愛車と家族の思い出を作りたい アルテッツァ 1G-FE
学生時代の思い出や経験が、その後の人生においてさまざまな影響を与えることは多い。トヨタ・アルテッツァ(GXE10)に乗る秋山さんの場合、楽しかった青春時代にクルマの良さを知り、愛車選びにも影響を与えたという。
1998年にトヨタからAE86以来のFRスポーツモデルとして登場したアルテッツァ。
搭載されたエンジンは2ℓの直列4気筒DOHCと直列6気筒DOHCで、スポーツユニットとして定評があった3S-GEを搭載したRS200は、最高出力210psを発揮した。
いっぽうで、海外ではレクサスブランドのエントリーモデル『IS』として6気筒エンジン(1G-FE)搭載モデルが人気を集めた。
ちなみに、オーナーの秋山さんが購入したのは160psの直列6気筒エンジンを搭載したAS200(GXE10)。「中古車で1番安いアルテッツァを」という要望に合致したのが、スポーティーな3S-GEでなくて、大人の雰囲気の1G-FEだったそうだ。
「飛ばしたいとかドリフトをしたいとか、そういう気持ちはまったくなかったんです。だから、3S-GEでなくてよかったんです。だからスポーツセダンの面白い部分は引き出せていないかも(笑)。」
車に乗ると学生時代に“地下鉄号"で走った童話のように楽しい時代を思い出すのだそうだ。
地下鉄号とは、大学時代の友人が乗っていたアリストのことで『フォォオオオオーン』と加速する音が地下鉄のそれに似ていたのだという。そんなニックネームの由来となったパンチの効いた音が大好きだったと教えてくれた。
「大学生の頃、地下鉄号にフル乗車で友達とよく旅行に行っていたんです。みんなお金がないからガソリン代と高速代を割り勘して、順番に運転してね。眠くなってきたらサキイカを噛むことになったんですけど、これが決して良い香りとはいえないんですよ(笑)。そんな感じで、車内はぐちゃぐちゃ状態での移動でしたけど、それは快適な空の旅よりも楽しかったんです。10数年経った今でも、あの頃のことをよく思い出します」
両親には申し訳ないけれど、学業よりも課外活動よりも、地下鉄号での旅行が1番の思い出になった、と少しバツが悪そうな顔をしながら話してくれた。
「使い勝手は悪かったと思います(笑)。車高が下がっていたためなのか、ホイールがムダに大きかったためかわかりませんが、何故か乗り心地は良くなかいですし、段差も苦手でした。そんな感じだったんですけど、僕をクルマ好きにさせた特別なクルマなんです」
アリストに出会うまでの秋山さんは、なんとなくクルマに興味がある…かな?程度だったという。クルマ好きならば誰もが知っているであろう『頭文字D』は一応読んでいたものの、峠を走りたいとかサーキットに行ってみたいと思う熱量はなく、どちらかというと『クルマ=移動手段』という考え方に近かったという。それがアリストに間接的に出会ったことで、クルマでしかできない体験がある、クルマがあると作れる思い出があるということに気付いたのだそうだ。
そして大学卒業後、高知で就職そして結婚をし、1人目のお子様が産まれたことをきっかけに『クルマとの楽しい思い出を家族とつくりたい』と思うようになったという。
「じゃあどんなクルマに乗ろうか?と悩んでいた時に、頭文字Dに登場した秋山延彦というキャラクターがアルテッツァに乗っていたのを思い出したんです。僕の名字もおなじ秋山だし、アルテッツァにしよう!という感じで決まりました」
アルテッツァは、こうしてめでたく秋山さんの愛車になったというわけだ。ちなみに車両価格は11万円だったそうだ。
いちばんのお気に入りポイントは、自分で取り付けたというアルテッツァ純正オプションのネオカスタマイズフロントバンパー。車両価格と同じような値段だそうだ。
「妻には大きなものを取ってくるよ〜と言って営業所止めの荷物を取りに行きました。で、次見た時にはフロントバンパーが変わっていて、古いバンパーがベランダに置かれているという(笑)。隣に住んでいる男の子に『何で同じのがここにあるの?』と聞かれたときには『よく見たら違うんだよ。ちょっと違うのが、また良いんだよ〜』と、妻と自分自身に言い聞かせるように答えました」
自分が乗りたいと思ったクルマに乗り、やりたかったカスタムを施して運転した時の満足感と幸福感たるや、ハンドルを握るだけでワクワクしたという。
まだ3才になったばかりの息子さんは、アルテッツァのどこが好きかをハッキリと答えることはできなかったが、秋山さんが推測するに、運転席との距離が近いため父親がハンドルを握っている姿が見えること、もう一台の所有車であるエスクァイアと違いプライバシーガラスじゃないので外がよく見えること、少々大きめのエンジン音が心地良いと感じること、などではないかとのことだ。
「息子にエスクァイアとアルテッツァ、どっちでお出かけに行く?と聞いたら、アルテッツァで!と言ってくれるんです。もしかしたら、僕よりもアルテッツァのファンかもしれないです(笑)」
万々歳の結果で大正解の選択だったと言えよう。
“修復歴なし”の個体だったはずがそうではない痕跡が見られたり、急にエンジンがかからなくなったり、たまにオーディオが不調だったりと、気になる部分も少なくないようす。
しかし、故障するタイミングが出発する直前で「道中で困らないようにというアルテッツァの優しさなのかも!?」と思わせてくれたり、落ち込んでいるタイミングでオーナーを励ますような音楽が不調だったオーディオから突然聞こえてきりと、不思議さを感じさせてくれる個体でもあったという。
ちなみに故障するタイミングも絶妙で、いざ出発するか! という時に『あれ?動かない』というケースが多いのだという。「もしかしたらこれも、道中で困るということがないように、というアルテッツァの優しさなのかもしれません」
よく見るとボロボロだったり、シートからは何とも言えないお爺ちゃんの香りがしたり、年式的にも急なトラブルに見舞われることもあるそうだが、それでも楽しいと思わせてくれるのがアルテッツァの魅力だと、優しい顔で息子さんを抱っこした。
「ほかにも、近所のおじさんや知らない人にもよく声をかけられるようになりました。『おっ、アルテッツァやんかー!』と、土佐弁の強いイカついおじ様に声をかけられることもしばしばあるんですよ(笑)。そういうアナログな繋がりが増えたのも乗って良かったと思える理由です」
今後は可能な限り今の状態を維持しつつ乗っていきたいと話してくれた秋山さん。それでも、いつかは手放すかもしれない。そうなっても、家族と「お父さん、アルテッツァ良かったね」と思い出話をできるようになりたいそうだ。
きっと、その話題が出るたびに秋山さんは青春時代の記憶、子供達の成長の過程、家族との大切な時間を思い出すのだろう。そうしてまた、アルテッツァが深く心に刻まれていくに違いない。
取材協力:高知工科大学 香美キャンパス(高知県香美市土佐山田町宮ノ口185)
(⽂:矢田部明子 / 撮影:平野 陽 / 編集:GAZOO編集部)
トヨタ・アルテッツァを愛車として楽しむ
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