沖縄に移住、沖縄での生活を満喫するためのS660とタンドラ
ホンダ・S660とトヨタ・タンドラ、まったく異なるジャンルの車。内地で40代まで過ごし、沖縄に移住したおじさまたちの愛車だ。オーナーの二人は沖縄に移住後に出会ったそうで、2人とも楽しむことに貪欲、クルマだけでは物足りず、沖縄の海も満喫しているとのことだ。愛車、カーライフについてお話を聞いた。
日本屈指の人気を誇る観光地としてはもちろん、再びその地を訪れたくなるだけには飽き足らずに移住してしまう人がたくさんいるほど魔力のある沖縄。今回のオーナーさん達も、本州から沖縄へ移住してカーライフを楽しんでいるという共通点を持ち、現在は公私にわたって仲良くしているお友達だという。
ホンダ・S660(JW5)を所有する金内厚さんは、東京都でクリニックの院長を務める傍ら、とあることをキッカケに沖縄へ移住することになったという。
「いまから8年ほど前、たまたま私のクリニックに沖縄出身のスタッフがいて、沖縄の医療の話について聞く機会があったんです。そこで、沖縄と本州では医療、そのなかでも特に健康診断の実態がすごく遅れていて格差があることを知りました」
「それまでは私は沖縄とはほとんど縁もなかったんですが、その話を聞いてからは、その格差を埋めるために沖縄で医療を手掛けたいと思うようになり、とうとう沖縄で健康診断を行うための新たなクリニックを設けることを決めました」
こうして金内さん自身が現地で陣頭指揮を執るようになり、そのまま沖縄を中心とした生活をするようになったという。
そして、そんな沖縄での日常生活を楽しむためのクルマとして2020年に購入したのがこのS660だという。
そもそも、これまで東京で続けてきたクリニックでのお仕事も『憧れのクルマを買って楽しむこと』が原動力になっていたという金内さん。
「普段通りに仕事をするだけじゃなく『人が寝ている間に働けば2倍の給料を稼げる』ということに気付いてから、30代と40代は本当に身をすり減らすほどに働きました(笑)」とかつての自分を振り返る。
愛車は頑張った自分へのご褒美であり、ランボルギーニ、ベントレー、アウディ、ポルシェなど様々なメーカーのスーパーカーと呼ばれるクルマを愛車として乗り継いできたそうだ。
なかでも、現在も所有するポルシェ911 GT3 RSは格別で、まさに一般に購入できるレーシングカーとしての素質を存分に感じることができたという。
ただ、その一方で金内さんが感じていたのは、そういったクルマは現実として、公道を走る上ではオーバースペックすぎるという問題だった。
「GT3 RSはアクセルを踏み切れる場面では本当にこれ以上ない感動を味わえるようなクルマなんですが、公道を走っているとまったくといっていいほどその場面がない。それで、ふと自分が乗ってきた色々なクルマを思い出してみたら、30代後半にカプチーノを所有していたころが、普段乗りも含めたら一番楽しく乗っていたことに気付いたんです」
スズキ・カプチーノは、ターボエンジンを搭載したFRレイアウトのスポーツカーとして知られる軽自動車。そして、ホンダ・S660はMRレイアウトという点を除いてはカプチーノとの共通点が多い車種であり、2020年の時点では新車購入が可能だったことが、金内さんがS660を愛車として選んだ理由だったという。
「S660はどんな場所でもポテンシャルを出し切って楽しめるクルマ。しかも、1/1サイズのプラモデル感覚でイジれるところが良いんです」とその魅力を楽しそうに語ってくれた金内さん。
エクステリアはノブレッセ製エアロパーツを中心に自分好みにカスタム。インタークーラーやマフラーを交換してHKS製フラッシュエディターでECUデータの書き換えもおこなっているという。
足まわりはさまざまな車高調を試したうえで「柔らかすぎず、硬すぎない特性が、街乗りでのベストバランス」というタナベ製のダウンサスをチョイス。
全体を通して、サーキットスペックではなく、あくまでも日常の延長でワインディングを走ることを想定したカスタムを楽しんでいるそうだ。
また、車体が小さなS660で快適に乗り降りするために、レカロ製シートの導入に併せて、跳ね上げ可能なボスにOMPのD型ハンドルを装着するといった工夫も施されていた。
そして、そんな金内さんがクルマと並んでもうひとつの趣味と話すのがジェットスキーを中心としたマリンスポーツだ。
「ジェットスキーを始めたのは20才のころでした。10代はずっとアメリカに住んでいたこともあって、日本に帰ってきてから自分の周りに趣味で一緒に遊ぶ友人がいなかったんですね。そこでなにか趣味を探そうと思ったときに、アメリカで経験したことのあったジェットスキーを日本でもやれる場所があるという話を聞いて始めたんです」
