『維持は、意地』 26年間乗り続けているアリストを9歳の息子に譲るその日まで
1991年から2005年にかけて発売されていたトヨタ・アリスト(JZS14# / JZS16#)と言えば、躍動感を感じるスポーティーな外観と高級感あふれる内装を纏う一方で、ハイパワーエンジンを搭載したFR駆動車で、高い走行性能も両立するラグジュアリースポーツセダンとして人気を獲得したモデルだ。
そんなアリストに惚れ込み、新車で購入してから26年間、美しい状態で乗り続けているオーナーが今回ご紹介する長野県在住のNさんだ。
現在は、自ら160系アリストのオーナーズクラブも運営しているというNさんは、どのようなところに魅力を感じ、このアリストを長く乗り続けているのか?その思いの丈を伺った。
少年時代に訪れていた“スーパーカーブーム”などの影響もあってクルマ好きに育ったNさんが、最初に乗ったクルマはお兄さんが乗っていたトヨタ・マークⅡ(GX71)だった。
「当時はセダンが当たり前のように多かった時代だったし、自分の仲間もセダンに乗っていた人が多かったので、僕もセダンを選んでいましたね。最初の1年くらいは、兄から譲り受けた71マークⅡに乗り、その後、カッコ良いと思ったパールホワイトでツートンカラーの81マークⅡに乗り換えたんです」
そして、そのマークⅡ(GX81)に4年乗った後に乗り換えたのが、父親が乗っていた1987年式のクラウンセダン(GS131)であった。
「ツヤツヤのブラックでスーパーチャージャー付きだったので『おー、いいね!』と、譲ってもらって2年乗りましたね。ただ当時、本当に乗りたかったのが初代のJZS14#系のアリストだったんです。けれど、新車は高額だったのでその時は買えませんでした。そうして、ようやくアリストを買おうかなと思った時、モデルチェンジするらしいと耳にしたんです。そこで、14#系のアリストの購入は我慢して、期待を込めてニューモデルを待つことにしました。その間、クルマがなくなるのは寂しいので、繋ぎとして1995年式のクラウン(JZS155)RSに乗っていましたね」
そうして新型アリストの登場まで待つこと2年。1997年8月、ついに2代目JZS160系アリストが発売。その期待を裏切らないカッコ良さに一目惚れしたNさんは、すぐに購入予約し、翌年1月末に納車されることになった。
「たぶん僕は『アリスト』というクルマに惚れていたんでしょうね。ですから2代目アリストがどんなデザインかはわからなくても、きっとカッコ良いだろうなと期待できたのです。そして実際にも期待以上のデザインと性能を持っていたのだから、当然すぐ買いますよね。ボディカラーはもちろん大好きなブラックにしました」
Nさんが購入したアリスト(JZS160)は自然吸気の2JZ-GEを搭載したS300、さらにスポーティーな要素がプラスされた『ベルテックスエディション』をセレクトした。
「ターボ仕様のV300を選ばなかった理由は、僕が住んでいる地域は山間地が多くてまっすぐな道が少なかったから。そして、以前乗っていたクラウンと同じ2JZ-GEエンジンでしたので、そのパワフルさも理解していました。しかも同型エンジンでもアリストの方がハイパワー仕様だったので、僕にはS300で充分だったんです。それと『ベルテックスエディション』にしたのは、内装のブラックエディションが気に入ったからですね」
「アリストが納車された1998年は、ちょうど長野オリンピックの開催期でした。今回の取材会場である南長野運動公園は、オリンピック開催記念会場だったので、当時買ったばかりのアリストで競技場へ行くと、外国の方から『レクサスGSだ!』と囲まれたのはイイ想い出ですね」
そう懐かしそうに目を細めたNさん。ちなみに外国の方の注目を集めたのは、このアリストが、国外ではレクサスの上級モデル『GS』として販売されていたためだ。というのも、レクサスが今のように日本国内で展開を始めたのは2005年なので、当時は国内仕様車にレクサスブランドは存在していなかったのだ。
ところが、よく見るとNさんのフロントのエンブレムはレクサスだったりする。
「コレ、当時は流行っていたんですよね。僕もまだ20代だったし、レクサスは日本になかったから憧れもあったんでしょうね。当初はリヤにもレクサスエンブレムを貼っていたんですけど、後ろからくるクルマに『レクサスじゃないのにレクサスだ』って言われるのが嫌だなぁと思ったのと、クルマを綺麗にするのが好きだったので、エンブレムを外してスムージングしてしまったんです」
そんなNさんのアリストは、スポーティーでスタイリッシュな装いで、玄人好みがするカスタマイズが施される。このカスタムの方向性は、Nさんがこのアリストを購入する時点で決めていて、購入からたった2年間で現在の状態まで仕上げたのだという。
