「このクルマに出会って人生が充実した」86を3台乗り継いだ理由

  • GAZOO愛車出張取材会で取材させていただいた、GR86(ZN8)

ハチロクというクルマは、“走る面白さ"や“所有欲"を満たしてくれるだけではなく、オーナーになることで味わえる楽しみを与えてくれるという。
そう語るのは、ZN6型のトヨタ86を前期、後期と乗り継ぎ、1年前にGR86(ZN8)が納車されたばかりだという『あん』さん。

「最初はなんとなく気になったので乗ってみようかな〜というくらいの感覚で、すごく熱量があったというわけではなかったんです。僕の場合は、乗り続けていくうちに86の魅力に取りつかれていった感じですね」
1台目の86を購入したキッカケは主に3つあって、一つ目は『ハチロクは頭文字Dでお馴染みの車種だった』ということ。二つ目は、86のミーティングなどが各地で行われていることを知り自分も足を運んでみたいと思ったこと。そして三つ目は、トヨタとスバルがメーカーの垣根を越えて共同開発したというクルマがどんなものか試したかったからということだ。

あんさんがクルマに興味を持つようになったのは高校生の頃だったという。当時は『クルマがなくては彼女ができない!』と言われていたほど必要不可欠な存在だったそうで、あんさんにとっても自然に興味の対象となっていったそうだ。
当時、友人との話題によくあがっていたのは日産のR32型スカイラインGT-Rだったそうで『ツインターボを採用したことで、アクセルを踏んでから加速までのタイムラグがある“ドッカンターボ"とはちがってスムーズな加速をするようになったらしいぞ』など、運転ができるようになるのはもう少し先だというのに、みんなで憧れのクルマの話題で盛り上がっていたのだという。

「当時は地上波のテレビでF1をはじめとする自動車レースの様子を放送していたんですよ。だから、GT-RやNSXのような速いクルマがいいよね〜みたいなかんじでハイパフォーマンスなクルマに憧れを抱いていた人が多かったように思います。僕もその中の1人で、運転するならスポーツカーが良いなと思っていて、最初に乗ったクルマはAE111型カローラレビンでしたね」
レースやラリーなどさまざまなカテゴリで活躍してきた4A-Gエンジンを搭載したスポーティーな走りと、4ドアの実用性を兼ね備えたレビンは、当時の若者のなかでも人気を集めた車種であり、現在の愛車であるGR86のご先祖様ともいえる。

「レビンを降りてからはマーチ、ヴィッツとコンパクトカーを乗り継いできましたが、こうしてまた86に戻ってきてしまっていました」
久しぶりのスポーツカーはやっぱり楽しかったそうで、初めて運転した水平対向4気筒エンジンも自分にしっくりきたと笑みを見せてくれた。
そして、特に好印象だったのが加速時のエンジン音やアクセルワークに連動した吸気サウンドを強調してオーナーに伝えてくれる『サウンドクリエーター』という機能で「あまりにも良い音をさせるものだから、音楽を車内で聞くことが無くなりました」と教えてくれた。

そんなお気に入りのサウンドを聴きながら、とにかくたくさん走りたかったとのことで、日常使いはもちろんのこと、遠方にドライブへ行くなど8年間で走行距離は10万kmに達したという。
さまざまな土地を訪れたというが、中でも心に残っているのは、富士スピードウェイで開催された86&BRZオーナーが集まるミーティングイベントだという。情報交換をしたり、クルマ以外の他愛もない話をしたりと、86を購入する購入する動機となったオーナー同士の交流を楽しんだそうだが…そこは、決戦の場でもあったというのだ。

  • GAZOO愛車出張取材会で取材させていただいた、GR86(ZN8)

「レーシングコースをパレードするイベントがあるんですけど、そのチケットが当日販売の先着順なんですよ。だから、そのパレードに参加しようと思ったら、早くゲート前に並んで入場しなくちゃいけないんです。コロナ前だったから参加者はとても多かったし、僕が前の日の夜9時に並びに行ったら、すでに人がいて…」
前日から並ぶとなると、必然的に車中泊ということになるわけだが「前の座席のシートをリクライニングするんじゃなくて、後部座席でトランクスルーをすれば良いんです。キツキツですが、これだと横になって足も伸ばせますし、爆睡できますよ」と、86での車中泊でオススメの裏技を教えてくれた。
86開発陣が『タイヤ4本と工具が積める』ことにこだわったというのは有名な話だが、なるほど、車内で横になって車中泊もできるというのは新発見かもしれない。

