / 編集:GAZOO編集部)
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