アリストを3台を乗り継ぎ、見た目も中身も熟成の域に達したハイパフォーマンスセダン

免許を取ってすぐに乗り始めたマークⅡ(JZX81)でセダンの魅力に取り憑かれ、先輩から譲り受けたアリスト(JZS147)のハイパワーかつ上品なパッケージに思いっきりハマってしまったというオーナーは、現在3代目となるアリストでカーライフを満喫中だという。オーナーの愛車愛をご紹介する。

愛車選びの際に重視するポイントは、スタイリング、性能、パッケージング、価格など人それぞれ異なるし、年齢を重ねてファッションやライフスタイルの変化などとともに優先順位が変わっていくのも当然のこと。そのため長い人生のあいだに軽自動車、スポーツカー、SUV、ミニバンなど多種多様なクルマを乗り継いでいく人は少なくないはずだ。
一方で、一貫して特定のジャンルにこだわって乗り続けるという人もいる。
トヨタ・アリストを3台乗り継いできたというOHJIさんは、数あるクルマの中でもハイパフォーマンスセダンというジャンルのクルマを愛し続けるオーナーさんだ。

  • トヨタ 初代アリスト(JZS147)

英語で『最上の』『優秀な』という意味が車名の由来であり“国産最速セダン”の異名も持つアリストは、1991年にデビューしたトヨタの高級セダン乗用車。
その初代モデルとなるJZS140系はバブル期に開発されたことから贅沢な仕様が与えられているのが特徴だ。特にJZS147に搭載されるパワーユニットは、スープラ(JZA80)に先駆けて280psを発揮する2JZ-GTEツインターボエンジンを採用。当時のBMW M5(E34)を追従できるパフォーマンスが人気を集めていた。
また、スタイリングの原案はイタリアのイタルデザインによるもので、洗練された大人のセダンとしても注目されたモデルだ。

「免許を取ってすぐに乗ったのがマークⅡ(JZX81)だったんですが、フィーリングが絶妙に合っていたんですよ。6気筒の滑らかな感じとかターボのパワーとか、見た目は何気無いセダンのくせに想像以上にスポーティな走りも楽しめる。それから6気筒セダンにハマってしまい、気付いたらこれまでトヨタのセダンばかりを乗り継いできました」

  • トヨタ 初代アリスト(JZS147)

もともとセダンが好きだったOHJIさんにとって、6気筒ターボを搭載するマークIIはリーズナブルで乗り出しやすかったというのが初の愛車として手に入れた理由だったという。そして、実際に乗ってみたところフィーリングが自分の好みにドンピシャ! これがその後のカーライフを決定づける運命の出会いとなったのである。

「マークIIには5年くらい乗ったんですが、若かったこともあって飽きはじめちゃったんですよ。そんな時に先輩が乗っていたJZS147型のアリストを譲ってもらえることになって、2JZ-GTEのパワーが気になっていたので乗り換えを決意したんです」
マークIIと比べるとワンランク上のアリストは、当時のOHJIさんにとっては憧れの存在でもあった。そんな憧れていたクルマを譲ってもらったことは何よりも嬉しかったと振り返る。

「そのアリストはしばらくしてATとデフが壊れて廃車になってしまって…。当時は直すよりも買い換えた方が安かった時代ですから、次も同じ型のアリストに乗り換えたんですが、今度は事故で廃車になってしまいました。3度目の正直ということで、10年ほど前に手に入れたのがこのアリストです」
「これを機会に別のクルマも試してみようか」と17系クラウンアスリートへの乗り換えなども検討したものの、まだまだ2JZ-GTEのパワーには心残りがあり、おなじクルマに乗り換えればパーツを移植できると判断して、その後もアリストに乗り続けることを決意したという。

ちなみに3号機は1994年式の3.0Vグレード(JZS147)で、2号機へ買い換えた時のように選択肢が豊富に存在しているわけではなく、徐々に残存台数が減ってきていたため探すのに苦労したとのこと。手に入れた時には下まわりの部品にサビがかなり進行していたというが、2号機の部品を移植してダメージ箇所を修復したそうだ。

こうして乗り継いだ3台目のアリストは、2台目までは思い描くだけで実現せずに終わっていた理想形に仕上げたという。
特にフロントエアロは、初号機の頃から憧れていたブリッツ製を装着。当時でも廃盤となっていたパーツにも関わらず、ネットオークションで出品されていたものを偶然見つけて手に入れることができたというお宝だ。
また、年式的に樹脂レンズに移り変わってしまったヘッドライトをイギリス仕様の純正ガラスレンズに交換。同時にコーナーレンズも欧州仕様品を日本向け向けに加工して装着することで、ヘッドライトの曇りもリフレッシュしたという。

ホイールにもこだわりがあり、初号機にも装着していたブリヂストンBIM・ツァイトを選択。しかも3号機には、長年のアリスト歴からフェンダーとのクリアランスがジャストになるよう導き出された最適解として、日産・フェアレディZ(Z32)用のフロント8.5J、リア9.5Jというサイズをチョイスしたという。

320km/hまで刻まれたスピードメーターは前オーナーが装着していた社外品で、これが付いていたこともこの車体を購入した理由のひとつだというほどお気に入りのポイント。入手した時は9万6000キロだったオドメーターは、現在19万キロまで伸びている。

「若い頃はパワーを追求していたこともありますが、現在の仕様は吸排気パーツの交換とブーストアップで380psくらい。これくらいならATが壊れる心配ありませんし、ディーラーでメンテナンスができる範囲なので普段から気兼ねなく乗ることができます。そして高速道路を使った遠出などはストレスなく気持ちよく走ることができますよ」

「初号機のATが故障したのはATF未交換で過走行だったことも原因だったんです。だから2号機、3号機ともに手に入れた段階でATFを全量交換してから乗りはじめ、その後は2年に1回のペースで交換しています。その甲斐あってかATのトラブルは皆無です」
カスタマイズにもメンテナンスにも、積み重ねてきた知識と経験を総動員して仕上げた集大成が、この1台というわけだ。

そんなアリストとともにOHJIさんが趣味として楽しんでいるのが戦闘機を眺めること。茨城県の百里基地を訪れては運用されるF-2などが飛ぶ姿を楽しんでいるという。こうした移動にもアリストは大活躍しているというわけだ。

「アリストは30年も前のクルマなのに、パフォーマンスはまったく色褪せないんですよ。ずっとこれ1台で過ごしてきたのであまり気づいていなかったんですが、3年ほど前に結婚して嫁さんのクルマが追加された時に、やっぱりアリストっていいクルマなんだなって再認識できたんです」

そんなOHJIさんの目標は、世界で最後のJZX147アリストオーナーになるまで乗り続けること。最近では入手困難な部品も増えてきて修理やメンテナンスも難しくなってきたというが、それでも海外仕様パーツなどをうまく使うことで状態をキープしているという。
そして初号機で思い描き、2号機で詰んだ経験をもとに、この3号機で理想のアリストを作り上げるというモチベーションは、先輩から譲り受けてはじめてアリストに乗った時と変わらず今も保ち続けている。
アリストに乗り、そして作る楽しさはまだまだ続いていきそうだ。

取材協力:
『神栖1000人画廊』(茨城県神栖市南浜)
『日川浜海岸』(茨城県神栖市日川)
かみすフィルムコミッション

(⽂: 渡辺大輔 撮影:土屋勇人 編集:GAZOO編集部)