「2台目の86を購入したのはクラッチが壊れたからなんです。修理しても良かったんですけど、どうせなら新しいクルマに乗り換えようかなと。当然、次の愛車も86と決めていました」
そしてこの2台目を購入して2年後、現在乗っている2022年式のGR86 RZグレード(ZN8)を愛車として迎え入れることとなった。しかも「カタログもなく細かい事も決まってないタイミングで注文した」というから、その決意はよほどのものだったに違いない。

  • GAZOO愛車出張取材会で取材させていただいた、GR86(ZN8)

2台目を手に入れて間もなかったのに、なぜ乗り換えようと思ったのかと伺ってみると「86でも充分満足しているのに、そこにスポーツ走行性能に特化した専用設計を施すとどんなクルマになるのだろうか?とワクワクしたから」だという。
まず気になったのはエンジンが2リッターから2.4リッターのFA24になり、最高出力や最大トルクも向上したこと。
次に、高張力鋼板の拡大採用をはじめフロントフェンダーやルーフなどがアルミ材になり、軽量化を徹底するなどしていたことだという。
ポテンシャルが向上した86に乗ってみたいという欲望に駆られ、気付けば購入を決意していたのだという。

「乗ってみると違いは明らかで、特にエンジン回転が低いところでのトルク感が増したので、街中での運転がかなり楽になりました。微妙に傾斜のついた高速道路で5速に落とさないとしんどいかなと思っていた道が6速のまま行けるようになったので、より快適な運転ができるようになりましたね。それまでの86は、乗っていくにつれ細かいネガな部分も気になっていったので、それが改善されたという印象です」

  • GAZOO愛車出張取材会で取材させていただいた、GR86(ZN8)

しかし、そういった性能面もさることながら、あんさんにとって重要だったのは『86で経験したさまざまなできごとは、86に乗らなければ経験できなかった』ということだ。
ステアリングを切るのが気持ちいい、アクセルを踏むのが楽しいなど、クルマの性能に直結することだけではなく、それに付随するカーライフが満たされたからこそ、86に乗り続けているのだという。
はじめは“ちょっと興味がある”くらいの気持ちで乗りはじめた86を3台もリピートした理由は、このクルマが人生の楽しみのひとつに変わっていったからなのではないだろうか。

この3台目の86は、自分の中で12年間オーナーを務めた集大成ということで、より自分好みになるようにカスタマイズも加えているのだそうだ。
アクセルを踏みはじめたときのレスポンスアップを狙って、プロドライバー織戸学選手が監修した『感度マックススロットルコンピューター』を装着。シートは2台目の時から座り慣れているブリッド製のリクライニング式バケットシートを選択した。そしてこだわっているのが、ナルディのステアリングだ。

「ナルディのステアリングは、特に思い入れがあるんです。ヴィッツの時からずっと使い続けているメーカーで、型式とかそういうのではなく、ナルディというだけで落ち着くんです。それでいくと、ブリッドのシートもそうかな。使い慣れているから、なんか落ち着くみたいな感じなんですよね」

ほかにも、サード製のテールランプ、ブレーキパッドやホイールナットまで大小さまざまなカスタマイズをほどこしている。

そして、自分好みに仕上げた新たな愛車に乗って富士スピードウェイで開催された『FUJI 86・BRZ STYLE』にも参加し、引き続きオーナー同士の交流の場を楽しんでいるという。

  • GAZOO愛車出張取材会で取材させていただいた、GR86(ZN8)とあんさん

「これからも今まで通りに走りを楽しみながら、ミーティングに参加したり、大切な人と一緒にドライブに行ったりと86ライフを楽しんでいきたいですね」
86はあんさんにとって、あると落ち着く、そっと寄り添ってくれるようなクルマなのではないだろうか。どのみち、86はこの先ずっと無くてはならない存在といえるだろう。

取材協力:高知工科大学 香美キャンパス(高知県香美市土佐山田町宮ノ口185)
(⽂:矢田部明子 / 撮影:西野キヨシ / 編集:GAZOO編集部)

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