「カスタムは純正+αを意識し、極力トヨタ関連のアイテムで統一しています。エアロはトヨタ埼玉でも採用されていたエアロマジック製で、フロントパイプやマフラー、リヤテールはTEC大阪製のものをチョイスしました。また、ホイールはセルシオなどにも純正採用されたカールソン製にしています。サスペンションはビルシュタイン製のダンパーに、TTE製のスプリングを合わせて下品にならない程度にローダウンしています。エアロを合わせた“大人セダン”のカッコ良さを演出するのが狙いでした」
さらにエアクリーナーはTRD製に、タワーバーもシルバーに塗装したトムス製を装着するなど、エンジンルーム内のアイテムに於いても純正ベースを崩さないカスタマイズパーツで構成されている。となると、内装のカスタムも気になるところだ。さっそくドアを開けてもらうと、鮮やかなブルーウッドのコンソールやステアリングが目に飛び込んできた。
「ベルテックスエディションは純正でブラックウッドの装飾がしてあるんですけど、人と同じは嫌だし、僕はブルー好きだったので、せっかくなら今まで見たことがないような“ブルーウッド”を作りたいと考え、懇意にしていたメーカーさんに預けて水圧転写で仕上げてもらったんです」
また、レクサス用の『km/h・Mile』両表記のメーターも、Nさんお気に入りのパーツだそう。ただ、ブルーウッド化やレクサス仕様のメーターなどのカスタムについては「今思えば少しやりすぎたかなぁ」と、苦笑いされていたのも印象的だ。
ちなみに、こうしたカスタマイズは工賃の節約を兼ね、知人に手伝ってもらいながら自分で取り付け作業をしたそうだ。
若かった頃はドライブへ出かけることも多かったそうだが、現在はミーティングイベントや息子さんとのちょい乗りがメイン。また、購入当初から普段はガレージにしまっておいて、特別な時にだけ乗るような使い方をしていたため、走行距離は26年間乗り続けながらも僅か6万9000kmに留まっている。
さらに、26年経ったとは思えない鏡面のようにツヤツヤなブラックボディを見るだけでも、Nさんがどれだけ愛車を大事に想い、メンテナンスに力を入れてきたのかが伝わってくる。
「アリストを維持してきた中で一番大事にしていることは、トヨタの代名詞とも言える『202ブラック』を鏡面のように艶やかな状態で乗り続けることですね。僕らの住む街は水が綺麗なこともあり、コーティングせず固形ワックスも使わず水洗いのみでもすごく綺麗になるんですよ。それに洗う時は必ず日陰で、拭き方も常に前から後ろへ一定方向でという法則を必ず守っています」
そんなNさんは、ご自身の愛車だけでなく同じアリストオーナーとの繋がりも大事にしていて、約20年もアリストのオーナーズクラブを運営されている。
「昔『クラブアリスト』というオーナーズクラブがあって、僕はその長野支部として動いていました。1999年にはオリンピック表彰式会場のセントラルスクエアに45台くらいアリストが集まるミーティングを開催したことがあります。その後新たに『クラブ16』というアリストのオーナーズクラブを立ち上げ“TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL”には、13年連続でクラブエントリーとして仲間と参加しました。現在、仲間は15台くらいになってしまいましたが、消耗パーツが手に入りにくい今、アリストを降りたオーナーさんのクルマをクラブ員が預かったりするなど、みんなで協力し合っています。そして僕は、このクルマを将来息子に引き継ぐ約束をしているので、それまではなんとか乗り続けたいと思っています」
そう話しながら、Nさんは優しい目で息子さんに微笑んだ。9歳になる息子さんは、Nさんに負けないくらいのクルマ好き。このアリストの事もとても気に入っていて、将来引き継ぐ気は満々なのだそうだ。
「このクルマを息子に譲ったあとは、できれば四駆のSUV系が欲しいですね。サイクリングが好きなので、ロードバイクを買って息子と2人でサイクリングしたいなぁと思っているんです。早く定年にならないかな(笑)」
数年後、息子さんがこのアリストを予定取り引き継ぎ、Nさんも新たなカーライフをスタートする…そんなワクワクする未来が、目に見えるようだ。
(文: 西本尚恵 / 撮影: 中村レオ)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:南長野運動公園(長野オリンピックスタジアム)(長野県長野市篠ノ井東福寺320)
[GAZOO編集部]
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