ジェットスキーの大きな魅力は「道路のように決められた道を走るのではなく、360°を走ることのできる自由度の高さにあるんです。それに、潮風を浴びるのは身も心もリフレッシュもできて、健康にも繋がりますしね」と金内さん。
また、ジェットスキーだけでなく、そこから自然とボートや船舶といったマリンレジャー全般にも手を広げていくようになっていったそうだ。
沖縄に移住してからはまさに水を得た魚。特にジェットスキーは本州のように係留所を経ずに、家からそのまま海岸へ持ち込める手軽さも沖縄ならでは。さらには日の入りが遅いことも手伝って、17時に仕事が終わり、帰宅してから日没の19時までジェットスキーに乗る、といった楽しみ方もできるようになったという。
そして、共通の知人を通じて知り合い、現在はマリンスポーツを一緒に楽しんでいる仲というのが、一緒にご参加いただいたトヨタ・タンドラ TRD Proオーナーの坂田さんだ。
「沖縄に移住するのは20代からの目標だった」という坂田丞(ジョウ)さんもまた、沖縄へ移住するにあたっては仕事がひとつのキッカケとなったという。
「もともと海で遊ぶのが大好きで、ジェットスキーもやっていたし、船でクルージングなども楽しんでいました。マリンスポーツ好きな僕にとって、沖縄は一年中夏のように海の隣で過ごせる環境があるのが大好きで、沖縄には毎年必ず行くほどでした。いつかは移住してみたいと考えていたんですが、それが仕事や様々なタイミングが重なって思っていたより早く実現したような感じですね」
東京都出身で、長らく外車を中心とした中古車の販売店での仕事に携わってきたという坂田さん。
「沖縄では、別荘の代わりにキャンピングカーやトレーラーハウスを購入してセカンドハウスのように利用する人が多くて、そういった方面での事業を拡大するために会社が沖縄に支店を作ることになったんです。それで自分も沖縄へ異動することになりました」
その話があったのが、現在から数えて15年ほど前のこと。単身赴任という形だったが、沖縄へ移り住むことを考えていた坂田さんにとっては、渡りに船のような出来事だったという。
「妻と子供にも相談しつつ、いずれは家族全員で定住することを目標に、沖縄での生活を地固めしていくような気持ちで生活していました」と坂田さん。
そして、ある程度の準備が整いつつあった2011年、東日本大震災をキッカケに、当時の住居があった神奈川県を離れ、今回一緒にご参加いただいた息子さんなど家族が揃って沖縄へと移住することになった。
そして、近年のキャンプブームなども後押しする形でトレーラーハウスの業務が占める割合が増えていき、それに伴って坂田さんは勤め先から独立して自分の会社を設立するに至ったという。
そんな沖縄ライフの相棒として2020年に購入したタンドラは、北米トヨタのみで販売される並行輸入車。実燃費は4キロほどという点が玉にキズとのことだが、大排気量でパワフルなエンジンはトレーラーを牽引するのにも十分なスペック。まさに坂田さんの仕事柄を表すのにピッタリな愛車といえよう。
ノーマルで2mをオーバーする北米規格のフルサイズピックアップトラックに、ハニーD製のオーバーフェンダーを装着してさらに拡幅。構造変更でも保安基準にギリギリ収まるサイズだという。
フェンダーに合わせるように、ノーマルから2インチアップの20インチというTISSUE製ホイールを装着している。
また、坂田さんにとって最も魅力だったのが『TRD Pro』グレードの専用カラーとして用意されていた限定色のアーミーグリーン。「沖縄を走っていて絶対に似合う色」とお気に入りだ。また、エンブレムではなくプレスロゴが採用されているのもTRD Proならではのポイントだという。
駐車場や道幅などの兼ね合いから都内などでは大きすぎると感じるタンドラだが、沖縄の風景には自然と溶け込んで見えるから不思議だ。
かたや軽自動車のMRスポーツカーS660、かたやフルサイズピックアップを更に拡幅したタンドラ。
まさに両極端な2台の愛車だが、沖縄という小さな土地はそのどちらのクルマのポテンシャルをも最大に引き出すことのできる、大きな力を持った土地なのだと実感させられる取材となった。
取材協力:オリオンECO 美らSUNビーチ
(⽂:長谷川実路 / 撮影:平野 陽 / GAZOO編集部)
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